「しあわせ」ってなんだろうか」


 荒波に翻弄される小船に乗ったような長い横揺れに驚いたのは一年前。未曾有の大地震、地を呑む大津波、見えない放射能の恐怖、計画停電の不便・不安な時間。テレビは色彩を失い、それに続く各地の地震が恐怖を増し、人々が、昨日とは違う今日を、また日本が変わったことを、実感した日々。目の前で、あるいは画像の中で、人が、おしなべて、傷つき、死んでいくのを見てしまったあの時。人々の夢や、希望が恐ろしく強大な力によって止められた時。わたしたちは、明日にでも死に直面しうることを知ったのです。だから、今を、生きている目の前の人と、友と、家族と、大切な人と、大切にしなければならないと知ったのです。しあわせは、将来の目標や終点ではなく、その時、その時に置かれた自分をどう用いるかで決まるのです。

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