「「小春日和」だから」


 紅葉には青空がいい。そんな青空の広がる日本晴れなので、映画館まで歩いていくことにした。晩秋から初頭にかけて晴れた日を「小春日和」という。風が吹かなければ、ポカポカと春のように暖かい。熱函道路を通っていくと伊豆縦貫道路建設のため、かってあった店がずいぶん少なくなっている。冠雪を戴いた富士山が乾燥した空にくっきりと美しくそびえているのを仰ぎ見ていく。花屋と画材店が同じ主人で、画材を求めたら、「かめちゃん、こっちってこと知っているでしょ!」と、入り口を花屋の奥さんが叫んで言った。「かめちゃん」、どうもわたしはそういうキャラクターらしいのだ。格段なれなれしくしているわけでもなく、いや、誤解されるのを避けようと努力しているほどなのに。わたしの描いた絵か、HPの名前を知ったのか。まっ、いつも買うときに名前を名乗ってこなかったからだろう。そこでこの近辺のギャラリーの様子など情報を仕入れて、「ここの画廊も使ってね」とのアナウンスを後ろにして、上映時間がせまる中、136号線を急いだ。 肌寒くなってくると、ひと恋しいもので、だれかに会いたくなるものだ。ここ半月で2回別々のふだん会っていない旧友に会った。おたがい白髪が見られるようになっても、会えばその時に瞬時に帰れるものだ。共通点が多いことは話しに花が咲くもので、記憶をたどりながら、共通のことがらをまた見つけ出せたときはうれしいものだ。

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