「電動車椅子で30年」


 手前味噌ながら、電動車椅子に乗り始めて30年がたった。中伊豆リハビリ・センターを退所したのは1979年9月末のこと。我が家の前の急な坂に歩行器は使えず、家を改築して半年後、1980年4月に電動車椅子を購入した。そのころまだ最高速度は4.5km/hだった。リレーによる制御システムで座席の下でカチカチいっていたような気がする。あの頃は一年に一度くらいの割で道ばたで転倒した。横倒しになっても不思議と、回転レシーブのように身体が回って、転んだ後は、電動車椅子の横でちょこんと座っていた。そのくるっと回る時の時間の長いこと、長いこと。スロー・モーションのようだった。いつもひじを怪我するくらいの軽傷だった。東京にスクーリングに行っていた頃は、その電動車椅子で皇居を一周したり、毎週のように花火大会に行ったりして楽しんだ。歩行器では、外出の域は家の庭ぐらいのものだっただろう。それを大いに広げてくれた。今は高齢者向きのものも含め多くの電動歩行車を見かけるようになった.

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