Triangle:Chapter2

14

(え...?)
雪野は自分の身に起きていることがよくわからない状態だった。
いきなり天に腕を引っぱられ、天の顔が近づいてきて...

そして...

"それ"は実際には"ほんの一瞬の出来事"であったが、ふたりにはとてもとても長く感じられた。
訳がわからない状態だった雪野は"息苦しさ"にはっと我に返ると、ゆっくりと腕を伸ばすと弱々しく天の胸を押した。
そんなに強くはなかったはずだが、天はゆっくりと後ろに倒れしりもちをついた。
膝立ちだった雪野はぺたんとその場に座り込んだ。
そして、しばらくふたりはぽかんとした顔でそのままの体勢でいたが...
「あ...」
突然雪野の瞳からひとすじの涙がこぼれると天は思わず声をあげた。
「わりぃ!! ごめん!!」
天は真っ赤な顔で突然立ち上がると、リビングから駆け出していった。
雪野はそんな天を呆然と見送った。
そして、まだ頬に残る涙をぬぐうこともせず、ゆっくりと自分のくちびるに指で触れた。
「...」
雪野がそのままの体勢のままかたまっていると...
ガタッ。
突然キッチンから聞こえてきた物音に雪野は思わず目を向けた。
「か、要くん...!?」


一方、自室に逃げ込んだ天は部屋の真ん中で頭を抱えていた。
(な、なにやってるんだ、オレ!?)
頭を抱えたまましゃがみこんだ天はおでこがこつんとフローリングの床にぶつかった。
(だって...だって、"あいつは要のことが好きなのに"...)


天がそんな"勘違いワールド"(!?)を繰り広げている中、リビングの雪野はまさに"ヘビににらまれたカエル"状態であった。
「要くん、なんで...買物に行ったんじゃ、なかったの...?」
リビングとキッチンの境界線に立っていた要は雪野の問いににっこりと笑った。
「いや、途中で夕飯の買物もしといた方がいいかなって思って、冷蔵庫チェックしに戻ってきたんだ。」
さらに要はにっこり笑った。
(...見た、よね?...これは絶対...)
極上の笑顔のはずなのにそこから"おそろしさ"しか感じられない雪野は何も言えずにいた。
そして、にっこり笑顔のまま要はリビングにやってくると、どさっとソファに座りうつむくと、深々とため息をついた。
「あ、あのね、要くん...」
雪野は膝立ちで要に近寄った。
「あの、これは、"事故"、みたいなもの、だから、その...」
言いながら雪野は自分の言葉の無意味さを感じていた。
(...って、"事故"って偶然ぶつかったとかならともかく...!!)
ただでさえまだ自分に起こった出来事で混乱している雪野が"うまい言葉"を見つけられるはずもなかった。
そして、ソファの前にぺったり座った雪野は黙ったままびくびくとうつむいていた。
「別に、雪野ちゃんが悪いなんて思ってないよ。」
突然の要の言葉に雪野は顔を上げた。
要は困ったような傷ついたような顔で微笑んでいた。
「ど〜見たって、天が勝手にやったことだし。」
雪野はほっと息をついた。
が...
「だから...」
(え!?)
要はにっこり笑いながら雪野の腕を引き寄せた。
そして...

ちゅっ。

「これで忘れてあげるね♪」
そう言って要は"最上級の笑顔"を見せた。
「???」
雪野はまたもや自分に起こったことが理解できずにいたが...
ガタッ。
今度はリビングの入口から聞こえてきた物音に、まだ雪野の腕をつかんだままの要が目をやると...
「天!?」
「え!?」
びっくりした雪野もそちらに目を向けると、呆然と立ち尽くした天が立っていた。
天は雪野と目が合うとダッシュで玄関方面に消えていった。
「い、今の...」
「見られちゃったねぇ...」
要はしみじみとつぶやいた。


そして、天はマンションの非常階段でまたもや頭を抱えていた。
(し、知らなかった...あのふたり、つきあってたのか...!!)


つまり、要は"天との間接キス"(おいおい)のつもりで雪野にキスをしたのだが、天は"天とのキスを打ち消す"(!?)つもりで要がキスをしたと思ったのだった(笑)

そして、要は天がそんなことを考えているだろうことをお見通しだった。
(まぁ、あえて否定するのも変だからそのままにしておくか...)
実は要は天がひそかに雪野のことを気にしているのに気づいていた。
しかし、天はそのことを自覚していないようなのであえて知らん振りしていたのだが...
(まさかあんな行動に出るとはなぁ...)
要は渋い顔で首を傾げた。
(まぁ、これで何もできなくなっただろうし、まぁいいか。)
要は心の中でにやりと笑った(悪魔?)。

一方、こんなことを考えながら黙り込んでいる要を落ち込んでいるものと勘違いした雪野はひとりおたおたしていた。
「あ、あの、要くん...天くん、たぶん気にしてないと思うから...」
「それはそれでショックだけど。」
「え、あの...」
要はまたうつむくと深々とため息をついた。
「か、要くん、元気だして!! ね!!」
(雪野ちゃんの反応もおもしろいしね♪)
要はうつむいたままぺろっと舌を出した。

いきなり"ファースト&セカンドキス"を奪われたにもかかわらず、その衝撃をかみしめる間もなく要&天に翻弄されていく雪野であった(笑)

そして、3人(+α)の関係はさらに複雑になっていく模様。

♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪

というわけで「A Kind of Masic」最終回です♪
(ってこんな終わり方でほんとにいいのか!?^^;)
もちろん3人のお話はまだまだつづきますのでこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m
よろしかったら下の"next"から全体のあとがきもどうぞ♪
[綾部海 2004.6.7]

to be continued to the next stage:"大地讃頌"

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Photo by おしゃれ探偵