「オレもコンビニ行って来る!!」 先に沈黙を破ったのは天だった。 その明らかに不自然な行動に少なからず傷ついた雪野は立ち上がろうとする天の服を無意識につかんでいた。 「なっ...!!」 「あの、天くん、もし違ってたら謝るけど...わたしのこと、避けてない...?」 天は雪野の言葉に真っ赤になった顔をあわててそらした。 ♯ ♯ ♯ ♯ ♯ 一方その頃、要は玄関を出てエレベーターが到着するのを待っていたが... 「あ、今夜食べるもん、なんかあったかな?」 しばし考えていた要はくるっと歩き出した。 一足遅れでやってきたエレベーターがもういなくなってしまった乗客のために口を開いた。 ♯ ♯ ♯ ♯ ♯ そして、再び宮島家。 「やっぱり...この前のこと怒ってるよね...?」 雪野は天の服をさらにぎゅっと握ると、自分に背中を向けたままの天に声をかけた。 そんな雪野の言葉に天は一瞬びくっとなったが動けずにいた。 「ほんとに、あの時はわたしも言い過ぎたって反省してます!! それに、直接謝らずに要くんから伝えてもらって許してもらおうなんて、虫が良すぎるよね...」 (違う...) 雪野の言葉を背中で聞いていた天は心の中でそうつぶやいた。 (なんで、こいつ、ひとりで悪者になろうとしてるんだよ...オレが"ダメ"だったからああ言ったんだろ...? それなのに...) 天はそう思いながらも、今、自分がどうすればいいかわからなかった。 そして、黙ったままの天が"まだ怒っている"と勝手に判断した雪野はさらに言葉を続けた。(天がそんなことを考えているとはまったく思わずに...) 「ほんとにごめんなさい!! 天くんが"いい"って言うまで何度でも謝るから、また前みたいに仲良くしてほしいの。」 (え...?) 思いもかけない言葉に天は横目でちらっと雪野を見た。 「ほんとのこと言うと、あの時、天くんに"関係ない"って言われたの結構ショックだったんだ。わたし、要くんや天くんともうちゃんとした"友達"のつもりでいたから...」 ("友達"...) その言葉に天の胸はちくっと痛んだが、天自身、その痛みが何を意味するのかがわからなかった。 「わたし、天くんや要くんと何でも言い合ったり助け合ったりできるような友達になりたいって思ってるの。」 (違う...) 何が"違う"のか天もよくわかっていなかったが、その思いと雪野の言葉が天の頭の中をぐるぐると駆け巡っていた。 「だからね、これからでもちゃんとそうなれるようにがんばっていきたいし、天くんもよかったら...」 さらに雪野は話し続けたが天の耳にはほとんど入ってこなかった。 雪野がくれる言葉は自分にとってとてもうれしいもののはずなのに...それを聞くのがつらいのはなぜなんだろう... 天はそう思いながらぎゅっとくちびるをかみしめた。 「でもね、やっぱり要くんにあまり頼り過ぎない方が...」 その言葉に天は思わず雪野の方に身体ごと振り向いた。 いままで見たことないような天の真剣な顔に雪野はびっくりした。 「え、天く...」 (もう...聞きたくない...) そう思った天は雪野の腕をぐいっと引き寄せた。 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ "前回とまとめて1回分でもよかったかも..."とひとり後悔している綾部です^^; 次回、「A Kind of Masic」最終回(の予定...)です♪ 大波乱アリ!? [綾部海 2005.6.4] |