「あれ?」 午前7時45分頃。 雪野が部屋で制服に着替えていると、机の上の携帯が突然「The Phantom of the Opera」(日本語で言うと「オペラ座の怪人」)のメロディを奏で始めた。 (こんな時間に誰だろう?) 雪野が折りたたみ式携帯のサブディスプレイをおそるおそるのぞいてみると...相手は天。 (なんで天くんから!?) そう思いながら、雪野は携帯の着信ボタンを押した。 「もしもし。」 『雪野か!?』 雪野は"そうじゃなかったら誰なんだ!?"というつっこみをしたくなったがあえて口にはしなかった。 「どうしたの?天くんがわたしのとこにかけてくるなんて...」 『要が!!』 「え!?要くんが!?」 せっぱつまった様子の天の声に雪野も真剣な顔になった。 『要が死んじゃう!!』 「は?」 思いもかけない天の言葉に雪野は一瞬固まってしまった。 『雪野、どうしよう!! オレ、どうしたらいいんだ!?』 「ちょ、ちょっと待って!! どういうことなのか説明してよ!!」 天の話によると、いつもの時間に起きてこない要を変に思った天が要の部屋をのぞいてみると要がベッドでぐったりしていた。 計っていないがどうやら熱もあるらしい。 「それって普通、風邪じゃない?」 『そんなことはない!! 要は風邪ひいたことないんだ!!』 雪野は"そんな人がいるんだろうか?"と考え込んでいる間にも天のマシンガントーク(!?)は続いていった。 『オレひとりじゃどうしたらいいかわかんないんだ!! 雪野、助けてくれよ!!』 「...ということは、わたしがそっちに行くっていうこと?」 『当たり前だろ!! 早くしないと要が...!!』 「わかったわかった!! じゃあ、今から行くから!!」 雪野はそう言うと電話を切った。 (いいのかな...?) 要によると、天は他人が家に来るのをいやがっているようだが、その天が"来い"というのだからこの場合は大丈夫だろう。 (それよりも...) 雪野は壁に掛かったスヌーピーの時計に目をやった。 D駅発の電車がちょうど出発する時刻で、マンションの目の前の線路を電車が通る音も聞こえていた。 次の電車は10分後なのだが、その時間がもったいない。(10分あれば天たちのマンションの最寄り駅まで行けてしまうので) (しかたがない!!) 雪野はきちんと制服を着込むと、学生鞄を手に部屋を飛び出した。 ピンポーン。 約15分後、宮島家のインターフォンが鳴り響いた。 「雪野!!」 天は勢い込んでドアを開けた。 (ちなみに、エントランスの自動ドアを開けてもらうためのコールにより雪野が来たことは確認済み) しかし... 「誰...?」 ドアの外に立っていたのは雪野ひとりではなかった。 天の知らない青年が雪野の隣に立っていた。背は高くロン毛・茶髪で大学生くらいに見える。 「もういいから車で待ってって!!」 「だって"友達が風邪ひいた"って言うけど、めちゃくちゃピンピンしてるじゃん!!」 「だから、風邪ひいたのはこの人じゃなくって...!!」 玄関の前で言い争うふたりに天はあっけにとられていた。 (なんだこいつ?...ひょっとして雪野の...) 「天、お客さん...?」 考え込んでいた天がその声に振り返ると...パジャマ姿で毛布を肩から掛けた要がいまにも倒れそうな顔で廊下の壁にもたれかかっていた。 「ほら!!」 雪野の言葉に青年はぽんと手をたたいた。 「なるほど!!風邪ひいたのはお兄さん?」 青年は天ににこっと笑いかけたが、天はまだ「?」のままだった。 「あの...誰?」 天がなんとかその言葉を絞り出すと、青年はまたぽんと手を叩いた。 「あ、ごめんごめん。自己紹介がまだでした。」 青年はにっこり笑った。 「いつも雪野がお世話になっています。雪野の父の前田久志です。」 「"父"!?」 天と要は同時に叫んだ。 「"義理"のね。」 「雪ちゃん、いちいちそう言わなくってもいいじゃないかぁ!!」 そして、またもやぎゃーぎゃーと言い争いを始める父娘(義理)に天と要はどうすればいいのかわからず呆然と立ち尽くしていた。 「あ...」 要は突然自分の周りの景色がぐるっと回転し始めたように感じた。 「要!?」 「要くん!?」 天と雪野は要のすぐそばにいたのだが、要にはその声がはるか遠くから発せられたもののように聞こえた。 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ やっと本編に久志パパが!!(ひとりで狂喜乱舞←おいおい) そして、気がつけば天のラストのセリフが前回と同じ^^; ちなみに、Triの3人組が「オペラ座の怪人」をやるとすると"ファントム:要 クリスティーヌ:天 ラウル:雪野"(なんか間違ってる^^;) (↑わかる人にしか通じないネタですみませんm(_ _)m←って「オペラ座の怪人」、本編に関係ないじゃん^^;) [綾部海 2004.3.25] |