アンバランス −NO.1 すべての始まり−
その夜、は両隣りに部屋をとった、兄、エドワードと、弟のアルフォンスに挨拶をし、いつもの通りの時間に自室に戻り、ベットに入った。
暗い・・・闇の中。その中に、はポツンと1人、立っていた。
何処からか、微かだが、聞こえてくる声・・・奇妙な音。
それは、いつもの聞き慣れた声ではなく。
何を言ってるのか、耳を傾けて、その話声を聞いてみる。
しかし、それが、何を言っているのか、話の内容でさえも聴き取ることが出来なかった。
段々と、は怖くなってきてしまい、その場から離れようとした・・・が。
突然、自分の立っている地面から、光が射し・・・は、その眩しさに目を細めてしまう。と、次の瞬間。
いきなり、足元から錬成陣が浮かび上がってきたのだった。
「!!??」
突然のことに、は、何が起きたのか把握出来ずに、ただ立ち尽くしてしまう。
その直後。回りの視界が開けて・・・隣りに、もう1つの錬成陣が浮び上がり。
其処に立っていたのは・・・金髪の小柄な少年・・・の見慣れた人物。
「!?エドっ!?」
は、目を見開いて驚いてしまう。
しかし、エドワードの方は、動く気配すらなく。
目を閉じて、じっとその場に立っていた。
何故、エドワードが隣りにいるのだろう・・・しかも、どうして此方に気付かないのだろう?
自分は、こうして話せるというのに。
まさかとは、思うが、気を失っているということはないだろう。エドワードに限って。
ふっと空気が下から吹き上げて、エドワードの金色の髪を軽く持ち上げる。
そして、整った顔立ち。それは、まるで、天界から下りて来た天使の如く。
少しの間、は見惚れてしまっていた。
・・・が、今はそんな暇はない。何とかして、エドワードに気付いて貰わなければ。
「エドっ!」
先ほどより、声を大きくして呼んでみる・・・が、エドワードからは何の反応も返ってこない。
先刻、微かに聞こえていた声と、奇妙な音が段々と此方に近付いてくる。
は、このままではいけないと思い、身体を動かそうとしたのだが、手足や、身体全体が、目に見えない何かに縛られているようで、動けなかった。
どうしよう・・・このままだと・・・。
「エドっ!!ねぇ、お願いっ!!起きて!!エドー!!!」
自分の叫び声に、ハッとしては目を覚ます。
どうやら、おかしな、変にリアルな夢を見ていたようだ。
窓の外に目をやると、太陽が東から昇ってくのが見えた。
そろそろ、朝だろう。少々早いが、起きてしまおうかと思い、は自分の寝ていたベットから出ようとした。
とその時、は自分のものではない鞄が横にあるのに気付く。
これは・・・エドワードのものだ。何故、此処にエドワードの鞄が・・・?
不思議に感じ、首を傾げる。そして、立ち上がろうとした瞬間。
ガシャン。
「?」
何だろう?この金属音。
まるで、自分にもエドワードの機械鎧がついたような音だ。
これは、一体・・・?は、足元を見ようと首を下げる。
「!?えっ!!??こっ、これって・・・!!」
正真正銘のエドワードの機械鎧だ。
でも、何故、自分の身体に、エドワードと一緒の機械鎧が付いているのだろうか?
「――――ということは、もしかして・・・」
恐る恐る、自分の予感が外れてくれるように祈りながら、自分の右腕に目をやる。だが。
「やっ、やっぱり、機械鎧・・・!?」
ギッ。ギッ。と指を動かしてみる。
目の前に、金色の髪がサラっとながれてくる。
半分、パニックになりかけそうな状態に陥る。
きっと、夢だろう。そう思いたいが、夢の中で夢を見ていた・・・ということ自体、考えにくい。
夢だとしても、、どちらもリアルで、怖いぐらいだ。
「わっ、私、エドになってるって・・・こと??」
とにかく、鏡を見なくては。
そう思い、困惑しながらもバス・ルームに向かおうと、足を1歩踏み出す・・・
と同時に、勢いよく、自分の寝ていた部屋の扉が、開け放たれた。
「・・・!!」
「えっ!?・・・えっ、エド・・・?」
の、自分の姿をしている、エドワードがそこに居た。
目の前の自分の姿に、お互い、驚いて唖然としてしまう。
「どっ、どういう・・・こと?」
「―――それは、こっちが聞きたいぜ」
の姿をしたエドワードが呆れたように、答えた。
"朝、起きたら、お前の姿になってたんだ"
腕を組みながら、顔を顰め息を吐く。
ガチャッ。
と二つ、横の部屋の扉を開けて姿を見せたのは、弟のアルフォンスだった。
「あれ?兄さん、。おはよう。今日は、早いんだね」
珍しいこともあるものだと思いながら、柔らかい口調で、二人に言葉をかける。
「あっ、アルー・・・」
今にも泣きそうな声で、アルフォンスを呼ぶエドワードの姿をしている。
「なっ、バカッ!!こんなとこで、泣くヤツがあるか!!」
「だって・・・」
アルフォンスから見れば、エドワードが泣きそうな顔をしていて、がエドワードを怒鳴っている・・・ようにしか見えない。
まるで、性格が逆転した、そんな感じだ。
「えっと・・・兄さん??」
そんな二人を見て、今度はアルフォンスが戸惑ってしまうのだった。