2023.11.7~9

兵庫県

2泊3日の予定で、兵庫県の巨樹の旅に出かけた。新幹線を西明石駅で降り、駅前で予約しておいたレンタカーに荷物を積み込み、出発した。丹波篠山で高速を降りる予定が、下りられず、春日まで行ってしまった。道の駅で予定を組み直す。

三日月の大ムク

養父市能座386にあるヒダリマキガヤに向かう。カヤの実に、通常は右巻きに見られる螺旋状の模様が左巻に見られることから、ヒダリマキガヤと命名されている。カヤノキとしては、近畿地方以西では、最大のもので、地元では親しみを込めて「かやのきさん」と呼んでいる。
  カヤのある土地は、明治政府で活躍した男爵・北垣国道の生家である。敷地は標高220mに位置し、谷側に面した敷地の東側中央にこのカヤが立っていた。

丹波篠山市大山宮に向かう。国道176号鐘ヶ坂トンネルの南約1.5km、国道の西山裾に追手神社が鎮座する。境内に入ると、夫婦イチョウと名付けられた2本のイチョウが丁度黄葉の見頃を迎えていた。拝殿の左手前にモミの木が立っている。地元では「千年モミ」と呼ばれている。かっての落雷で、頂部を失ってしまったようだ。幹には、下から見上げると、反時計回りに回転しながら螺旋模様が見られる。平成元年の巨樹・巨木調査で日本一のモミとされ、国指定天然記念物になった。午後2時過ぎなのに、境内は薄暗く、良い写真が撮れなかった。平成25年の調査で、樹幹の空洞化、亀裂が見つかり、支柱が設置された。

カツラの南側には木が無く、脇を1筋の清流が流れている。そのわきの斜面にカツラの木が立っている。千本カツラの樹形で、主幹は無く、細いひこばえが周りを取り囲んでいる。葉は殆ど落葉し、樹形が際立つ。

樹高 30m
目通り幹囲 10.0m
樹齢 伝承1300年
兵庫県指定天然記念物

樹高 27m
目通り幹囲 10.0m
樹齢 推定200~299年
兵庫県指定天然記念物

1日目

兵庫県丹波市氷上町三方に向かう。葛野川(かどのがわ)に沿って上流を目指す。葛野川の水源は舟坂峠の東側で、水源に最も近い集落が氷上町三方である。谷奥に向かうと、道路のすぐ横にカツラが立っている。兵庫県には多くのカツラの木があるが、生活圏に近いカツラは珍しい。神社のカツラではないが、この地では神木のように崇められている。根元の空洞をくぐりぬけたものは家内安全の神護があるというが、くぐり抜けるのは難しそうだった。このカツラは幹がしっかりしている。

樹高 30m
目通り幹囲 12.0m
樹齢 推定350年
丹波市指定天然記念物

朝来市和田山町藤和に向かう。県道136号線を進み、藤和峠を越え、畑川上流の谷に入る。藤和集落の路傍に大杉が立っている。見落として、集落に入ってしまい、集落の方に手前にあると教えられ戻った。ウラスギの仲間で、複数の支幹に支えられ、大きな樹幹を戴いている。主幹基部には空洞ができているようで、スギの扉で蓋をしたようになっている。案内板によると、丹波国佐治の山垣城主足遠政の長子藤和が訳あってこの地に隠棲した。ここが自身の遠祖と同姓の藤原正司がかって仮寓した地である事を知って、正司を「大将軍」と呼んで尊敬し、正司の墳墓の傍にスギを植え、神木として崇めた。

三方の大カツラ

丹波市青垣町大名草(おなざ)に向かう。大名草集落の南東、岩屋山から西に伸びる尾根の先端部の北麓に常龍寺がある。目指すイチョウは常龍寺の旧地に立つ。登山口から約30分林道を歩く。杉林を進むと、目の前に大イチョウが現れる。実はこのイチョウは大イチョウの前に立つイチョウで、目指すイチョウはこの奥に立っている。

日吉神社は「山王権現」と呼ばれ、山王の使者がサルであることから、茅葺妻入りの本殿(兵庫県指定文化財)には、両側に一対のサルの彫物が置かれている。三本杉は、本殿の手前左側に立っている。地上1.5mの高さで3幹に分かれている。分岐点に梯子がかかっていて、ここを跨いで子授けを願うと、本願が叶うとされている。

丹波市柏原町大新屋(かいばらちょうおおにや)に向かう。県道290号から新井小学校の東約200mの三差路を南に曲がる。山の方に600mほど進むと新井神社(にいじんじゃ)の前に出る・。江戸時代に日吉神社の分霊が祀られた。

新井神社の三本杉

カヤの実は、精製され、最高の食用油として利用された。戦前は、カヤの種1升が米1升という物々交換で良くさばけたという。今でも老人会が拾い、管理しているようです。

佐用郡佐用町下本郷湯浅に向かう。本郷川の支流湯浅川に沿って、湯浅集落がある。集落内の旧家の母屋と土蔵の間にムクノキが立っている。2011年には、住んでいたようだが、今は無人となっている。狭い場所に閉じ込められ、窮屈な形で窮屈な格好でムクノキが立っている。今は葉を落としているので、侘しげである。

樹高 27m
目通り幹囲 14.5m
樹齢 伝承400年
兵庫県指定天然記念物

養父市別宮に向かう。鉢伏山(1221m)周辺は、神鍋高原と並びスキー場密集地である。ハイパーボウル東鉢スキー場近くに別宮の大カツラが立っている。眼下には棚田が広がり、その先に氷ノ山(1510m)が見える。

3日目

別宮の大カツラ

樹高 40m
目通り幹囲 8.0m
樹齢 伝承670年
和田山町指定天然記念物

軍スギ

樹高 36m
目通り幹囲 18.4m
樹齢 伝承2000年
国指定天然記念物

朝来市和田山町竹ノ内に向かう。円山川の支流のひとつ糸井川に沿って、谷を遡る。竹ノ内集落を過ぎると道はそのまま林道床尾線になる。「不動の滝」を過ぎると、「糸井の大カツラ」の看板が現れる。大カツラまでは約600m未舗装の道で、車で行こうと思えば行けるようだ。途中の道ですれ違った人はすごい道だと言っていた。車を止めて、歩くと間もなく正面に大カツラが姿を現した。主幹の無い、千本カツラと呼ばれる樹形である。殆ど葉を落とし、枝ぶりが良く分かる。主幹は既に朽ち、80本のひこばえにより、内部の空洞が覆われている。周囲はよく整備された公園のようになっていて、カツラを美しくきわだたせている。名僧がこのカツラに法衣を掛けて雨乞いをしたとも伝えられ、「衣木」とも呼ばれている。

糸井の大カツラ

下方に長く伸びる枝から沢山の気根(乳柱)が下がっている。前に立つイチョウの枝と交差し、連理になっているように見える。案内板によると、気根が土にもぐり、木となって生えてきたと書かれている。気根の中には、一度切り取られて、その後また伸びてきたと思われる物もある。登ってきた甲斐のあるイチョウだ。黄葉はまだ始まっていなかったが、何人かの人が登ってきていた。登り口を探すのに苦労したという方もいた。帰りに常龍寺のお参りをし、保存支援金を300円づつ納めた。

樹高 34m
目通り幹囲 7.8m
樹齢 300年以上
国指定天然記念物

夫婦イチョウ・雌株
樹高 30m
目通り幹囲 3.8m
樹齢 350年

樹高 40m
目通り幹囲 8.8m
樹齢 200~299年

追手神社のモミ

樹高 26m
目通り幹囲 7.35m
樹齢 800年
国指定天然記念物

佐用町から新幹線相生駅まで、車を走らせ、16時過ぎに駅前のレンタカー店に着き、車を返した。無事故であったことがなによりで、ホッとした。知らない土地で悪戦苦闘したが、何とか何本かの巨樹に会うことができて良かった。自分の足で歩かないと、たどり着けない木もあり、達成感があった。

樹高 19m
目通り幹囲 9.9m
樹齢 800年
兵庫県指定天然記念物

2日目

常龍寺の大イチョウ

建屋のヒダリマキガヤ

和池の大カツラ

美方郡香美町村岡区和池字大沢に向かう。瀞川山(1,039m)東山腹に広がる高原の一角に但馬高原植物園がある。「癒しの森」を自称する高原の林で、「平地植物の上限、高地植物の下限、南方植物の北限、北方植物の南限」に位置するのだそうだ。
 大カツラは自動車道をくぐった先、小さな渓流を跨いで立っている。根元の大きさに比べ、幹の数が少なく、ひこばえの数も少ない。