布石の常識6
11消しを考える時は、相手にも地を与える心のゆとりを |
相手の地模様を荒らすには、フトコロ深く入っていく手法と、外から浅く消す手法があります。どちらを選ぶかは、冷静に見極めなければなりません。深く入ってゴロニャンと死んでしまうようでは問題外ですが、死ぬことはないにしても、イジメを食って相手にうまい汁を吸われるようでもやはり得策とはいえません。 深く入って苦しむよりは、浅く消すに限ります。 消しの手法としては、ボウシと肩ツキが代表的なものです。もちろんほかにもいろいろな消しの手法がありますが、この二つをおぼえておくと、とりあえず便利です。 |
1図 白1のボウシ。黒▲が第三線で低いとき、ボウシの消しが有効になります。白1でaやbに打ち込むのは、黒の思いのままにイジメられそうで危険が多すぎます。白1に対しては黒cまたはdの受けが考えられますが、いずれの場合もキカシとして白は満足すべきです。もともと黒石の多いところですから、ある程度地になるのは当然と考えなければいけません。白も左下方面、上辺に地模様を持っていることを忘れないようにしたいものです。 |
2図 白1なども大場には違いありませんが、黒2とトバれると消し方が難しくなります。 |
3図 次は肩ツキ。 下辺の黒模様に対し、白aと打ち込むのは黒bと攻められて、相当苦しそうです。この場合、白1の肩ツキから5までと消す要領です。黒の二間ビラキの石はすでに堅いので、その付近を固めても惜しくないしいう考え方があるのです。 |
4図 肩ツキを誤って用いた例です。黒▲の三間ビラキは、aの隙があるので、白aと打ち込むのがねらいの本命というべきでしょう。そこを白1、黒2で固めてしまっては白aのねらいが消えてしまいます。白5まで、ある程度模様は消したにしても、aの隙を守らせた罪を背負っているので、あまり成功とはいえません。 5図 もう一つ。白1の肩ツキはどうでしょうか。白△の三間ビラキにはaの隙があることに注意してください。黒2から4と黒石が加わると、aの隙がますます目立ってきます。これもある程度、黒模様を消しましたが、自分の弱点をさらけ出した罪を割引しなければなりません。従って、白1の白1の肩ツキは悪手ということになります。ではどう消すかといえば、思い切ってbと打ち込むか、あるいは白c、黒4のとき白dからの消しが考えられるでしょう。 |
6図 次は武宮流の大模様を消す場合。 深くなく、浅くなくといういう着点を見つけることが大切で、白1などがその例です。白1をaなら黒bと攻めるし、白bでは黒aと囲われます。白1がその中間地点で、黒も守るか攻めるか態度を保留し、黒2とカカってきました。 |
7図 黒1なら白2から4と囲わせます。この白2、4は左方へ向けての勢力となり、白6とシマって、なかなか負けない碁です。 |
ポイント 消しをおぼえるには、まずヤキモチの心理をなくすこと。 相手にもほどほどの地を与える気持ちが大切。 大模様の消しは、攻めるか守るか、相手が迷う着点を求める。 |
12 打ち込むときは、まず見通しを立てて |
打ち込みはいうまでもなく、相手の地模様を荒らす手段ですが、その内容は大きく分けて、次の二種類あります。 1 打ち込むことによって、地を荒らすだけでなく、相手の石を攻める。 2 ただ単に、地を荒らす。 もちろん、この中間の意味が含まれるものもあるわけですが、1のほうがきびしいことはいうまでもありません。 |
1図 はやばやと白1の打ち込みですが、その目的は、黒▲を攻めることにあります。黒2のとき白3とコスミツけ、黒4と重くさせてから白5とトビました。ただ黒も2のトビを打って、右上の地模様を固めているので、白1の打ち込みが優勢に結びつくとはいえません。 |
2図 黒1の打ち込みもただ地を荒らすわけではありません。白の根拠を奪って攻めを残すという積極性を持っています。白4まで、厚みができたともいえますが、場合によっては攻めの的になるでしょう。この打ち込みは黒に危険性がなく、大いに戦果をあげたといえます。 |
3図 白1はただ単に黒地を荒らす打ち込みの例です。手をこまねいて、黒aぐらいに守られるともう打ち込む余地はなくなるでしょう。こういうときの打ち込みは、着点を誤らないようにしなくてはいけません。黒▲が第四線なので、そのスソをねらう白1があとでサバきやすい打ち込みです。白7まで。 |
4図 左辺一帯の白模様を荒らすのに、打ち込みの急所は黒1です。第三線に打ち込むのが大切で、この位置から一方に白aのノゾキやbのスベリ、もう一方にもcやdの余地があり、サバきやすいのです。思い切って打ち込んでも、サバキの当てがないというのではいけません。実戦はこのあと白eとツけ、黒dとスベりました。 |
5図 白1のツケには、黒2から4のスベリで生きぐらいは楽にあります。黒8までとなっては心配ないでしょう。この結果、白に中央へ向かっての厚みができますが、上方、二間ビラキからスベっている黒三子がしっかりしているので、白の厚みがそれほど働くわけではありません。地を荒らして相手に厚みを与える場合、その厚みがどの程度に働くかということは、もちろん前もって考えておかなければならないことです。 |
6図 白1のサガリなら黒2とトビます。この黒が取られるようなことはないでしょう。白としては、1とサガってもまだ黒a、白b、黒cの隙があり、左下の地があまり大きくまとまらないのは泣き所です。 |
7図 アマチュアは左辺に打ち込む場合、黒1と入りたくなります。しかし、この位置はかえってサバキが難しそうです。例えば、白2とコスまれ、黒3から5のとき白6とツケられても困ります。黒1はあとのサバキの見極めのない打ち込みです。 |
ポイント ただ地を荒らすだけでなく、相手を攻めるねらいのある打ち込みはとくに効果的。 打ち込むときは、サバキの見通しを立てること。相手に厚みを与えることにも注意。 |