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2002年2月17日 焼きばめを行いました。
※2月28日にUPした内容に一部誤りがありましたので、お詫びし訂正いたします。


 

緑町では来る当番町に向け、山車の車輪を新しくし、これに伴い「焼きばめ」を行いました。山車の車輪は、内輪が木製、外輪が鉄で出来ています。木製の車輪はすり減りやすいため、鉄の輪で補強します。外輪の鉄を焼いて膨張させ、木製の内輪にはめ込み密着させることを「焼きばめ」といいます。数十年に一度しか行なわれることがないので、大変めずらしい行事です。


【内輪となる木製の車輪】
写真は木製の車輪です。
車輪部分は扇型のパーツに分かれて作成され、これが丁寧に組み立てられて一つの車輪が作られます。材料には、ケヤキが使用されており、木の収縮などの変化を防ぐため、伐採後40年近く経過したものが使用されるのだそうです。車輪を支える軸の部分は、その1本1本の支点が交互になり、安定性を増す工夫がなされています。昔、この軸部分は樫の木が使用されていたそうです。組まれている部品の所々にアソビあり、加重に耐えたれる工夫がされています。車輪の型紙などはなく、古い車輪を基にして型を起こし、一つ一つのパーツを作成して、車輪が出来上がります。非常に手間のかかる、そして技術のいる作業です。


【外輪となる鉄輪】
木製の車輪を補強する鉄輪です。
これからの「焼き」に向けて、薪の中に埋められています。鉄輪は、上記の木製車輪より、少し小さく作られています(およそ鉄の厚さ分小さいとの事)。この鉄輪の大きさも、鉄自体の材質(古い・新しいect.ect…)によって膨張率が異なるため、鉄輪と木製の車輪の大きさが、ぴったり合うためには、熟練の技が必要となるのです。
【いろいろな準備】
焼きばめでは、膨張した鉄の輪を木製の車輪に取り付けた後、一気に水で冷やして、木製の車輪と鉄輪を密着させます。このため、あらかじめ大量の水を準備しておきます。本日の持ち物は、長靴&カッパ&軍手。後ろの方に、いくつも写っているバケツの数を見て頂ければ、必要となる水の量がお分かりいただけるでしょう。


【神事】 さて、作業の無事を祈り、神事の開始です。
火打ちをします。

お神酒を撒きます。

【火入れ】
神事に引き続いて、火入れが行なわれます。鉄の車輪が埋められた薪に火が点けられます。途中、鉄輪をより高温にするために麻袋がかけられます。(近年、ムシロの入手が困難な為、現在は麻袋(昔は唐人袋とも言ったそうです)を用いるそうです。そしていよいよ、真っ赤に焼かれた鉄輪を火の中から取り出します。


【本作業 焼きばめ】

【その1】  真っ赤に焼かれた鉄輪が火の中から取り出され、木製の車輪にはめ込まれます。
【その2】
鉄板の上に乗せられた木製の車輪に焼けた鉄輪をはめると、木製の車輪が燃えあがります。「車輪が燃えちゃう!!」と思って、私なんぞはすぐに水を掛けたくなってしまったのですが、すぐに水を掛けてはいけません。鉄の輪をハンマーで叩いて、しっかりと車輪にはめ込み、このあと、一気に水で冷やすのです。車輪はめ込み〜冷却までは、おおよそ2〜3秒の出来事です。


【その3】
あとはバケツで水をジャンジャン!!かけて冷まします。あたり一面の蒸気!足元さえも見えません!!
どんどん水を掛けていくうちに、蒸気も少なくなり、車輪が完成します。


【そして完成】
でき上がった4本の車輪です。
車輪の木製と鉄輪の接合部分をみると黒くこげています。あとで聞いてみると、木製の車輪は、燃えることを考えて作成されているとのこと。木が燃えることによって、鉄の輪との密着性もよくなり、しっかりとした円形になるということでした。「お見事!!」という言葉が、思わず口をついて出て来てしまいました。



【ふるい車輪はどこへ?】
さて、新しい車輪の作成に伴い、古い車輪は不要になったわけですが、この車輪がどうなるのかと言いますと…古くなった車輪は、頼朝行列などの際に、姫様用牛車の車輪に使用されるとのことです。しっかりとした技術で作られらたものは、長い間使い続けることができるのですね。


【ひとこと】
『焼きばめ』は頻繁に行う行事ではないので、緑町で次回行なうのも何十年も先のことでしょう。本当にとても貴重な体験ができたと思います。
さてさて、一つ心配なのは、現在、この職人技(木製車輪と鉄輪の作成)を引き継ぐ後継者がいないということです。次回となるその何十年か後、この職人技が残っていることを心から祈りたいと思います。

【追記 工場の見学】
車輪を作成した工場(こうば)を拝見させていただきました。右写真の大きな車輪を焼きばめする際には、クレーン車が出動して鉄輪&車輪を持ち上げ、水もバケツでかけるのではなく、河川に直接浸して冷ましたのだそうです。

車輪の木製パーツが精密に作られます。 内側の木製車輪のパーツです。これを組み合わせて一つの車輪が出来上がります。 工場にあった大きな車輪。