医療崩壊とコムスン事件の
本当の原因はどこにあるか?


富井医院 院長
富井明望
 周知の通り、介護大手コムスンの不正請求による指定取り消し事件が、大きく医療福祉・介護業界を震撼させている。
 一方、コムスン事件よりかなり前から医療の崩壊が言われている。病院勤務医の自殺、過労死、集団離職、病院の病棟閉鎖、医師の救急拒否、医師および医療関係者のモラルの低下、医療機関の診療報酬過大請求など、毎日のように新聞やテレビ、あるいはインターネットのブログなどで医療福祉介護業界が悪の根源であるように国民に印象付けしている。今回も多くの世論やマスコミが口を揃えて、コムスンの経営者の批判を繰り返している。
 これらの報道を鵜呑みにすると、日本の医療福祉関係者はとんでもないモラルのない、金儲けしか考えていない人間であると思うようになる。しかし、問題の根源は本当に長年寝食も忘れて国民の健康に奮闘してきた医療福祉従事者にあるのか?
 我々の答えは、「No!」 すべての原因は、政策と施策にある!
 ここ数年、小泉政権の医療福祉制度の「改悪」が実行されるようになってから、診療報酬、介護報酬が2年、3年と段階的に20%以上削減され、その上、全く現場の苦痛が分からない官僚によって作り出された滅茶苦茶な厳しい規制の変更(そのなかで最も致命的なのが、施設基準の変更による定員増加規定である)などが、強引に医療機関や介護企業に押し付けられている。
 そもそも医療福祉政策改悪の原因は国家の経済政策の失敗にある。バブル経済や国家経済政策の失敗で、国家財政の大幅な赤字を生み出した当時の官僚と政治家たちが高額な議員年金やエリート公務員退職金をもらっていることは言語道断だが、その補填の矛先が、最も生産性の低く、しかも政治力学的に官定制度に依存しなければならない医療福祉・介護業界に向けられており、まさに俎板の鯉になっている。
 このような施策は、中国やロシアのようなかつての社会主義国家の官僚たちも驚くほどの高圧的かつ非民主主義的である。表面上資本主義・民主主義の制度を維持しながら、骨子裏は陰険な社会主義的な官僚制度であり、国民を騙しやすい制度だといえる。
 また、高速道路上の誰も使わない電話に200万円も出す特別会計に巨額な黒字が存在しながら、一般会計が累積した天文学的数字の赤字のために、増税や健康保険支払いの負担増を行う事など、国民の理解と支持は到底得られないことは明白である。
 国家が強くなり、国民が豊かになれる国家政策なら国民の支持を得られるが、逆に社会保険庁問題のように、官僚たちが自分自身の失策隠蔽、私益私利のための施策を国家政策というのなら、その結果はどのようなものになるかは、歴史的によい例が数切れないほどある。それは、国家自身が崩壊することである。
 先日報道された、小泉元首相を含め、かつて厚生大臣を執務されていた歴代の大物政治家たちに、社会保険庁の問題についての責任を追求すべきだという自民党幹部の発言は、国家崩壊を食い止める一つの道ではないか?また、自民党が参議院選挙で勝つためは、自分自身の失策を深く反省すると同時に、官僚制度の徹底改革を遂行する必要があると考える。