| 漢方のキ・キ・メ 第1回 黄耆 |
東京大学医学部生体防御機能学教室研究員 中国中医薬大学 宋 清華 |
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| ◆黄耆は上品!? | ||||||||||||||||||||||
| 漢方の生薬には「上品」、「中品」と「下品」の三つのタイプに分かれます。 「上品」というのは体質を強化するなどの効果があり、副作用は全くありません。毎日摂取することができ、「命を養う」。「中品」は少量か短期間なら毒副作用がなく毎日摂取でき、穏やかな作用で「精を養う」。「下品」は病気治療作用が強いものの、しばしば副作用を伴います。 黄耆は古来最も常用される漢方薬の一つです。漢方における黄耆の評価は、中国で現存の最も古い薬学専著、『神農本草経』において「上品」として収載されていることからも周知の通り、決して劇的な作用を示すわけではありません。同じ上品として収載されているニンジン(人参)に匹敵するほど重要な薬物です。ニンジンはみなさんもご承知の通り、桐の箱に収められ高価な生薬として取り扱われていますが、中国では現在もニンジンと並んで、黄耆も上質のものは特別に取り扱われております。黄耆の生薬としての位置付けは、日本より中国のほうが遙かに高く評価されています。中国の風習ではよく上質な黄耆を妊産婦に贈ります。中国の黄耆に対する特別視には十分な理由があります。 中医学では、「黄耆は手足の太陰経に入り、気を補い陽を助ける薬物で、衛気を実し、表を固め、気を暖ため、陥を挙げるとある。陽虚症の人で、表を虚し自汗するもの、気血が不足し、心身ともに疲労しているもの、脾胃虚弱で、食欲不振、泄潟あるもの、陽気がめぐらず水腫のあるもの、癰疽が内にこもり、膿血が少ないもの、中風で手足が不自由なもの、崩漏脱肛あるものなどに用いる」。このように黄耆の応用範囲は極めて広いのです。張元素は「黄耆は甘く温にして純陽なものだ。その功用には五種ある。諸虚、不足を補うのが一、元気を益すのが二、脾、胃を壮にするのが三、肌熱を去るのが四、膿を排し、痛を止め、血を活し、血を生じるのが五であって、陰疽を内托する瘡患者の聖薬である」といっています。 現在、臨床では補気升陽、固表止汗、利水消腫、托毒排膿の目的で用いられています。補気升陽とは元気をつける、気力をつけるということで、固表止汗とは皮膚の栄養状態を改善し、汗腺の機能を調整すると言う意味です。利水消腫とは水分代謝の異常を改善し、膿みをとることを言い、托毒とは抵抗力を増やして炎症を除くことを言います。 |
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| ◆現代薬理研究で証明された黄耆の薬効 | ||||||||||||||||||||||
| まず、強壮作用があります。黄耆エキスを連続経口投与したラットで,遊泳時間の延長が観察されました。また,血清蛋白や肝におけるロイシンの取り込み量を増加させることも明らかにしました。つまり動物の体力、持続力を増強します。また、強心作用があります。黄耆とニンジンは両方ともに心筋細胞の代謝を促進する作用を有し、特に中毒、疲労による心臓衰弱に効果があります。 また、血圧降下作用に関して、黄耆の水、アルコールエキスを用いて、ウサギの血圧を下降させることが可能です。その作用は末梢性血管の拡張によるものと考えられます。利尿および腎炎に対する作用も認められ、つまり、腎炎の発生を抑制し、蛋白尿と高コレステロール血症の発生を遅延させます。 一方、我々は、黄耆は免疫調整作用があると証明しました。我々の研究によると,黄耆はB細胞を活性化させる作用を持っています。さらに、マウスの記憶低下を抑制し、いわゆる老化抑制作用があると考えられます。他に、抗ウイルス作用、抗菌作用、抗腫瘍作用及び肝障害保護作用も報告されています。 以上述べましたように黄耆は人体の各器官の生理的な機能を促進し、体力を増強するという点でニンジンと同様な効果を示します。中医学では両者とも気を補う薬物、即ち補気薬です。これは中国でニンジンと並んで特別に取り扱われるわけです。 臨床的に,黄耆の単独使用は少ないですが、強壮、止汗、利尿などの目的で種々の漢方に配合されていることは多いです。黄耆を含む処方の補中益気湯,十全大補湯,人参養栄湯などはいずれも補剤の代表処方です。次回は黄耆を中心とする処方を紹介する予定です。どうぞご期待下さいませ。 |
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| ◆黄耆が使用されている漢方薬 | ||||||||||||||||||||||
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