あなたが心筋梗塞になる
 リスクはどのくらい 

LDLコレステロールの話

富井医院院長 富井明望

咳と痰についてその1
 心筋梗塞はとても恐ろしい病気である。胸が鋭い刃物に刺されたように痛い!!!下手をすれば、数時間内に心臓の拍動が止まってしまい、意識もなくなり、命があなたから徐々に離れていく。
 どなたもこの恐ろしい病気にはかかりたくないだろうが、どなたにもそれにかかるリスクがある。というのは、もっとも恐ろしい犯人はあなたのすぐそばにいるからだ。
 それはコレステロールである。
 コレステロールはどこにもある。子供の時からよく食べていた卵の黄身は、百パーセントコレステロールである。また、コレステロールの高い食べ物は次の表に取りあげている。(表1)
食品名 目安量( )内はg数 エネルギー(Kcal) コレステロール含有量(mg) 100g中コレステロール含有量
主菜 鶏レバー 1人前 (60) 67 222 370
豚レバー 1人前 (60) 77 150 250
牛レバー 1人前 (60) 79 144 240
鶏手羽肉 1人前 (100) 254 111 110
鶏もも肉(皮付き) 1人前 (100) 182 95 95
鶏むね肉(皮付き) 1人前 (100) 239 80 80
いか 1杯 (250) 190 750 300
すじこ 1人前 (30) 75 153 510
わかさぎ 5〜6匹 (80) 80 152 190
うなぎ(蒲焼き) 1串 (60) 203 144 240
たらこ 1/2腹 (40) 46 136 340
ししゃも 2尾 (50) 91 130 260
あなご(生) 1尾 (60) 101 96 160
しゃこ(茹) 3尾 (60) 56 90 150
うに(生) 2〜3個 (30) 44 87 290
きす 小2尾 (80) 77 80 100
たこ(茹) 1本 (80) 79 80 100
くるまえび 中2尾 (40) 37 76 190
しらす干し 1人前 (30) 53 75 250
ほたるいか 5〜6尾 (30) 33 75 250
どじょう 5〜6尾 (40) 35 72 180
あわび 1人前 (50) 31 70 140
塩辛 1人前 (30) 30 69 230
鶏卵 中1個 (60) 97 282 470
卵黄 中1個 (18) 65 234 1300
うずら卵 2〜3個 (30) 52 141 470
副菜 プロセスチーズ 2枚 (40) 136 32 80
チェダーチーズ 1枚 (20) 85 20 100
生クリーム 大さじ1杯 (15) 65 18 120
調味料 バター 大さじ1杯 (10) 75 21 210
牛脂 大さじ1杯 (10) 94 10 100
ラード 大さじ1杯 (10) 94 10 100
嗜好品 カステラ 1切れ (60) 190 114 190
ケーキドーナツ 1個 (60) 258 66 110
 しかし、このコレステロールそのものが犯人ではない。犯人はその中にある。その名は、LDL−コレステロールだ。
 コレステロールは血液の中に含まれている脂肪の一種である。その大きさから、コレステロールはいくつかの種類に分けられる。一番大きいものから一番小さいものまでその差は10倍!!!(詳しいことは図1を参照)。問題のLDLはコレステロール軍団のなかでもあまり目立たないものに属しているが、その悪さは抜群である。
 なぜならば、欧米で行われた何万人も参加した臨床実験では、高脂血症治療薬でこのLDLを平均より35%減らすと、5年のサイクルで確実に心筋梗塞が減ることがわかった!逆に、LDLが高い場合は確実に心筋梗塞が増えてくる。
 実際に心筋梗塞で亡くなった方の大動脈を解剖してみると、その血管の壁に分厚くなっている箇所が見られる。(図2)それをプラーク(plaque-飾り板の意味)と病理学者が呼んでいる(前回のフォリオでも紹介した)。このプラークこそ心筋梗塞の際に、大動脈やその他、体の各部位から流され、心臓の栄養血管である冠動脈を塞がる血栓の元凶だ。そしてこのプラークの中は、主に、血管の壁の内部に入り込んだLDLである。
 さて、理屈があまり好きではない方にとっては、このような理論は単調で、味気のないものに違いない。「はやくどうすれば自分のLDLの値が分かるかを教えなさい!」とか「LDLが高かったらどうすればいいの?!」などの質問が聞こえてきそう!
 つい最近まで、LDLを知るためには、まず、総コレステロールや善玉のコレステロール(HDL)を測定してから、面倒な計算式に入れて算出しなければならなかったが、今では採血した血液から直接LDLが測定できるようになった。残念なことに、最近行った御殿場市の基本健康診断ではまだHDLだけしか測定していないが、富井医院では空腹状態で来ていただいて採血すれば簡単に測れるようになっている。
 ちなみに、LDLの標準値は140(単位はmg/dl)以下である。もちろんこれは単独の値で意味があるのではなく、やはり総コレステロール値、中性脂肪値、HDLコレステロール値などの総合的に評価した方がいい。
 ではどのような食事をとれば、LDLを減らせるのか?それには、まず不飽和脂肪酸というやや難しい専門用語を覚えてほしい。そして、この不飽和脂肪酸を多く摂れば、悪玉が減り、善玉が増えることになる。不飽和脂肪酸はオリーブ油、ごま油、コーン油など植物油にたくさん含まれている。逆に動物性の油にはコレステロールを増やす飽和脂肪酸が多く含まれている。「動物性を減らし、植物性を増やすなんかは常識だ!」という方がいるかも知れないが、実際に食生活を見てみると、なかなかそう簡単にいかないことは言うまでもない。
 また、すでに悪玉コレステロール(LDL)が高いといわれている方については、もちろん食事療法だけでは間に合わない。数多くの薬が開発されている。これらの薬は副作用が少なく、効果がはっきりしているので、心配なく服用することができる。問題は悪玉コレステロールが目に見えなく、症状もなかなかでないため、つい薬を飲むのを忘れてしまう、いわゆる「油断大敵」ということである。こういう場合は、1から3ヶ月に一度空腹時に採血する習慣を身につけることしかない。
 さて、生命科学はどんどん進歩しており、LDLについても、研究が進んでいる。現在では、LDLの中には「超悪玉コレステロール」というグループがあるということまで分かっている。これはLDLが正常であっても心筋梗塞をおこした人の血液から、LDLの値が低くても、LDLの中で、この超悪玉が占める割合が高いことで分かるようになった。この超悪玉の名はsmall dense LDLと呼ばれており、中性脂肪との関係も深いといわれている。残念ながら、現在ではまだ、一般的に簡単に超悪玉を測定することができないが、近い将来は必ず普及できると言われている。