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果て無き夢へ
果て無き夢へ登場人物


第三十七話   ランナウェイズVSエンジェルス 第六協奏曲〜想い出のスライダー〜







理奈:「(若奈ちゃん、この勝負に私は介入しないよ。想いっきり、楽しんで!!)」
理奈は、何もサインを出さず、両腕を大きく広げて見せた。
独特の、「任せた!」というサインだった。



若奈:「ありがとう・・・理奈ちゃん・・・」
若奈は、小さくつぶやくと、ボールの縫い目を確かめるように回す。
今までも、何度か対戦はしてきたが・・・
時雨はいつも、気のないスイングで三振を取られているばかりだった。
正直、今日が最初の真剣勝負になるであると自分でも考える。
若奈:「(初球・・・左打者の渉に対しては・・・)」
縫い目を決めると、しっかり、ゆっくりと振りかぶる。
世界がゆっくり、自分のペースにあわせて動くように感じられた・・・

















サイドスロー・・・
水平に振りぬかれた腕から放たれた白いボール。
そいつは、18メートル近く離れたライバルのもとへと加速していく。

















時雨:「やはり・・・コーナーを突いてくるか!!」

















時雨は若奈が外角低め一杯にボールを投げ込んできたのを目で捉えると、スイングの始動にかかる。
おそらくはこのコース・・・見送ったとしてもストライクコールが起きるのは間違いなかった。
時雨:「見逃す気なんて・・・さらさらねぇ!!」
しっかりとバットを出していく。







だが、ボールはその下をすり抜けるようにして外角へ逃げていく。



時雨:「(シンカー!?)」




バットの下をうまくすり抜けたボールは、待ち構えていた理奈のキャッチャーミットに収まった。
最初のスイングは空振り。ストライクコールが起きる。
時雨:「相変わらず・・・キレのいい変化球を投げ込んでくるな・・・あのときからずっとかわらねぇ・・・」
へへっ、と少し思い出し笑いをすると、少しだけずれたヘルメットを直してバットを構えなおした。


















一球投げただけで、頬を伝わる緊張という名の冷や汗。
一球投げただけで、わくわくの鼓動で溢れる、自分の心臓。
若奈は、今、彼との勝負の時間、一瞬一瞬を楽しんでいた。
若奈:「(あなたは・・・いつもこんな気持ちなのかな・・・?)」

















静波高校時代・・・





チームのエースピッチャーであった時雨は、いつも試合のときは本当に楽しそうに投げていた。
2番手投手だが、自慢のミート力の高さを変われ二塁手を努めていた若奈は、ちらりと見える時雨の楽しそうな横顔が好きだった。
そして、いつか追い越したい、あのマウンドで、対等に選手たちと渡り合いたいと想っていた。
それはもちろん、ライバルである時雨を超えなければならないことであった。

















そして、あの日の甲子園・・・
雨が降っていた・・・




試合は0−1・・・1点ビハインド。
それでも9回裏、最後の攻撃にかける静波ナイン。
その回の先頭打者だった自分は、雨の中でも的確にボールを投げ込んでくる相手投手のストレートに押され、三振を喫してベンチに戻って来る途中だった。
若奈は、うつむいた表情でベンチに戻ろうとしていた。
自分が、同点のための口火を切るはずだったのに、うまくいかなかった。
このままじゃ負けてしまう。悔しさから、本当に涙が流れそうだった・・・。
そのとき、ネクストにいた時雨から声をかけられた。






















時雨:「・・・・・・!」























そのときの彼の言葉を、若奈は明確には思い出せない。
ただ、彼がその後、起死回生の同点ソロホームランをライトスタンドに叩き込んだことは覚えている。
降り頻る雨の中、ガッツポーズを何度も繰り返し、楽しそうにベースを回るエースを見て、若奈はときめきを覚えた。

















若奈:「だけど・・・それとこれとは・・・別だよね・・・」

















今、バッターボックスにいる時雨 渉は、静波高校の時雨ではない。
敵チーム、木更津ランナウェイズの時雨 渉なのである。
もう一度、自分のまぶたをこすってみる。
バッターボックスにいるのは、確かに想い人。
何かを吹っ切るように、彼女は縫い目をスライダーの握りにした。


















若奈:「あなたから教えてもらった・・・スライダー・・・」


















若奈にスライダーの指導をしたのは、時雨である。
時雨の武器は高速スライダー。
それを静波時代、彼女がどうしても知りたい、投げたいとうる目で頼んできたので、しぶしぶ投げ方を教えたのであった。
若奈は、手首の使い方が非常にうまかったので、すぐにスライダーを覚えた。
彼女の投球の幅が広がり、4番手投手だったのが一気に2番手に上り詰めた要因もスライダーにある。
スライダーは、若奈にも時雨にも想いいれのある球だった。

















若奈:「あなたを倒せるのは・・・この球しかない・・・!!」

















2球目・・・
若奈は、スライダーを時雨の内角低目へとスライドするよう計算して投げ込んだ!









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