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第八話  双方の気迫







修吾:「仲嶋さん、ナイスバッティング!」
先頭打者を放った仲嶋を、修吾がハイタッチで迎える。
しかし、仲嶋は不機嫌そうな顔であまり手を合わせず、すぐにベンチに座った。




安:「これで一人落ちたな」
珂日:「そうだな。ま、あとの連中もこの調子で巻き添いに・・・」
江成:「でも、あのルーキーはどうだよ」
江成はそういって、修吾を首でさす。かなりいい感じを抱いていないようだ。
安:「確かに、落とすのに時間がかかりそうだ」
珂日:「下手な指示は出さないほうがいいな。やる気になりそうだ」
木村:「それならば、様子見と行くか・・・」
江成:「それ、サンセー」




2番打者川相は、バットを適当に振って空振り三振。
そして、打順は3番の修吾に回ってきた。




修吾:「ここでアピールして、開幕一軍を狙うぞ!」
修吾はすでに、開幕一軍しか頭に入っていなかった。
今ここでスタートを切っておかないと、かなりプロ野球選手としてやっていけなくなる。
せいぜい、開幕一軍が狙えないならば、主力選手はともかく、名の知れぬルーキーは、それなりの成果を上げなくてはならない。
チャンスは大体、一軍選手が大きな怪我をして2軍に落ちてきたときだけ。そんな、確率の低い機会を待つよりは・・・
修吾:「絶対にホームランしかない!」
幸い、仲嶋のソロホームランでA組には1点リードをしている。修吾は、自らの一発で試合を自分たちのペースにしようとしている。
だが、背後に漂う違和感。自分が冷たい目で見られていると、過去を思い出してしまう。
彼の左手首付近にある傷・・・触れてはならない彼の過去。
その傷がうずく。何かを訴えかけるように・・・。
修吾:「絶対打つからな・・・理緒・・・」
修吾は、自らの過去に語りかけ、バッターボックスにゆっくりと入った。




久遠:「3番打者は今年のルーキーか・・・」
ロージンパックをつけながら、先発の久遠は修吾を凝視する。
久遠:「威圧感とは別の闘気が、俺を襲ってきている・・・」
確実に、修吾の体からは気迫があふれていた。彼の指先・・・つま先に至るまで、全身から気迫があふれている。
キャッチャーの田上も同じく、修吾の気迫を感じ取っていた。そして、サインを出す。
久遠:「度胸試しだ!」
ゆっくりと振りかぶる久遠。そして、腕をしならせ、サイドスロー投法で、ボールを放った。




仲嶋:「修吾、危ない!!」
安たち:「(ニヤリ・・・)」




修吾は、間一髪ボールをよけていた。
一歩タイミングが間違えばデットボール危険球。もちろん、田上の要求したコースからは、かなり外れている。
田上:「タイム」
ここで田上はタイムを取った。そして、マウンドに駆け寄り久遠に声をかける。
田上:「内角・・・それもボール2個分はずすところだ。あんなに大きくそらすか?」
しかし、久遠の体は表情とは裏腹に震えていた。
久遠:「畜生・・・野郎、当たりそうになる瞬間まで、ボールを見極めていた・・・」
久遠は、帽子のつばに手を当てると、小さく深呼吸をした。
久遠:「ルーキーに不覚を取ってるようじゃ、今年も不本意になっちまうな・・・」
田上は、背中越しに久遠を見送って、ポジションに戻った。久遠は、マウンドを足で均している。




久遠:「おい、ルーキー!」
突然、久遠がバッターボックスの修吾へ話しかけてきた。かなり異例な展開である。
修吾:「・・・」
久遠:「お前にだけは、打たれない!」
修吾:「100%スタンド・・・」
双方は、想いを込めながら真剣勝負を望んだ。
久遠が2球目を投げると同時に、修吾はタイミングを計った。
修吾:「この回転は・・・!」
そして、修吾の手元でスライドする。スライダーだ。仲嶋も受けていたが、これほどの変化とは打席に立たないとわからない。
ど真ん中に来ていたボールが、右打者である修吾の懐へと食い込んでくる。
まるで、獲物を虎視眈々と狙う大蛇の口のようだ。
修吾は、力を込めてスイングするが、タイミングがストレート待ちだったせいで、ややおっつけた感じになり、ライト方向へと流した。
結果はファール。しかし、狙い球が絞れなくなった修吾。
修吾:「あのスライダーが頭に焼き付いて離れない。(畜生、相手に有利な配球にさせてしまった!)」
久遠:「(次、あいつが待っているのは、何かわからないな。追い込んでやるか・・・)」
そうして久遠は、田上の出したサインに一度首を横に振る。
田上が出すサインにことごとく首を振る久遠。どうやらサインが考えているものと違うようだ。
田上は悟った。今日の試合でまだ一球も投げていない変化球がある。
田上:「(待て!そいつはいけない。まだ実験段階中だ!昨シーズンも、ランナウェイズの清川にやられちまったじゃないか!)」
田上は、慌てて制御する。彼はこのときベンチだったが、確実に久遠の投球内容をチェックしていた。そして、彼のバッテリーキャッチャーも勤めている。
長い付き合いでもある久遠と田上。そんな彼だから、勝負にあせる久遠を制御しようとしていた。
だが、一度着いた闘争心は久遠を大人にはさせてはくれなかった。サインを待たず、久遠は振りかぶったのだ。
田上:「(馬鹿野郎!マジであいつは投げる気だ!)」
田上は、仕方なくキャッチャーミットを構える。外角低めのコースだが、やや、真ん中よりのコースだ。
修吾:「(次に来る球も、フルスイングで行く。俺のモットーは、積極的に行くことだろ!)」
自分に言い聞かせるようにして、修吾は振るスイングした。
だが、捕らえたはずのボールはそこにはなかった・・・。









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