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第十四話  珂日のガッツ







安は大人しくベンチへと戻り、堂々と偉そうに腰掛ける。
安:「(珂日の野郎、もうやめたって何だョ!どいつもこいつも・・・)」
安は爪を噛むと、バッターボックスの珂日を凝視した。




B組も、ピッチャーを代えてきている。
2番手としてマウンドへ上ったのは、今季ドラフト下位指名の田中である。
高校時代は、石川県の高校でエースをやっていた。持ち球はカーブとチェンジアップだが、ストレートは140キロ後半と、なかなかの素質を見せている右腕だ。
田中:「緊張する、でも、落ち着いていけば大丈夫・・・」
深呼吸し、ルーキーの田中は左打席に入った珂日へと目線を移した。
田中:「(さっきファインプレーをしたショートの人だな。やる気がなさそうだから、ちょっとおちょくってみようかな・・・)」
田中は、振りかぶってキャッチャー田上の指示したコースとは反対の・・・内角高め危険球ぎりぎりのコースへと投げた。
修吾:「あ、危ねぇ!」
安:「(裏切り者には鉄槌を・・・)」








ガン!!






かろうじて珂日は球をよけていたが、田上が取れるはずもなく、ボールは後ろのバックフェンスまで転がっていた。
ここで、田上が主審にタイムを取る。
田上:「おいおい、いくら初登板だからって、あれはない・・・」
田上が言い終わる前に、田中は不気味な笑みを浮かべて呟いた。
田中:「ふふっ。ルーキーなんだからしょうがないでしょう?ちょっと手が震えちゃったんですよ」
田上は嘘だと見抜いた。リリースにマッタクぶれがなかった。明らかな故意の失投だ。
仕方なく、田上はボールを田中のグローブの中へ入れると、「しっかり投げろよ」とだけ告げ、ポジションへ戻った。

珂日:「よぅ、田上。お前の組のピッチャー、豪い棒球、投げてくれるじゃないの・・・」
珂日が、まるで幽霊でも見たかのような顔で、田上へとささやく。逆ささやき戦術だ。
田上:「んっ。あぁ、ルーキーなんでな、緊張しているんだとよ。大目に見てくれや」
田上がそう返して、サインを出す。内角低めのカーブ。びびっている珂日には丁度いいと思ったのだろう。
だがしかし、珂日はしっかりとミートしていた。
珂日:「面白くねぇ。カウントを平等にしてやるよ・・・」
そしてわざと振りぬくタイミングをずらす。すると打球は、ファールチップのようになり、キャッチャー田上の後ろを転々と転がった。
田上:「ミートしていたのに、勿体無いことをするな」
珂日:「どうだか・・・」
珂日はいつも以上に集中力を高める。そして、ふぅと一息つくと、バットを回し始めた。
珂日:「(なめた真似をしてくれるじゃねぇの、こっちのルーキーも)」
田中は外角のコースにストレートを投げ込んできた。
すると珂日は、意表をつくようにセーフティバントを仕掛ける。
田中:「うっ!」
田上:「その手できたか!」
こつんとバントをすると、打球はサードとピッチャーの間辺りに転がりだした。
田中:「俺が処理します!」
がっちりとボールをつかみ、一塁へ素早く送球する。
珂日は、全力疾走で一塁ベースを狙うが、わずかに送球のほうがはやそうと見て、ヘッドスライディングを試みた。判定をきわどくするためだ。




砂埃が舞ったかと思うと、審判の手が水平に開いていた。





一塁審:「セーフ、セーフ!」




修吾:「よっしゃ!ランナーが出た!」
仲嶋:「な、ナイスバントじゃん、珂日さん・・・」
珂日は、落ちたヘルメットをかぶりなおすと、小さくガッツポーズをした。
珂日:「プライドなんて捨ててやる。一軍へあがる!もうそれしか道は残っていない!」


安:「(それがお前の答えか、珂日・・・)」
安は珂日のガッツを見届けると、一人ベンチ裏へと下がっていった・・・。









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