ＳＳ６

　今日は可憐のお誕生日・・・・・・。
そして・・・夢にまで見たお兄ちゃんと二人っきりのお誕生日会・・・・・・。

　可憐は今、お誕生日会の準備をしています。
今までお母さんや白雪ちゃんに教わってきたお料理のことを全部使って、お兄ちゃんにとびっきりのごちそうを
食べてもらおうと・・・・・・可憐、精一杯頑張っています。
本当は、みんなでお誕生日会をしようとお兄ちゃんや咲耶ちゃんたちが言ってくれたのだけど・・・・・・。
可憐が、できれば今年のお誕生日会はお兄ちゃんと二人だけで・・・って、お兄ちゃんにお願いしてみたら、
少し困ったようなお顔になったお兄ちゃんだったけど、可憐のお願いを聞いてくれることになりました。
ありがとう、お兄ちゃん。
やっぱり・・・可憐、お兄ちゃんのことが大好きです！

　準備がだいぶ済んだところで、可憐はあることを思い出しました。
今回のお誕生日会をすることが決まった翌日に、実は・・・可憐、千影ちゃんからある物を貰っていたんです。
それは千影ちゃんが言うには、誕生日の日にお兄ちゃんといっしょに使ってみるといいよ・・・ということでした。
見た感じは小瓶に入ったお飲み物のような感じがしたので、その時は冷蔵庫の中に閉まっておいたのだけど、
急に気になったので、冷蔵庫を開けてその小瓶を取り出しました。
可憐はキッチンテーブルの椅子に座り、その小瓶の栓を開けることにしました。
すると開けたとたんに、フワ～っとなるような香りに包まれました。
それに何だか甘くておいしそうで・・・・・・。
可憐は一口だけ飲んでみることにしました。
すると、飲んだ直後に何か不思議な感覚がして・・・・・・可憐は・・・・・・・・・・・・。

　しばらくして気が付くと・・・・・可憐は・・・・・・可憐の体はとても小さくなっていました。
それはさっきまで可憐が座っていた椅子に体が全部乗るくらいの大きさに・・・・・・。
しかも可憐の体をよく見てみると、さっきまで着ていたお洋服がなくて、体中がなんだかふんわりしていて・・・・・・。
それは、まるでネコちゃんのようでした。
・・・・・・もしかして可憐・・・・・・ネコちゃんになっちゃったの！？
可憐はキッチンに置いてある戸棚の方を向いて、そこにあるガラスを鏡代わりにして覗き込んでみました。
・・・・・・・・・・・・可憐・・・・・・ネコちゃんになってる・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・どうしよう・・・・・・もしこのまま・・・お兄ちゃんが来ちゃったりしたら・・・・・・・・・。
そうしばらく可憐が考え込んでいると・・・・・・。
ピンポーン・・・・・・と、玄関のチャイムが鳴るのが聞こえました。
もしかしたら・・・お兄ちゃんかな？
一応玄関の鍵は閉まってるはずだから、他の人だと中には入れないだろうけど・・・・・・。
そのあとで何回かチャイムが鳴ったあとに、玄関のドアの開く音がしました。
どうやら、やっぱりお兄ちゃんのようでした。
・・・・・・だって、お兄ちゃんは可憐のお家の合鍵を持っているから・・・・・・。
可憐はうれしさのあまり、今の自分の姿のことはすっかり忘れてお兄ちゃんのもとに走り出しました。
お兄ちゃんはちょうど靴を脱いで、お家の中に上がろうとしているところでした。
「お～い！・・・可憐、いるか～い？」
と、お兄ちゃんが可憐のことを呼んでくれたので、可憐もお兄ちゃんの足元に駆け寄って、
「（お兄ちゃん、いらっしゃい）」
と返事したのだけれど、お兄ちゃんにはネコちゃんの鳴き声にしか聞こえなかったみたいで・・・・・・。
「あれっ！？・・・猫！？・・・いつのまに・・・・・・。可憐、猫を飼い始めたのかな？
でも、最近そういった話は全然聞いてなかったし・・・・・・。
可憐なら真っ先に僕に教えてくれそうなものなんだけど・・・・・・な？」
「（ごめんなさい、お兄ちゃん）」
可憐は、お兄ちゃんにそう答えたつもりだったんだけど・・・・・・。
「そうか可憐はいないのか？でも、いったいどこに行っちゃったんだろうね」
「（お兄ちゃん、可憐だよ。可憐はここにいるよ）」
そうすると、お兄ちゃん・・・可憐のことを抱え上げて・・・・・・。
「う～ん・・・まだ子猫かな？それに・・・ずいぶん可愛らしくて上品な感じがするし・・・・・・。
まるで・・・可憐みたいだな！」
え、ええっ！？・・・お、お兄ちゃん！？
「それに可憐と同じで、猫には珍しく三つ編みにリボンを付けてるし・・・・・・」
あっ！ホント！・・・可憐、慌ててて気付かなかったけど、可憐の両方の耳のすぐそばからは、
短かめの三つ編みといつも可憐がしているのと同じ赤いおリボンが結んでありました。
「よし！このまま玄関にいてもしょうがないし、可憐には悪いけど上がらせてもらうことにしよう！」
そうしてお兄ちゃんは、可憐のことを抱きかかえながら、キッチンの中に入っていきました。

　お兄ちゃんはキッチンテーブルの椅子に座り、可憐はテーブルの上にそっと降ろされました。
「さて、どうしようかな？可憐が戻ってくるまでは、この子と遊んでようかな？」
そう言ってお兄ちゃんは可憐の頭をなでてくれました。
しばらくはそうやって、ネコちゃんの姿をした可憐と楽しく遊んでくれていたお兄ちゃんだったけど、
本当の姿の可憐がなかなか現れないので、ちょっと心配になってきたみたい・・・・・・。
「可憐、いったいどうしたんだろう？・・・・・・もしかして、何かあったのかな？」
可憐のことを心配そうに思ってくれるお兄ちゃんのことが・・・・・・可憐、たまらなくなってきて・・・・・・。
「（お兄ちゃん！可憐だよ！可憐はお兄ちゃんの目の前にいるよ！！）」
そう何回もお兄ちゃんに呼びかけて・・・完全に可憐とお兄ちゃんの目と目が合ったその時・・・・・・。
「えっ！・・・ま・・・まさか、本当に可憐なのかい？」
「（う・・・うん！・・・・・・お、お兄ちゃん！可憐の声が聞こえるの？）」
「あぁ！猫としての鳴き声は変わらないんだけど、かすかに意識として聞こえるんだ！」
「（そ、そうなんだ！・・・でも、良かった。お兄ちゃんに可憐のことがわかってもらえて・・・・・・）」
ようやく可憐がお兄ちゃんとお話しができるようになっても、問題はどうしたら可憐が元の姿に戻れるかでした。
でも、さすがは可憐のお兄ちゃん！何かいい方法を思いついたみたい♪
「・・・・・・あ、あの・・・・・・こういう場合って、たいがいはキスをすれば治るって話を聞くけど・・・・・・」
可憐、しばらくは・・・ぼうっとしてたけど・・・・・・。
「（ええっ！・・・キ、キスですか？・・・・・・可憐とお兄ちゃんが・・・・・・・・・・・・）」
「や、やっぱり・・・兄妹でキスってのは抵抗があるよな・・・・・・。
わかった！また別の方法を考えてみるよ！」
可憐のことを考えて、そう言ってくれたお兄ちゃんだったけど、可憐は一大決心をして・・・・・・。
「（お、お願いします・・・お兄ちゃん！・・・・・・可憐、お兄ちゃんとだったら・・・・・・）」
お兄ちゃんにも可憐の気持ち・・・・・・伝わったみたいで・・・・・・。
「うん、わかった。・・・・・・それじゃあ、可憐・・・・・・目をつぶって・・・・・・」
「（はい）」
目をつぶった可憐にお兄ちゃんのお顔が近づいてきて、・・・・・・そして・・・可憐はとても甘くて優しい気持ちに
包まれました

　そして、気が付くと・・・・・・可憐は元の姿に戻っていました。
ふと左隣を振り向くと、可憐と同じように椅子に座っているお兄ちゃんがいました。
でも、お兄ちゃん・・・・・・なんだか眠っているみたい・・・・・・。
そういえば、千影ちゃんから貰ったあの小瓶は・・・もう中身が空になっていました。
すると、お兄ちゃんもすぐに目を覚まして、
「あれ！？可憐！？・・・・・・う～ん、あれは夢だったのかな～？
そういえば、誰も出ないから合鍵を使って家の中に入って・・・・・。
それから、キッチンに入ったら・・・可憐が椅子に座って気持ちよさそうに寝ていて・・・・・・。
可憐をすぐに起こすのはどうかなと思って、起きるまで待つことにしたんだけど、
ふとテーブルの上を見ると、なんだか甘くていい匂いのする飲み物があったから、思わず飲んじゃったんだ。
それからはなぜか、また玄関のところに戻っていて、中に入ると・・・可愛い子猫が現れて・・・って感じだった」
「じゃあ、あれは夢の中の出来事だったの？・・・・・・しかも可憐とお兄ちゃんは同じ夢を見てたんだ！
これって、やっぱり・・・千影ちゃんから貰ったあのお飲み物の・・・・・・せいなのかな？」
そのことを聞いたお兄ちゃんは、すっかり頭を抱えちゃって・・・・・・。
「なるほど！千影のね～・・・・・・はは・・・ははは・・・・・・」
「お、お兄ちゃん！」
「・・・・・・あ、いや、なに・・・千影も粋なことをしてくれるな～と思ってさ！可憐が猫になっちゃう夢なんて、
そうそう見れるもんじゃないしね！・・・・・・それに・・・・・・・・・・・・」
「や、やだ・・・もう、お兄ちゃん・・・たら！・・・・・・・・・・・・」

　その後は、準備しておいたお料理をお兄ちゃんといっしょにいただくことにしました。
お料理の出来は良かったみたい♪
とびきり上手には出来なかったけど、お兄ちゃんは喜んで食べてくれていたし・・・・・・。
最後にお兄ちゃんが白雪ちゃんが作ってくれたバースデーケーキを出してくれました。
白雪ちゃん、普通のお料理だけじゃなく、お菓子作りも上手だから、とても豪華できれいな作りのケーキ
だったので、食べるのがもったいないくらいでした。
ありがとう、白雪ちゃん！
可憐がケーキの上のローソクの火を消すと・・・・・・。
「可憐、お誕生日おめでとう！！・・・・・・はい、これ・・・僕とみんなからのお誕生日プレゼント」
「わぁ～♪ありがとう、お兄ちゃん！・・・・・・今、開けてもいい？」
「ああ、いいよ！開けてごらん」
可憐が箱に付いているおリボンを解いて、包みを取って中を開けてみると・・・・・、
その中には可愛い子猫ちゃんのぬいぐるみが入っていました。
しかもその子には、可憐と同じ三つ編みとおリボンが付いていました。
「お、お兄ちゃん・・・こ、これって？」
「ああ！それかい？・・・実は、ぬいぐるみ自体はお店で売っているものだけど、その三つ編みとリボンは
後から春歌に頼んで付けてもらったんだ！・・・・・・せっかく可憐の誕生日プレゼントなんだから、ちょっと
可憐に合わせてみたんだ！・・・・・・もしかして、気にいらなかった？」
「ううん、そんなことないよ！・・・可憐、とってもうれしいです！！・・・もしかしたら、あの夢を見ることが
できたのは、・・・・・・そして夢の中でだけど、可憐とお兄ちゃんがまた一つ近づけたことは・・・・・・
これはきっと、お兄ちゃんとみんなのプレゼントのおかげなのかもしれないから・・・・・・」
夢の中での可憐とお兄ちゃん・・・・・・そして今ここにいる可憐とお兄ちゃん・・・・・・。
きっと一生忘れることのないお誕生日の思い出になりそうです・・・・・・。
お兄ちゃん、みんな・・・本当にありがとう！！・・・そして・・・・・大好きです・・・・・・。

　（おしまい）　