すると、その女の子は
「あ〜〜!!おにいたまー!ヒナを置いてっちゃやだよ〜!!」
と、お兄ちゃんに言いながら駆け寄って来る雛子ちゃんでした。
「ああ・・・ゴメン、ゴメン。可憐たちをあんまり待たせるのも悪いと思ってね」
「あ〜!・・・そうだったんだー。あっ!可憐ちゃんと鞠絵ちゃんだ〜!わ〜い!!」
うふふっ・・・雛子ちゃん、今日も元気みたい♪
「雛子ちゃん、いらっしゃい」
「雛子ちゃん、いらっしゃい。ちょっと遅れてきたけど・・・何か・・・あったの?」
鞠絵ちゃんは、そんな雛子ちゃんに優しく問い掛けていました。
「うん、あのね、ヒナね、さっきね、池のなかの・・・大きなおさかなさんとおはなしして遊んでたの〜!」
「そうだったの♪・・・じゃあ、雛子ちゃん、あとでその大きなおさかなさんのところにつれてってくれる?」
「うん!いいよ!ほんとにおおきくてきれいなおさかなさんなんだよ〜!」
雛子ちゃんと鞠絵ちゃん、とっても楽しそう・・・うふふっ♪
「よし!それじゃ、みんな、部屋の中に入ろう!ここで話しているのもなんだしね」
「はーい!お兄ちゃん!!」
「はい、兄上様、そういたしましょう」
「あっ!ヒナも、ヒナもー!!」
そうしてみんな仲良くお部屋の中に入りました。

 お部屋のテーブルの前に座ったみんなに、可憐はお茶をお出しました。
雛子ちゃんにはやけどしないようにと、ちょっとぬるいめにして出してあげました。
お茶を飲んで一息ついたところで、可憐は気になっていることをお兄ちゃんに聞いてみました。
「あの・・・お兄ちゃん。今日、お兄ちゃんが雛子ちゃんを急に連れてきたのは?・・・・・・」
「ああ!そのことなんだけど、今日出かける少し前に雛子のお母さんから電話があってね。
急な用事ができて、今日の夜は雛子一人きりになっちゃうから、代わりに面倒を見てもらえないか・・・
ということだったんだ!」
「そうだったんだー!・・・でも、そのおかげで雛子ちゃんも温泉に来れたんだからよかったよね♪」
「うん!ヒナも〜、温泉に行けるって聞いて、バンザーイしちゃったんだよ!」
「良かったね♪雛子ちゃん。このあとみんなで温泉に入りに行こうね!」
可憐がそういうと、みんなですぐに温泉に入りに行くことになりました♪

 とりあえず最初は大浴場に入って、その後に家族風呂でみんないっしょに入ることになりました。
「じゃあ、鞠絵ちゃん、雛子ちゃん、行きましょう!」
「それじゃあ、1時間後に・・・」
そう言って、お兄ちゃんは男湯のほうに入っていきました。
「う〜・・・ヒナ、おにいたまといっしょがいいな〜・・・・・・」
「雛子ちゃん、兄上様とはあとでごいっしょできるから、それまで・・・ね・・・」
「う〜〜・・・・・・」
うふふっ・・・雛子ちゃんたら・・・そんなにお兄ちゃんといっしょに入りたいのね〜♪

 そうして可憐たちは大浴場で体を一通り洗ってから、湯船に浸かりました。
「うふふっ・・・気持ちいいね!鞠絵ちゃん、雛子ちゃん」
「ほんと・・・気持ちいいです!来てよかった・・・♪」
「うん、うん、きもちいいの〜!!それに、それに・・・いろんなおふろがいーぱっいあるの〜!」
そのあとは、すこしずついろんなお風呂に入って楽しんでいたんだけど・・・・・・・・。
はっ!と気がつくと・・・雛子ちゃんが・・・いない!!
あわてて、可憐たちは雛子ちゃんを捜しました。
「お風呂の中には深いところもあるので心配です・・・・・・」
鞠絵ちゃん、とても心配そう・・・もちろん可憐も同じ気持ちです。
可憐たちは手分けして雛子ちゃんを捜すことにしました。
けど、一通り捜してみて、ここの女性用の大浴場の中には雛子ちゃんはいないことが分かりました。
「もしかしたら・・・雛子ちゃん、兄上様のところに行ったのかもしれませんね・・・・・・」
「あっ!鞠絵ちゃん・・・きっと、そうだよ!」
そう考えた可憐たちは、急いで大浴場から上がって浴衣を着て出ました。
そして、男の人のほうに雛子ちゃんくらいの女の子が入って来なかったか、係の人に聞いてみました。
すると、一度入ってはきたけど、すぐに出てきたみたいでした。
係の人にもう一度お願いして、お兄ちゃんがまだ中にいるか調べてもらいました。
でも、お兄ちゃんはもうすでにお風呂から上がっているみたいでした。
「兄上様、きっとどこかで涼んでいらっしゃるのかもしれないですね・・・・・・」
「うん!・・・もしかすると、お部屋に戻っているかもしれないから、鞠絵ちゃんはお部屋に戻っててね。
可憐は、旅館の中を捜してみます」
そう言って、可憐と鞠絵ちゃんは一旦別れて行動することにしました。

 可憐たちが知らない、その頃の雛子ちゃんは・・・・・・・・・。
「う〜・・・おにいたま、どこですか〜?・・・こっちかな〜?・・・それとも、あっちかな〜?・・・・・・。
う〜ん・・・ヒナ、ちょっとつかれちゃったな・・・・・・
あっ!ここ・・・さっきのおさかなさんがいるところだ〜♪
ねえ!ねえ!おさかなさん、・・・ヒナのおにいたま・・・どこにいるか知ってる?・・・・・・
知らない?・・・・・・そうか〜!おさかなさん、池のお外には出られないから・・・わからないよね・・・・・・」
でも、そこに偶然お兄ちゃんが通りがかったみたいで、
「あれっ!雛子、どうしたんだ!こんなところで・・・」
「あーーー!!おにいたま・・・おにいたまだーーー!!わ〜い!!」
「うん?もしかすると、またおさかなさんとお話したくてここに来てたのかい?」
「ううん・・・ヒナね、ヒナね・・・おにいたまをさがしてたの!でも、でも、見つかんなくて・・・・・・
おさかなさんにおにいたまがどこにいるか知りませんか?って聞いてたの・・・」
「そうか、そうか。ここを通りがかってよかったよ!こうして雛子にも会えたしね!」
「うん、うん。ヒナもおにいたまに会えてよかったよ!」

 可憐は、旅館の中を捜しまわっていたけど、なかなか雛子ちゃんを見つけられなくて・・・・・。・
そして、ふと思い立って、旅館のお庭のほうに目を向けてみました。
すると、そこには雛子ちゃんともう一人・・・お兄ちゃんの姿がありました。
「雛子ちゃ〜ん!お兄ちゃ〜ん!」
すると、
「あっ!可憐ちゃん!」
「あっ!可憐!」
二人とも可憐に気づいてくれてこっちを向いてくれました。
可憐は、雛子ちゃんたちのいる池のそばまで行きました。
「もしかしたら、ここかも?と思って見てみたんだけど、その通りだったね♪
でも、雛子ちゃん、勝手にどこかに行っちゃダメよ!」
「うん・・・ゴメンね、可憐ちゃん。ヒナね・・・どうしてもおにいたまといっしょにおふろに入りたかったの〜!」
「可憐、まあ・・・それぐらいでいいじゃないか。よし、それじゃあ、今度はみんなでいっしょに入るとするか!」
うふふっ・・・お兄ちゃんって、やっぱり優しいな〜♪

 そうして一度お部屋に戻って、鞠絵ちゃんもいっしょになって家族風呂に行くことになりました。
ここの旅館はその家族専用のお風呂があって、宿泊中はいつでも家族だけで入れるようになっていました。
脱衣所に入るところで
「じゃあ、先に可憐たちが入ってて!少ししたら、お兄ちゃんも入るからね!」
「はい!じゃあ、可憐たちが先に入るね!」
「それでは、兄上様・・・のちほど・・・」
「おにいたま〜!すぐきてね〜!!」
家族風呂はもちろん大浴場ほど大きくはないけど、でもそこは露天風呂になってて可憐ちょっとビックリ!!
鞠絵ちゃんと雛子ちゃんも驚いていました・・・うふふっ・・・・・・
可憐たちが湯船に浸かってしばらくするとお兄ちゃんが入ってきました。
お兄ちゃんは・・・その・・・腰にタオルを巻いているだけで・・・キャッ!・・・でも、ステキ・・・・・・。
そうしてお兄ちゃんが近づいてきて可憐たちと同じ湯船のなかに入りました。
可憐・・・こうしてお兄ちゃんとお風呂に入るのは何年ぶりかな〜?
ちょっと・・・・・・ううん!とってもドキドキしています。
あの頃は、今の感じとは少し違っていたような気がするな・・・・・・。
お兄ちゃんに可憐のこの気持ち・・・伝わってくれると・・・いいな・・・・・・。
うふふっ・・・それにしても・・・お兄ちゃん。お兄ちゃんも少し恥ずかしいのかな?
ちょっと可憐たちと離れて湯船の中に入ってるし・・・・・・。
「ねえ、ねえ、おにいたま・・・なんでそんなにヒナたちと離れてるの?もっと近いのがいいよー!」
「えっ!いや・・・あの・・・それはだね、雛子・・・・・・」
「おにいたまが来てくんないなら、ヒナがおにいたまのところに行っちゃう〜〜!!」
そう言うと雛子ちゃんはお兄ちゃんのところに、パッ!っと寄ってお兄ちゃんに抱きついちゃいました。
「えへへへへ・・・これで〜、ヒナとおにいたまはピッタンコだよ〜!!」
「ひ、雛子・・・おいおい・・・・・・・」
わ〜!雛子ちゃん、いいな〜♪お兄ちゃんとあんなにピッタリで・・・・・・。
さすがに可憐は・・・お風呂の中じゃ・・・もうそんなことできないよね・・・・・・。
でも、お兄ちゃんには可憐のこの気持ち・・・分かっちゃったのかな?・・・だって・・・。
「可憐も鞠絵も・・・こっちに来るかい?」
「いいの?お兄ちゃん!!」
「よろしいんですか?兄上様!!」
「ああ!いいよ!こんな機会はめったにないんだしね!」
そうして、可憐と鞠絵ちゃんはお兄ちゃんの背中にピッタリ寄りそうなかたちで温泉とお兄ちゃんのあったかい
気持ちでしあわせでした・・・・・・・・・・。
そのあと、湯船から出たあとはお兄ちゃんの背中を可憐たちみんなできれいに洗ってあげました。
お兄ちゃん・・・とっても気持ちよさそうで・・・よかった♪

 そして夜寝る前には、お布団が三つ並べてくれてあって、お兄ちゃんが真ん中、右側が可憐と雛子ちゃんで
左側が鞠絵ちゃんというようにお兄ちゃんを囲むようなかたちで寝ることにしました。
お部屋の明かりを消しても、しばらくはみんな今日のことでお話に夢中になっていました。
でも、そうこうするうちに雛子ちゃんや鞠絵ちゃんが寝ちゃって・・・お兄ちゃんも寝ちゃったので、可憐もなん
だか急に眠たくなって・・・・・・もうそのあとのことは全然憶えていませんでした。

 でも翌朝、目を覚ますとお兄ちゃんのお顔が目前に・・・・・・・・・。
ええっ!!可憐・・・いつのまにかお兄ちゃんのお布団の中に入っていたみたい・・・・・・キャッ!!・・・・・・。
けど、よく見てみると、可憐だけじゃなく、雛子ちゃんや鞠絵ちゃんもお兄ちゃんのお布団に入ってたんです!
お兄ちゃんもすぐに目を覚まして・・・ちょっとビックリしてました・・・・・・えへへっ・・・・・・。

 お昼少し前に可憐たちは旅館を出発して、お家に帰ることになりました。
帰りは行きと違ってみんないっしょです。
電車の中では、4人で向かいあわせで時々席を替わりながら座ることにしました。
お兄ちゃんの隣に座れたときは・・・可憐、とってもうれしかったな♪
少し電車が大きく揺れたときは、お兄ちゃんの腕に抱きついちゃったし・・・ね♪・・・えへへっ・・・・・・。

 ようやく可憐たちの降りる駅についたとき、鞠絵ちゃんはそのまままだ電車に乗らなきゃいけないので、鞠
絵ちゃんとは車内でお別れをしました。
そのあと、優しいお兄ちゃんは、雛子ちゃんを、そして可憐をお家まで送ってくれました。
可憐のお家に着いたとき、
「お兄ちゃん、できたら・・・また温泉に行きたいね!」
「うん・・・そうだね。また考えておくよ!」
「じゃあ・・・約束だよ♪お兄ちゃん!」
「うん!わかった。約束するよ!」
「ありがとう、お兄ちゃん!大好き!!」
そう言いながら、可憐はお兄ちゃんに優しく身を寄せました・・・・・・・・・・・・。

 (おしまい)
 
(あとがき)いかがだったでしょうか?今回は、かなり冒険をしてしまいました。まさに原作の公野先生に挑む
      つもりの勢いで書きました。こういうかたちでも受け止めてもらえたら幸いに思います。できれば、
      またこういうかたちで書いてみたいと思っています。
      ところで温泉ネタはけっこう他の方々も書かれているんじゃ?と思われるので、ちょっと心配です。
      もしかすると一部ネタがかぶってるところがあったとしても、そのときは見逃してやってください。と
      いうよりもすでにG’sの連載もしくはポケットストーリーズの第3巻にて温泉のお話があったりしま
      すけどね(苦笑)。それでは、次回のお話をお楽しみに〜♪
SSトップに戻る