第2回b 「二人だけのその夜は・・・」
 ど、どうしよう?
「お、お兄ちゃん・・・??」
「あ、ほらだって、僕、何も用意してきてないから・・・」
「あ!それなら大丈夫ですよ!可憐、お兄ちゃんがいつお泊りしてくれてもいいようにちゃんと準備して
あるんです♪」
「あ、ありがとう。可憐は準備がいいんだね!」
「うふふっ♪だって、まずお兄ちゃんのパジャマでしょ!歯ブラシに、そしてお兄ちゃんのパン・・・
キャッ!!や、やだ、か、可憐、恥ずかしい・・・」
「ははは・・・」
「だから・・・ね、お兄ちゃん。何も心配いりませんよ。」
「わかったよ。それなら、今晩このまま可憐の家に泊まらせてもらうことにするよ。」
「わ〜、ありがとう。だからお兄ちゃん、大好き!!」
そう言いながら、可憐は僕の胸の中に飛び込んできた。
「か、可憐・・・。あの・・・」
可憐は顔を赤くして、
「あ!ごめんなさい、お兄ちゃん。可憐、とても嬉しかったから、その、つい・・・」
「いや、別にいいよ。そんなに悪い気はしてないからね。」
「えへへ♪良かった!じゃあ、可憐はこの後、お夕食の準備をしますね♪」
そう言って可憐はキッチンルームに入っていった。

 夕食が済んでから、しばらくすると外は雨が降り出してきた。さすがにもうこの雨の中に出て自分
の家に帰ろうとする気はなくなってしまった。。
後片付けを済ませた可憐がこちらにやって来て、
「お兄ちゃん。今、お風呂を沸かしていますけど、先に入ります?」
「う〜ん、どうしようかな〜?」
と、しばらく迷っていると、ちょっとうつむき顔で可憐が、
「あ、あの・・・お兄ちゃん。久しぶりにいっしょに入るってのはダメかな〜?」
しばし沈黙のあと・・・、
「え、ええーー?!い、いっしょにーー!!」
と驚いて言うと、
「お、お兄ちゃん・・・?」
ちょっと可憐の方もビックリしていて、僕は・・・
「もう、さすがに二人いっしょに入るのはムリかな。」
「そ、そうだよね。無理言ってゴメンね。お兄ちゃん。」
可憐がまだ残念そうな顔をしているので、僕はつい・・・
「そうだ!そのうちいつか温泉旅行にでも行っていっしょに露天風呂なんかに入れたらいいかもね!」
それを聞いた可憐は、とてもうれしそうな顔つきになって、
「わ〜♪可憐、今からとっても楽しみです〜♪じゃあ、どこの温泉がいいか調べておきますね♪」
・・・ちょっと呆気にとられた僕は、
「な、なにもそんなに慌てて調べなくてもいいんじゃ・・・」
「いいえ、こういうのは早いほうがいいんですよ!そうだ!あとでお父さん達にどこがいいか聞いて
おきますね。」
ははは。もう行く気まんまんだな〜。
すっかり笑顔が戻った可憐は、
「じゃあ、先にお兄ちゃんがお風呂に入ってくださいね。可憐は、その後に入りますから。」
「うん、分かった。じゃあ先に入らせてもらうことにするよ。」
「はい。どうぞ、ごゆっくり。お兄ちゃん。」

そうしてお風呂から上がって、1時間ほどTVを観ながらくつろいでいると、可憐もお風呂から上がって
きたので、
「あ!可憐。僕はどこに寝ればいいのかな〜?」
と聞くと、可憐はうつむき顔で
「お兄ちゃん・・・。あの・・・、その・・・、もしよかったらでいいんだけど・・・、可憐のお部屋で・・・
いっしょに・・・寝てくれますか?」
・・・少し間をおいて、
「えーー?!それはさすがに、もう・・・」
僕が言い終わらないうちに可憐は、
「だって、せっかくお兄ちゃんがお泊りしてくれるんだもん!可憐のお部屋でいっしょに寝てくれなきゃ
いやいや!!」
「わ、わかった。わかっった。いっしょに寝てあげるよ。ただし、布団は別々だよ。」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん。それでも可憐、とっても嬉しいです!!」
「あはは・・・。」
そうして、しばらくはいっしょにソファーで並んで座ってTVを観たりおしゃべりをして過ごしていたけど、
僕も可憐も眠たくなってきたので、
「可憐、そろそろ寝ようか?」
と可憐に聞いてみた。
「そうですね。可憐もなんだか眠たくなってきちゃいました。じゃあ、お兄ちゃん。可憐といっしょに可憐の
お部屋に来てください。」
「はいはい。」

そうして、可憐の部屋の中に入ると、可憐のベッドのすぐ横にもう一つ簡易式のベッドが置かれていた。
「ねえ、可憐。僕はこっちのベッドで寝ればいいのかな?」
「はい。お兄ちゃんはそちらのベッドを使ってくださいね。」
可憐にそう言われて、僕は手前にあるベッドに入ることにした。
可憐は部屋の明かりを消して、そして自分のベッドに入った。
「えへへ♪お兄ちゃんとこうしていっしょに寝るのも久しぶりだね。可憐、お兄ちゃんとなら毎日でも
いいんだけどな〜♪」
「はは。さすがに、いっしょに寝られるのはさすがにもう今日が最後かもね。」
そう言うと、
「でも・・・、もし可憐が将来お兄ちゃんのお嫁さんになることができたら・・・その時は・・・」
「か、可憐・・・?」
「キャッ!ヤダ。可憐、そんな・・・恥ずかしい・・・」
僕は、そんな可憐にどう声を掛けていいものか分からなかった。
それからして外の方はだいぶ雨が強くなってきて、時期外れの雷も鳴り出してきた。
可憐も僕もまだ起きていて
「お兄ちゃん。なんだかカミナリさまがこっちにだんだん近づいてきてるみたい。可憐、コワイ・・・」
そう震えながら可憐が僕につぶやいたその直後、
ピカッッ!!ドーーン!!
「キャーー!!」
可憐が悲鳴を上げ、僕のベッドの中に入ってきた。
「お兄ちゃん・・・、コワイよ〜・・・」
と、僕に抱きつきながら泣き震えていた。
「可憐、大丈夫だから。可憐のことは僕が守ってあげるから。」
僕は可憐を優しく抱きとめてそう答えた。

しばらくしてようやく雷も遠ざかり、雨の激しさも峠を越えたようだった。
「お兄ちゃん。やっとカミナリさま、遠くに行ってくれたね。」
可憐もようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「可憐・・・、お兄ちゃんと・・・、とっても・・・幸せ・・・」
そんなことを言われつつ、可憐の方を振り向くと、安心しきったのか
「スゥ〜、スゥ〜・・・」
と、可憐は寝息を立てていた。
結局、可憐は僕のベッドでそのまま寝てしまった。さすがにこのまま朝までというのもマズイと思った
ので、僕が可憐のベッドに移って寝ることにした。
でもそこは、可憐の、女の子の甘い匂いがして・・・
僕の方は今晩寝られそうもないかもしれないけど
『おやすみ、可憐・・・僕の本当に大切な・・・・・・でも、いつかは・・・きっと・・・・・・・・・』

 (おしまい)
(まえがき)このお話は、第1回の続きでそのbパートに当たります。あなたが選んだ選択肢で
      どのような展開になるかは、読んでからのお楽しみ♪
(あとがき)兄妹以上恋人未満編は、いかがだったでしょうか?こちらの方は、できるだけ兄妹以上・・・
      だけど恋人までには・・・という微妙な関係が感じられるように努めてみました。
      あと、もちろん兄妹編もあるので、よければそちらの方もお楽しみください。もし両方読んでいただいて、
      両者の違いが分かっていただければ幸いです。
      それでは。

      (’02年4月4日追記)
       最後の一文に加筆しました。
      どうしても、もう少し“想い”を入れたくなったので、そうしました。
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