ＳＳ２ａ

　ど、どうしよう？
「お、お兄ちゃん・・・？？」
「あ、ほらだって、僕、何も用意してきてないから・・・」
「あ！それなら大丈夫ですよ！パジャマだったら可憐のをお兄ちゃんに貸してあげますね♪」
「あ、ありがとう。・・・って、いや、さすがに可憐のパジャマを借りるわけにはいかないよ～。
いくらなんでも女の子用はちょっとね。それにサイズが・・・」
「え・・・？！あ、やだ、ごめんなさい、お兄ちゃん。そうだよね。可憐、ちょっと失敗・・・えへへ♪」
「ははは・・・」
「じゃあ、あとで代わりにお父さんの替えのパジャマを用意しておきますね。」
「うん。そうしてくれると助かるよ。」
「は～い。お兄ちゃん。」

　夕食が済んでから、しばらくすると外は雨が降り出してきた。さすがにもうこの雨の中に出て自分
の家に帰ろうとする気はなくなっちゃったけど・・・。
後片付けを済ませた可憐がこちらにやって来て、
「お兄ちゃん。今、お風呂を沸かしていますけど、先に入ります？」
「う～ん、どうしようかな～？」
と、しばらく迷っていると、ちょっとうつむき顔で可憐が、
「あ、あの・・・お兄ちゃん。久しぶりにいっしょに入るってのはダメかな～？」
しばし沈黙のあと・・・、
「え、ええーー？！いくら兄妹でも、もう子供じゃないんだから、さすがにそれはムリだよ。」
と言うと、残念そうに可憐が、
「可憐、お兄ちゃんのお背中流したかったのにな～・・・。」
ちょっと泣きそうになってる可憐だけど、僕は、
「今日のところは我慢して。でも、またいつか機会があったら、その時はお願いするよ。」
「うん。じゃあ、可憐、その日まで我慢するね。」
少し可憐に笑顔が戻った。
「そうだね。そうだ！いっそのこと、兄妹みんなで温泉旅行に行って、背中を流し合うのも楽しくて
いいかもね！」
それを聞いた可憐は、とてもうれしそうな顔つきになって、
「わ～♪可憐、今からとっても楽しみです～♪じゃあ、どこの温泉がいいか調べておきますね♪」
・・・ちょっと呆気にとられた僕は、
「な、なにもそんなに慌てて調べなくてもいいんじゃ・・・」
「いいえ、こういうのは早いほうがいいんですよ！そうだ！あとでお父さん達にどこがいいか聞いて
おきますね。」
ははは。もう行く気まんまんだな～。
すっかり笑顔が戻った可憐は、
「じゃあ、先にお兄ちゃんがお風呂に入ってくださいね。可憐は、その後に入りますから。」
「うん、分かった。じゃあ先に入らせてもらうことにするよ。」
「はい。どうぞ、ごゆっくり。お兄ちゃん。」

そうしてお風呂から上がって、１時間ほどＴＶを観ながらくつろいでいると、可憐もお風呂から上がって
きたので、
「あ！可憐。僕はどこに寝ればいいのかな～？」
一瞬、可憐はキョトンとして、
「もちろん、可憐のお部屋ですよ～♪」
と、ニコニコしながら可憐が言うものだから、僕のほうも一瞬キョトンとして、
「あ、そ、そうなんだ。」
「だって、せっかくお兄ちゃんがお泊りしてくれるんだもん！可憐のお部屋でいっしょに寝てくれなきゃ
いやいや！！」
「わ、わかった。わかっった。いっしょに寝てあげるよ。しかし、可憐はいつまでも甘えん坊だな～。」
「えへへ・・・。ありがとう、お兄ちゃん。だから、だ～い好き！！」
「あはは・・・。もうしょうがないな～、可憐は。」
そうして、しばらくはいっしょにソファーで並んで座ってＴＶを観たりおしゃべりをして過ごしていたけど、
僕も可憐も眠たくなってきたので、
「可憐、そろそろ寝ようか？」
と可憐に聞いてみた。
「そうですね。可憐もなんだか眠たくなってきちゃいました。じゃあ、お兄ちゃん。可憐といっしょに可憐の
お部屋に来てください。」
「はいはい。」

そうして、可憐の部屋の中に入ったのだけれど・・・
「ねえ、可憐。もしかして可憐のベッドで僕も寝るの？」
「うふふ・・・、もちろんそうですよ！」
さも当然そうに可憐がそう言うので、
「兄妹だし、まあいいか。」
「うん。そうだよ、お兄ちゃん。兄妹なんだから、変に気をつかうことないよ♪」
微笑みながら可憐にそう言われたので、
「うん。わかったよ。」
「じゃあ、お兄ちゃん。先にベッドの中に入ってください。可憐は、部屋の明かりを消しますから。」
「そう、じゃあ先に入らせてもらうね。ああ～！フカフカだ～！」
そして、可憐もベッドに入ってきて僕の横についた。
「えへへ♪お兄ちゃんとこうしていっしょに寝るのも久しぶりだね。可憐、お兄ちゃんとなら毎日でも
いいんだけどな～♪」
「はは。さすがに兄妹でも、いっしょに寝られるのはさすがにもう今日が最後かもね。」
そう言うと、可憐が悲しそうに
「そ、そんなのヤダッ！！」
って、僕の傍にピッタリくっついてきた。
「か、可憐・・・？」
「そ、そんな・・・寂しいこと言わないで、お兄ちゃん。もしかしてお兄ちゃん、可憐のことキライになったの？」
「い、いや。そんなことないよ。可憐は僕の大切な妹だから、なおさらなんだ。」
「あ、ありがとう、お兄ちゃん。お兄ちゃんが可憐のことそんなに大切に思ってくれてて、可憐とっても嬉しい
です♪」
「あ、いや、その、あはは・・・」
僕はちょっと照れくさくなってしまった。
「お兄ちゃん。こうしてお兄ちゃんにピッタリくっついていると、お兄ちゃんの暖かくて優しい匂いがするね♪
可憐、とっても幸せ・・・」
そんなことを言われて、ちょっと焦ったけど、可憐の方を振り向くと、
「スゥ～、スゥ～・・・」
と、可憐は寝息を立てていた。
もう寝ちゃったんだな、可憐は。
『おやすみ、可憐・・・僕の本当に大切な妹・・・いつまでも、ずっと・・・・・・・・・』

　（おしまい）