第10回 「温もりに揺られて・・・」
今日は気付けば・・・もう5月の半ば・・・・・・。
本来なら五月晴れの天気のいい日が続くはずなのに、ここ何日かは梅雨のような毎日・・・・・・。
僕は学校からの帰り道を、妹の春歌といっしょに並んで歩いていた。
学校の校門の前で会ってからというもの、いつもなら何かと僕に話し掛けてくる春歌なんだけど、
今日は不思議と口数が少ないような感じだった。
「春歌・・・?今日は、どうしたの・・・もしかして・・・何かあったの・・・?」
そう春歌に訊いても、
「いえ・・・兄君さま・・・今日は・・・あの・・・その・・・・・・い、いいえ何でもないんです・・・・・・」
と答えるだけだった・・・・・・。
そうしているうちに、それぞれの分かれ道となる場所に辿り着き、
結局僕は春歌の意味するところを理解できないまま別れることになった。
それからしばらくして一人で家までの道のりを歩いていると、僕の後ろの方から
よく聞き慣れた女の子の声が聞こえてきた。
「お兄ちゃ〜ん!待って〜!!」
それは僕の妹である可憐の声だった。
可憐は僕のところまで駆け寄ってきたかと思うと、すぐ僕にあることを訊ねてきた。
「ねえ、お兄ちゃん・・・今日は何の日か・・・知ってますか?」
そう訊かれて困った僕は・・・・・・。
「う〜ん・・・今日って、何か特別な日・・・だったけ?」
可憐にはそう答えるしかなかったのだけれど、可憐はちょっと驚いたような顔をしたかと思うと・・・・・・。
「お兄ちゃん・・・今日は・・・春歌ちゃんのお誕生日なんですよ♪・・・ウフフ・・・・・・」
可憐からのその答えを聞いた僕も少し驚いてしまったけれど、
「・・・・・・でも、さっき・・・春歌からは特に何も聞かなかったんだけどね・・・・・・・」
そう可憐に答えると、
「きっと、春歌ちゃん・・・自分から今日が誕生日だってことを言いづらかったんだと思いますよ・・・・・・」
「そうか・・・そういうところは春歌らしいな・・・・・・」
僕がしばらく思案顔になっていると、その様子を察した可憐は・・・・・・。
「実は可憐・・・これから妹みんなの分を代表して、春歌ちゃんのお誕生日プレゼントを買いにいくんですけど、
よかったらお兄ちゃんもいっしょにどうですか?」
可憐の折角の申し出を断る理由は特に無かったので、僕はいったん家に戻って着替えると、可憐といっしょに
ショッピングセンターまで出かけて、春歌の誕生日プレゼントを選ぶことにするのだった。
最初に向かったのはアクセサリーショップで、可憐はもう何をプレゼントに買うかを決めているみたいだった。
すぐにその品物を手に取って確認すると、お店のレジまで持っていって支払いを済ませ、ラッピングを頼んでいる
様子からそう伺うことができた。
その間に僕も春歌に似合いそうなものがないかをいくつか見て回ったけど・・・・・・なかなかこれといったものが
見つからず、結局そのお店ではプレゼントを決められないまま外に出ることになった。
するとさっきまでは止んでいた雨がまた少しずつ降り出し始めていて・・・・・・。
「・・・・・・あ、雨・・・・・・」
「うん・・・また少し降り出してきたね・・・・・・」
可憐が呟くように言うと、僕もその言葉に反応するように言葉を返していた。
ここはアーケード街なので、雨が降ってもすぐに傘を差す必要はないから楽でいいんだけど・・・・・・。
「・・・・・・ん・・・あ!そうだっ!!・・・傘・・・傘だ!!」
「・・・えっ!?・・・お兄ちゃん!?・・・・・・傘がどうかしたんですか?」
「あぁ・・・ゴメンゴメン・・・・・・春歌の誕生日プレゼントにね、傘がいいかな〜と思ったんだ!」
「そうだったんだ〜・・・じゃあ、ここから少し歩いたところにいろんな傘を置いているお店がありますから、
そちらに行ってみましょうか?」
「うん、じゃあ行ってみようか!」
僕は可憐が言ってくれたパラソルショップに行き、春歌に似合いそうな傘がないかを見て回った。
するとその中に藍色に花柄模様の傘が展示してあるのを見つけ、春歌が雨の中・・・この傘を差して歩いたら
とても絵になるだろうな〜といったイメージが頭の中で沸き起こっていた。
すると可憐もその傘に見入って・・・・・・。
「わぁ〜♪・・・この傘、春歌ちゃんに似合いそう〜♪」
そう自然に可憐の答えを聞くことができたので、僕は決意してそれと同じ傘を持ってレジに向かうことにした。
でも、途中で可憐に引き止められ、何かと思って振り向くと、そこにはもう1本自分の持っている傘と同じ・・・・・・
いや正確には色違いの傘を持っている可憐がいた。
「お兄ちゃん・・・この傘、お兄ちゃんにどうですか?」
そう言えば、今日この後は天気はもつだろうと思って、僕が傘を持ってこなかったからというのもあるけど、
可憐はまた別に思うところもあって、僕にその傘を薦めてくれているようだった。
結局、傘を2本買い、自分で使う傘は小雨の中を差して春歌の家まで向かうことにした。
可憐はこれからピアノの稽古があって、ピアノ教室に向かうということだったので、途中で別れることにしたが、
誕生日プレゼントは、また夜になってから改めて春歌の家まで届けに行くということだった。
最初は僕もその時間に合わせてと思ったが、可憐のアドバイスもあって、先に一人で行くことになった。
そうして春歌の家の前までたどり着くと、僕は玄関に向かいインターホンを押して、春歌を呼ぶことにした。
すると、しばらくして玄関のドアが開き、中から春歌が少し驚いたような顔をして現れた。
「・・・兄君さま・・・さきほどは・・・・・・あの・・・・・・」
春歌が次の言葉を出しにくくて困っているような様子だったので、僕はすかさず・・・・・・。
「春歌、お誕生日おめでとう!!」
そうすると、春歌はもっと驚いてしまい・・・・・・。
「えぇっ!?・・・兄君さま・・・どうしてそのことを?」
「実は・・・ちょっと小耳にはさんでね!」
そして、僕は手に持っていた誕生日プレゼントを春歌に手渡した。
「兄君さま・・・ありがとうございます!!・・・ワタクシ、大変嬉しゅうございます。
・・・・・・あの・・・中を開けてみてもよろしいでしょうか?」
僕は、うん、いいよ!という意味で春歌に頷くと、春歌は早速その包みを解き始めた。
箱を開けて中のものを取り出した春歌は、それをさらに広げて・・・・・・
ふわりと自分の体をあてがうようにしたのだった。
僕はその姿がとても春歌らしいと感じ、
「とてもよく似合っているよ・・・」
そう春歌に告げるのだった。
「そんな・・・兄君さま・・・ポポポポポッ」
春歌は顔を赤らめて・・・そして次にモジモジとした様子で、こう僕にお願いしてくるのだった。
「・・・あの・・・兄君さま・・・・・・よろしければ、その・・・ワタクシといっしょに少しお外を・・・
歩いていただけませんか?」
僕は春歌のそのお願いを聞き入れ、小雨の降る中を2人で並んで傘を差して歩き始めた。
「兄君さま・・・ワタクシとお揃い・・・なんですね・・・ウフフフッ」
そこで僕はようやく可憐が考えていたことに気付き・・・そしてその優しい心遣いに、
心の中で感謝していたのだった。
夜には可憐や他の妹たちも春歌の家に集まり、春歌にとっては、
とても心に残る誕生日になったようだった・・・・・・・・・・・・。
(おしまい)
(まえがき)今回から毎月の妹誕生日記念として、SSを書いていくことにしました。
第1弾として5月16日の誕生日を迎えた春歌からのスタートとなります。
なお、本来ならその妹と兄のみのSSとなるところですが、当サイトの性格上、可憐ちゃんも
登場いたします♪
ちなみに設定はゲーム「シスプリ」&「シスプリ2」となっています!
それでは、どうぞお楽しみください!!
(あとがき)いかがでしたでしょうか?
最初は“日記(5/16付)”にて掲載したものを、こちらにて改めて掲載しました。
本来は短めにするつもりが、気がつけばSS1本分に相当するボリュームになっていました(汗&笑)。
今回の舞台設定は、5月という時期からゲーム「シスプリ」と「シスプリ2」の中間を想定しています。
従って、春歌は来日してからまだ3ヶ月しか経っていないということで、兄との共通の思い出や
お揃いの物が他の妹たちと比べると圧倒的に少ないのではないかという思いがよぎりました。
そこで今回のお話を考えついたわけです!
そして、可憐は春歌にもそのことをほんの少しでも分けてあげたいという思いから、今回は一役買って
出ることになったわけです。
ということで、可憐の優しい心遣いにも目を向けてあげてほしいな〜と思っています(微笑)。
次回は6月21日の四葉の誕生日に合わせてSSを書く予定でいますのでお楽しみに〜!!
(たぶん・・・「チェキかれ」のボケ&ツッコミストーリーになりそう・・・・・・(謎&笑)