今日は3月2日、時間はちょうど夜の8時を少しまわったところだ。
僕は毎日の日課であるメールチェックをすることにした。
さて、今日は誰からメールが来てるかな〜?
あ!可憐からだ。
『大好きなお兄ちゃんへ
お兄ちゃん。いきなりですが、明日何かご予定はありますか?
実は明日のひなまつりのお誘いでこのメールを出しています。
本当は今年もまたみんなで集まってパーティーをしようと準備していたんですけど、
今回はみんなのスケジュールがどうしても合わなくて中止になっちゃったんです。
それなら、せめて可憐のお家でひなまつりをしようと思って・・・。
でも、明日はお父さんとお母さんも急な用事が入っちゃって帰りが遅くなるって言うし、
それだと可憐、お家で一人きりのひなまつりになっちゃうんです。
ですから、もしお兄ちゃんが来てくれたら、とっても、と〜っても楽しいひなまつりになると思うんです!
だから、ぜひぜひ来てくださいね。お兄ちゃん♪
いいお返事、待ってま〜す!
可憐』
あ!そういえば明日はひなまつりだったよなー!
今年もまた亞里亞の豪邸でパーティーをやるもんだと思っていたけど、中止か〜ちょっと残念・・・。
そうだな〜、せめて可憐の家のひなまつりにお呼ばれするとしようかな。
それじゃ、返信は、
『分かった。明日、可憐の家に行くよ。時間は何時ならいい?』
これでよしと。
とりあえずこれでまたメールが来るのを待とう。それまでは一休みしてようっと。
で、一休みのつもりが起きたらもう翌朝の10時すぎ。
アブナイ、アブナイ。え〜と、メールの確認をしなくちゃ!
可憐からのメールは、あったあった。よかったー!12時からだよ〜、助かったー。
まだ時間に少しゆとりもあるし、商店街に寄って可憐の家に行くことにしよう!
いくら相手が自分の妹でも手ぶらで行くのは気まずいしね。
ここは定番かもしれないけど、ケーキあたりが無難かな?可憐もそういうの好きだしね。
さて、可憐の家に着いたぞ。
「可憐、来たよー!」
ほんの少し間があって、
「は〜い。お兄ちゃん、いらっしゃ〜い!」
ガバッ!!
「わわ!?可憐、そんなに抱きつかなくても・・・」
「だって〜、お兄ちゃんが来てくれて、可憐、とーってもうれしかったんだもん!」
「はは、可憐はいつまでたっても甘えん坊だな〜?」
「でも、こういうのってお兄ちゃんにだけだよ〜!」
「か、可憐・・・」
「ささ、お兄ちゃん、ずっと玄関にいないで早く中に入ろう!もう準備の方はとっくに出来てますから♪」
「うん。そうだね、そうしよう。じゃ、お邪魔するね。」
「はい。どうぞ上がって、お兄ちゃん。」
そうして可憐に奥の和室に通されてきたんだけど。
「どうです、お兄ちゃん。このお雛様のセット、お父さんとお母さんがわざわざ可憐のために買ってくれたんですよ!」
「へえ〜!ずいぶん立派なひな人形だね〜!(けっこう高かったんじゃ?)」
「うん。可憐もびっくりしたよ!なんでもこの前のピアノコンクールで金賞を取ったお祝いも兼ねてるんだって!」
「そうか。可憐は毎日ピアノの練習頑張ってたもんね。」
そうして僕は、可憐の頭を偉い偉いと思いながら、
つい、なでなで・・・しちゃって・・・
「お、お兄ちゃん・・・(ポ〜)」
「あ、ゴメン。もうこういうことされるのはイヤかな〜?」
「ううん。そ、そんなことないよ!お兄ちゃんにならいくらされても、可憐・・・うれしいよ・・・♪」
「はは。そ、それなら別にいいんだけど・・・」
「ねえ、お兄ちゃん。このお内裏様とお雛様、なんだかお兄ちゃんと可憐に似てな〜い?」
「う〜ん、どうだろう?」
「可憐も将来こういう風にお兄ちゃんの隣にいられたらな〜って思うの〜♪」
「か、可憐・・・」
それからしばらく間があって・・・
「あ!いっけな〜い。そうだ。はやくお料理とか運ばなくっちゃ!」
「ああ〜!それなら、僕も手伝うよ」
「ありがとう、お兄ちゃん。それじゃお願いしますね。」
そうして出された料理は、ひなまつりらしくお寿司とか季節のものを詰め合わせたお重がたくさん出てきて
ビックリしたけれど。
話しを聞くと可憐と可憐のお母さんの二人で昨日から今日のために準備していたんだそうで。
「それにしてもよくここまで準備できたよね?大変じゃなかった?」
「ううん。そんなことないよ!お兄ちゃんが来てくれることを信じて、可憐頑張ったもん!」
「そうか。可憐は本当に偉いな〜!」
「やだ、もうお兄ちゃんったら!あ!そうだ。お兄ちゃんが買ってきてくれたケーキ、今から出しますね!」
そうして、出されたケーキを食べながら、
「お兄ちゃん。やっぱり、ここのお店のケーキおいしいね♪
なんでもここの店長さん、生クリームにとってもこだわってるんですって!」
僕と可憐が食べているのは、ひなまつり用の苺の乗った生クリームのケーキなんだけど。
「さすがに可憐お勧めのケーキ屋さんだけのことはあるよね!本当においいしや!」
「あ♪お兄ちゃんもそう思うでしょ!今度、可憐もケーキ作りに挑戦してみようかな?
その時は、可憐の作ったケーキ食べてくれる?お兄ちゃん?」
「ああ。いいよ!可憐の作るケーキ楽しみにしてるからね。」
「うん、ありがとう。お兄ちゃん、大好き!」
「あはは・・・」
そうこうしてケーキを食べ終えて紅茶を飲んで一息ついていると、
プルルル・・・プルルル・・・
あ!電話だ!
「は〜い!今、出ま〜す!」
そして可憐が電話に出て、しばらくして僕のところに戻ってきたんだけど、
なぜか可憐の顔色が心なしか暗い。
「ど、どうしたの。可憐、何かあったの?」
「お兄ちゃ〜ん。お父さんとお母さん、今日の夜、お家に帰ってこれなくなっちゃたんですって。どうしよう〜?」
「そ、そうなんだ・・・。」
と思っていたら可憐の表情が急に明るくなって、
「そうだ〜!お兄ちゃん。今日の夜ね。このまま可憐のお家にお泊りしてくれませんか?」
「うん、いいよ。・・・って、ええ〜!!」
(第2回に続きます!!)