投稿作品(4) 「SERENADE」
「メリークリスマース」
僕たちはそう言いながらクラッカーを鳴らした。
パン!パパン!
「きゃっ!」
「ど、どうしたの花穂!?」
「クラッカーの音が思ったより大きくてビックリしちゃった・・・」
「あはは、花穂ちゃんらしいや」
「そういう時は体から離して鳴らせばいいのよ」
「えへへ・・・次からはそうするね」
妹たちの会話って微笑ましいよなぁ・・・
「それじゃあ花穂のドジも見たことだし、
料理が冷めないうちに食べるとするか」
「うん。ボクお腹すいちゃったよ」
「それじゃあいただきましょうか」
「いただきまーす」


「このポテトサラダ、花穂と衛ちゃんが作ったんだよ」
「どうかな・・・あにぃ」
「うん、おいしいよ」
「よかったー。まずいって言われたらどうしようって思ったから」
「衛たちが一生懸命作った料理がまずいわけないだろ」
「ありがと、あにぃ」
「わ〜い、お兄ちゃまにほめられた〜」
「お兄様、私と可憐ちゃんが作った料理はどう?」
「もちろんおいしいよ」
「お兄様のために可憐ちゃんと練習したんだから」
「そうなんだ・・・・・・はぁ・・・」
「どうしたのお兄ちゃん、悩み事?」
「いや、別にたいしたことじゃないよ・・・」
「そう・・・ならいいんだけど・・・
お兄ちゃん、最近ため息ばかりついてるから・・・」
「ああ・・・心配ばかりかけてごめんね・・・」
「ううん、別にいいの・・・
それよりお兄ちゃん、
ひとつ質問してもいいですか?」
「いいけど、何?」
「えっと・・・一週間ぐらい前から夜遅くに何してたの?」
「えっ・・・・そ、それは・・・・」
「やっぱりあの足音ってお兄様だったんだ」
「えっ・・・」
「だってこの私がお兄様の足音を聞き間違えるわけ無いもの」
「足音ならボクも聞いたよ」
「花穂も〜」
どうやらみんなは僕の足音を聞いていたみたいだ。
「み、みんな聞いてたの・・・
ばれてないと思ってたんだけどなぁ・・・」
「最初は気のせいかと思ったんだけど、
何日も続いたからどうしたのかなって思って・・・」
「え〜とっ・・・それは・・・」
「何してたの、お兄様?」
さ、咲耶が怖い・・・
「わかったよ、言うよ。
実は・・・ケーキを作ってたんだ・・・」
「ケーキ?」
「ケーキってこれの事?」
そういって花穂は机の上のケーキを指差した。
「違うよ・・・冷蔵庫の中にあるよ」
「だから料理の材料が出してあったんだ・・・」
「失敗したやつを見られたくなかったから・・・」
「あったよ〜」
「かなり変な形になったから見せるのが恥ずかしくて・・・」
「お兄様、これって味見したの?」
「いや、やってないよ。
あとでこっそり処分しようと思ったから・・・」
「ふ〜ん・・・」
パクッ
「美味しい・・・」
「へっ・・・」
「お兄様、これおいしいわよ」
「花穂も食べたい〜」
「ボクも!」
「可憐も食べたいです」
「どれどれ・・・」
パクッ
「本当だ、おいしいや」
「お兄ちゃまって料理も得意なんだ〜」
「あにぃ、すごいよ!ボク見直しちゃった」
「お兄ちゃん、すごくおいしいです」
「こんなにおいしいなんてどうしてだろう?」
「あら、お兄様。さっき自分で言ったじゃない」
「えっ」
「一生懸命作った料理がまずいわけないって・・・ねっ」
「そうだよ、お兄ちゃま」
「お兄ちゃんが可憐たちに一生懸命作ってくれたんだもの」
「まずいわけがないよ」
「みんな・・・」
「それじゃあケーキも食べたことだし、そろそろ・・・」
「そうだね、それじゃあ持ってこようか」
「うん!」


五分後
みんなはいろんな物を持ってリビングに集まった。
小さな箱や大きな袋、丸いものや四角いものもある。
「え〜と・・・それじゃあ僕から・・・」
そう言って僕はみんなに細長い箱を渡していった。
「お兄ちゃま、開けてもい〜い?」
「ああ、いいよ」
みんなはほぼ同時に箱を開けた。
「みんな同じようなやつで悪いんだけど、
おそろいのペンダント。
中にはみんなの写真が入ってるんだ」
「だから二人っきりの写真を撮ってたのね」
「なら、お兄ちゃんのには誰の写真が入ってるの?」
「僕のには昔撮ったみんなで写ったやつだよ」
「さすがあにぃ!」
「それじゃあ可憐のプレゼントは手編みのマフラーです」
「えっ!?」
「ど、どうかしたの、みんな?」
「可憐ちゃんも手編みなんだ〜って・・・」
「可憐も・・・ってことは咲耶ちゃんも?」
「うん・・・」
「実は花穂も・・・」
「ボクもなんだ・・・」
「えっ、みんな手編みなの!?」
「私はセーター・・・」
「花穂は手袋・・・」
「ボクはニット帽・・・」
「それで可憐がマフラーだから・・・
一式そろっちゃったね」
「まさかみんな手編みだなんて思わなかったわ」
「ボクもだよ・・・
花穂ちゃんはお花の種とかかなぁって思ってたし・・・」
「花穂はそうしようと思ったんだけど・・・
買い物に行ってたお兄ちゃまが寒そうだったから、
友達に教えてもらいながら一生懸命作ってたんだぁ」
「可憐もお兄ちゃんが寒そうにしてるのを見たから・・・」
「僕、そんなに寒そうにしてた?」
「もちろんよ。
だからこうしてセーターを編んだんだから」
「ボクはあにぃが寒そうだったし、ニット帽だったら
スノーボードに行った時も使えるなぁって思ったから・・・」
「みんなありがとう・・・」
「お兄様が私たちを想っているぐらい・・・ううん、
それよりもっと私たちはお兄様のことを想ってるんだから」
僕は今までで一番感動していた。
妹たちの前では泣かないと誓ったのに泣いてしまった。
「ありが・・・ぐすっ」
「どうしたの、お兄様、泣いたりなんかして・・・」
「いや、ぐすっ・・・咲耶たちの気持ちが嬉しくて、ぐすっ・・・」
「お兄ちゃまが泣いたところ、はじめて見た・・・」
「ご、ごめん・・・ぐすっ、泣いたりして・・・」
「泣きたいときは泣いてもいいと思うよ・・・」
「えっ・・・」
「誰だって泣きたいときはあるんだから、
我慢しなくてもいいと思うよ」
「衛・・・」
「何かの本で読んだんだ」
「そうよ、お兄様。
私だって・・・
可憐ちゃんや花穂ちゃん、衛ちゃんにも泣きたいときは
あるんだからお兄様だって我慢しなくていいの」
「泣きたいときに泣いて、
笑いたいときに笑う」
「それで十分なんだよ」
「みんな・・・」
窓の外には月明かりに照らされて雪が降っていた。
「雪だ・・・」
「本当だ・・・」
「きれい・・・」
僕は降ってくる雪を見ながら思ったんだ。
〜これからもみんな一緒に見れたらいいな〜
って・・・
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投稿者;姫野 直耶(仮) 様
あとがき

遅れちまった〜!
完成したのが25日の晩・・・
と焦ってる姫野直耶(仮)です。
今回も無事完成したんですが、
25日に間に合わせることが出来ませんでした。
次回の花穂は間に合わせますので勘弁してください。
それと書いていて思ったのですが、
誰のセリフかわからん!(ヲイ!)
いや、マジですよ。
やっぱセリフの前に名前書いたほうがいいのかなぁ。
そのへんのことも含めて感想とかいただけると嬉しいです。
それでは、今回はこの辺で・・・

2002年 12月