■好天の稜線 北アルプス・雲ノ平 2007.08.15〜08.18 恒例となりつつある「お盆山行」。今回は北アルプスの中央部・雲ノ平に入る。
0日目
いつものように仕事終りに直接登山口に向かう。静岡からR1号を東進、興津からR52号に入る。車中で夕飯を取る。南アルプス市から県道でショートカットして北杜市へ。R20号に入って松本方面に進み、諏訪ICから高速に乗り、松本ICで下りる。R158号を西進する。ここまで道の混雑はまったくない。道狭のワインディングロードを全開で進む。すると平湯に1時間たらずで着いてしまった。R471号を神岡に向かう。信号のない丁字路を右折、整備された山道を走り、森茂という集落を貫けて、登山口の飛越トンネルの駐車場に辿りつく。駐車場には約20台の車がとまっていた。静岡から走行距離302km、走行時間6時間だった。ビールを飲んで就寝。
1日目
日の出と共に起きる。コンビニ弁当の朝食を取り、身支度を整える。どうやら私を含めて3パーティーが今日入山するらしい。私が最後発となる。駐車場脇からトンネル上まで急登する。登りついたところが遠見尾根出合(ガイドブックにはまむし洞峠)。右に折れて尾根を小さく上下し、送電線をくぐる。一登りするとくま洞峠(1683m)がある。このあたりから気温が上がり、脚が重くなる。下ばかり見て歩いていたら神岡新道の合流点を見過ごしてしまった。ここからいくつもの湿原が現れる。季節にはミズバショウ、ニッコウキスゲが咲くそうだ。それにしてもこの平坦な尾根をよく見つけたもんだ。あまり高度を稼いだ感じがしないまま寺地山(1996m)に着く。東を向き、針葉樹林のぬかるんだ道を何度かアップダウンをして森林限界っを越える。そこから南側に下った所に北ノ俣避難小屋がある。ここの水はオイシイ!予定外の長い休憩をとってしまった。登山道に戻って、木道をまっすぐ上がって行く。ガスが涌いて池塘のある湿原が幻想的に見える。木道が終ると傾斜が増す。ここからが長かった。稜線が見えてから2時間、登りに登った。稜線上の分岐を北へ進む。お花畑の脇を緩く下り、小ピークを越える。前方に薬師岳が大きな山容を見せる。その先2つのピークを越える。二つ目が太郎山頂上だ。木道を下って太郎平小屋に着く。予定より1時間以上遅い。やはり食糧が重いんだなあ。ここから20分北側にあるキャンプ指定地に行く。
薬師峠キャンプ場
太郎平小屋から北に20分の薬師峠の平坦地。キャパ100張、管理費500円/人・泊、沢水、バイオトイレあり。当日は40張ほどか(私の受付番号が27)。家族連れが目立ったがマナーは良く、20時には静かになっていた。夜中に見上げた星空は「人生一番の美しさ」を更新した。
2日目
今日も天気は上々だ。木道を太郎平小屋まで戻る。水を補給しようとすると昨日なくしたタオルが吊るしてあった。「オオ、奇蹟のタオルだ!」 気をよくして分岐を左に進む。木道が尽きると急下降となる。潅木帯で日差しを避けられない。「暑いしザックは重いし、やだなあ」なんて考えていると第一渡渉点に着く。ザックを下ろして顔を洗う。少し元気を取り戻して歩き始める。少し行くと第ニ渡渉点で薬師沢の右岸に渡る。「渡渉」といってもしっかりした木橋を渡る。小さなアップダウンを繰り返した先に湿原が現れる。緩い下りは脚の調子を取り戻すのにもってこいダ。第三渡渉点を過ぎ、しばらく木道が続く。ベンチのある休憩所を数カ所過ぎ、沢音が近づいてくると薬師沢小屋は近い。岸壁にへばりつくように建つ小屋は釣り客にも人気があるようだ。黒部本流、赤木沢などに分け入るとのことだ。水を補給して標高差500mの急登にかかる。立派な鉄吊り橋を渡り、梯子を降りて黒部川の河原に出る。すぐに分岐があり、崖を攀じ登る。ガイドブックには「石や木の根が露出した急登がしばらく続く」とあるが、2時間半も続くのだ。20分歩いては休憩を繰り返し、もがいて、あがいてなんとか進む。木道が現れて傾斜が緩む。森林限界を越えたところがアラスカ庭園だ。ここで昼食。黒部源流をはさんで昨日歩いた北ノ俣岳の稜線がクッキリ見える。その南に黒部五郎岳がどっしり居る。東には水晶岳の双耳峰も見える。緩やかに登って小ピークを越えたところが奥日本庭園。下って、祖母岳を目指す。しかし、「危険箇所アリ」で立ち入り禁止。左折して祖母岳を巻く。歩道から一段上がった丘の上に雲ノ平山荘がある。テン場の受付を済まして雷岩まで登る。ここから見る熔岩台地が最も美しく思えた。南側の窪地がテン場になっている。今日は予定通り14時で行動終了だ。
雲ノ平キャンプ場
雲ノ平山荘の東側20分、祖父沢源頭にありキャパは100張。管理費500円/人・泊。トイレはバイオ処理式のようだ。水は雪渓からホースで引いたもので、この山行随一のうまさ。今年は雪が多く、水量も豊富。周囲は熔岩台地でたいへん美しい。日没直後の黒部五郎のシルエットと三日月が印象的だった。
3日目
4時半起床。日毎に行動開始が早くなる。朝食、テント撤収、身支度を終え、6時少し前にテン場を後にする。ゴツゴツとした石の道を20分ほど登ると正規の道に合わさる。(私の上がって来た道はロープで進入禁止になっていた)そこから10分で分岐が現れる。直進は雪田を通り、黒部川源頭を廻る道だ。私は左折して祖父岳に登る。このあたりは祖父庭園といわれ、残雪と熔岩のコントラストが美しいところだ。ザレた道をジグザグに30分登ると小広い祖父岳(じいだけ、2825m)山頂に着く。この山行で初めてのピークらしいピークだ。北アルプスのほぼ中央にあり、展望は最高だ。薬師、水晶、鷲羽、槍、穂高、三俣蓮華、双六、笠、黒部五郎、雲に隠れているが立山まで見渡せる。
祖父岳からのグルリ北アルプス |
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カールがカッコイイ黒部五郎岳 |
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左がワリモ岳、右が鷲羽岳 |
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三俣蓮華岳。右奥は笠ヶ岳 |
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双耳峰の水晶岳 |
ずううっと居たいが今日の歩行時間を考え、先を急ぐ。ハイマツの中をジグザグに下り、小ピークを巻きながら下る。道の脇で形・色のよいイワギキョウ
が元気付けてくれる。下り切った鞍部が岩苔乗越で高天原〜三俣山荘の道が交差する。直進してワリモ岳を目指す。短い急登をこなし、(ワリモ北)分岐を南進する。稜線の西側の道を緩やかに上がって行く。ワリモ岳の頂上は通らず、直下をかする感じだ。そこから鞍部まで下り、登り返した2つ目のピークが鷲羽岳(2924m)山頂、今回の山行での最高所だ。これがまた祖父岳に劣らぬ好展望だ。槍ケ岳から伸びる2本の稜線・北鎌と西鎌がバッチリ見渡せる。槍の穂先の左には富士山だ。こんな遠くからでも大きく見える。標識から少し東に寄ると鷲羽池が眼下に。槍と池をワンショットに収める。んん〜ん、イイ。少々興奮しながらザレた道を下って行く。標高差370mを一気に下って、ハイマツの道になると三俣山荘は近い。テン場の中を歩いて行くと黒部五郎へのショートカットコースを右に分ける。流れ止めの階段をユックリ、ユックリ上がって行くと傾斜が緩む。カールの縁を越えて少しで分岐が現れる。直進は双六小屋への巻き道だ。右折する。今日最後の登りだが、急登だ。数カ所手を使うところもあり、汗が出る。三俣蓮華岳(2841m)山頂には2パーティーが休んでいた。昼時にしては少ない。お盆明けだからかな。ここは長野、岐阜、富山の県境であり、北アルプス主稜線の要といえる。昼食を摂って、下り始める。適度な傾斜の稜線を下る。黒部川側を向いていることが多く、お花畑や雪渓が現れて飽きることはない。三俣山荘からの巻き道が合わさった先の眺めの良いピークで小休憩。ハイマツの道を鼻歌まじりで下る。潅木帯に入ると石がゴロゴロした急坂になる。展望もなく黙々と歩を進める。30分ほどの行程だったが膝が笑うほどだった。そして山行最後の幕営地・黒部五郎小舎に着く。歩行時間8時間と長かったが、好天に恵まれ最高の一日となった。
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可憐なイワギキョウ |
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岩苔乗越から黒部川源頭を望む |
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槍と鷲羽池。槍と常念の間に富士山が… |
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三俣蓮華岳は三県の境 |
黒部五郎小舎(くろべごろうこや)
黒部乗越に建つ。テン場のキャパは30張、管理費500円/人・泊。水、トイレは小舎で。ここからの笠ヶ岳は入道のようで趣がある。
4日目
今日は10時間以上歩くことになるので5時20分に歩行開始。目指す黒部五郎岳はガスの中だ。湿地の木道が尽きると沢沿いの道になる。ダケカンバやナナカマドの林を抜けると台地の上に出る。カールの端といったところだ。斜面にはお花畑が広がり、道端にはムシトリスミレが見られた。カールの底に着くと緩斜面は終る。30分ほど急斜面を登ると稜線に出る。そこから間もなく肩といわれる分岐があり、ザックをデポ、カメラだけ持って山頂を目指す。大きな岩がゴロゴロする道を行けば、10分ほどで黒部五郎岳(2840m)頂上だ。しかし、ガスは晴れず、証拠写真を撮るだけ、長居は無用である。肩に戻り、風よけに合羽を着て、先に進んだ。急坂を一気に下り、ハイマツが現れると傾斜は緩み膝が楽になる。その先の小ピークで歩いてきた道を振り返るが頂稜部はどこも雲の中だ。残念。乾いた湿原(?)を抜け、ベンチのある中俣乗越では多くの人が休んでいた。ここからまた少しずつ高度を上げていく。中俣乗越から2つ目のピークが赤木岳で更に2つピークを越えると砂礫の道になる。これを緩く登った先が北ノ俣岳(2661m)山頂だ。これで今山行の登りは終った。「あたりの山々ともお別れ」と見渡したが全てはガスの中。「また来るサア」と独り言をつぶやいて、下山開始。ここから5時間の下りだ。ハイマツの中の分岐を西へ。浮石の多い斜面をドンドン下る。木道が現れ、池塘の点在する湿地が見えてくる。木道を一段下ると北ノ俣避難小屋の分岐。小屋で昼食となった。非常食を残してすべて食べ終え、ザックが軽くなる。登山道に戻り、寺地山に向かう。もう下りに慣れてしまって少しの登りもキツイ!寺地山から進路を南にとり、湿地帯をいくつも通り抜ける。神岡新道の分岐を右の飛越新道へ。送電線をくぐるあたりで車の音が聞こえる。ここから1時間かからずに飛越トンネルの駐車場に着ける。もう下らなくてイイんだ。ああ、長かった。
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黒部五郎岳の美しいカール |
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黒部五郎岳山頂。ガスで展望なし |
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ガスがかかり幻想的な池塘 |
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北ノ俣避難小屋。水がウマイ! |
今回は北アルプスの最深部といっていい山域で、核心部はどの登山口からでも2日目からとなる。中高年は山小屋利用、3泊4日、一日当たりの歩行6時間が「楽しい山行」の条件と思われる。私はエコノミー山行で天幕3泊4日だったのでかなりキツイものだった。特に食糧をレトルト中心にしたためザックが重くなってしまった。倍くらいの資金をかければ半分の重量に収まりそうだ。
1日目 |
着 |
発 |
飛越トンネル |
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5:55 |
寺地山 |
9:08 |
9:20 |
主稜線 |
13:16 |
13:25 |
太郎平小屋 |
14:58 |
14:15 |
薬師峠キャンプ場 |
15:30 |
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2日目 |
着 |
発 |
薬師峠キャンプ場 |
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6:25 |
薬師沢小屋 |
8:53 |
9:10 |
アラスカ庭園 |
12:00 |
12:30 |
雲ノ平小屋 |
13:25 |
13:40 |
雲ノ平キャンプ場 |
14:00 |
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3日目 |
着 |
発 |
雲ノ平キャンプ場 |
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5:50 |
祖父岳 |
6:47 |
6:55 |
鷲羽岳 |
8:55 |
9:14 |
三俣山荘 |
10:13 |
10:28 |
三俣蓮華岳 |
11:41 |
12:08 |
黒部五郎小舎 |
14:01 |
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4日目 |
着 |
発 |
黒部五郎小舎 |
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5:20 |
黒部五郎岳 |
7:38 |
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中俣乗越 |
9:16 |
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北ノ俣岳 |
10:52 |
11:00 |
寺地山 |
13:45 |
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飛越トンネル |
15:58 |
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