■忘れられた山域へ 南アルプス・早川尾根       2011.07.17〜2011.07.18

梅雨が明けた。「梅雨明け10日」は安定した晴天が続く と昔から言われている。今年は「海の日」の連休がこれに当った。山は登山者でごった返すだろう。そんな中で静かな山行を考えた。そうだ、早川尾根にしよう。かつて「忘れられた山域」といわれたところだ。これはいいかも・・・

0日目
節電のため「半ドン」で仕事を終え、J1・VF甲府vsG大阪 観戦のために甲府に向かう。着いた甲府・小瀬はうだる様な暑さ。試合も熱く甲府4-3G大阪 と逆転勝ち。いい気分で登山基地・芦安に向かう。連休なので芦安の駐車場はいっぱい。ようやく第4駐車場に空きを見つけられた。発泡酒を呑んで就寝。

1日目
翌3時には周りがザワザワし始めた。4時に起き、身支度を整えていると乗合タクシーの運転手が声を掛けてきた。駐車場横から乗ることが出来た。夜叉神トンネル前でゲート開きを待ち、広河原には6時着。北沢峠行きのバスを待つ。定刻より20分ほど早くバスが出た。北沢峠バス停から5分ほど戻る。駒仙小屋で水を補給して出発。小屋前の沢を渡った先が分岐だ。一気に人気がなくなる。美しい針葉樹林を登っていく。朝の時間、かすかな樹液の甘い香がイイ。次第に傾斜が増していく。体温が上がるが、日差しがないので暑い感はそれほどでもない。高度をかせぐと木々が疎らになり、枝間から北岳や甲斐駒が顔を見せ始める。

  
(左)北沢駒仙小屋  (中)栗沢山からの甲斐駒ケ岳。カッコイイ!  (右)雲湧く甲斐駒

森林限界を越え、岩陵に出ればピークは近い。ほどなく栗沢山(2714m)頂上だ。天気が良く、南アルプス北部の山々がバッチリ見渡せる。間近に見る甲斐駒ケ岳は迫力万点、カールが美しい仙丈岳、盟主・北岳、遠く北アルプスと中央アルプス。まさに好展望地といっていい山だ。休憩後、次のピークに向かって南進する。歩き始めて間もなく韮崎側から雲が湧いてきた。振り返ると甲斐駒もイイ感じでくもを纏っている。岩陵の道はそれほどアップダウンがなく歩き易い。岩の小陰はそこだけヒンヤリして気持ちがイイ。ほぼ予定通りの時間でアサヨ峰(2799m)に着けた。ここは早川尾根の最高地点。山梨百名山のポールが誇らしげに立っています。栗沢山に負けず劣らずの好展望地。野呂川の先に広河原が見えます。まるで前穂・紀美子平から上高地を俯瞰しているみたいです。

アサヨ峰は名前だけ見れば「ア+サ行」のアソ・アサマ型火山と同じ読みなんだよね。フォッサマグナ上にはあるけど火山ではないはず。偶然の一致なのかな?後で調べてみよう。

  
(左)アサヨ峰頂上。バックは仙丈岳。   (右)歩いてきた尾根を振り返る。韮崎側から雲が湧く

途中で同行した人に「地蔵まで行って、鳳凰小屋泊まりにしたらぁ」なんて言われたが、疲労感があったので、計画通り早川小屋までと決めた。それもあって昼食や読書でアサヨ峰頂上に1時間近く居た。稜線での読書って最高なんだよね。頂上から小屋の屋根が見えたので「さあ、あとは下るだけぇ」なんて思ったのが間違いだった。尾根はここから東に向き、いくつもの登下降を繰り返す。樹林に入って、景色が変らず、距離と時間の間隔がおかしくなってくる。

分け入っても 分け入っても 青い山 (種田山頭火)

たぶん、山頭火よりも「分け入っても 青い山」状態だったろう。ミヨシの頭を越えた下りは特にキビシかった。このピークで最後の水を飲み切り、小屋に着くまでの40分はまたキビシかった。よれよれで小屋に着く。こじんまりとした山小屋で今日の泊まりは5〜7名か?テン場には私を含めて7張だった。テントを設営し始めると「待ってました!」とばかりに夕立。降ったのはそのときだけだったが、フライシートは濡れてしまった。20時就寝。

早川小屋
早川尾根ノ頭の南方直下。キャパ30人、テン場12張。テント泊400円/人。水は近くの沢からホースで引いているようだ。大変静かな場所にあり、なかなかいい。

  
(左)早川小屋とテント場   (右)広河原峠の道標。ここからの下りもきつそうだ。

2日目
ゆっくり起床、ゆっくり朝食、ゆっくり支度。小屋出はブービーだった。ゆっくり歩いていると小屋のオヤジに抜かれた。背負子に小形ザックを括り付け、ものすごい勢いで下っていった。毎日、広河原までボッカするんだろうか?ご苦労様です。短い急下降をした先が広河原峠。枝間から雲海に浮かぶ八ヶ岳が見えた。ここでは下らず、白鳳峠を目指す。下った分を登り返し、2つ目のピークが赤薙沢ノ頭(2556m)。この山行最後の稜線展望地。地蔵岳・オベリスクが近いです。短い休憩後、下山。ほどなく白鳳峠に着く。脚を止めず、下る。樹林が切れ、ゴーロの斜面となる。ここからの北岳もいい。再び深い樹林に入る。ここからが今日のメインコース、ひたすら下るのだ。ずっと急斜面で膝は大爆笑。そして中間地点には岩場の脇を下る悪場の鉄梯子&麻ロープ。そしてまた急斜面。野呂川が見えてきてもなかなか近づいてこない。最後の最後まで急下降して林道に飛び出る。膝がユルユルで止まれないのだ。写真を撮るふりをして息を整え、広河原バス停まで歩く出した・・・。

    
(左)広河原峠からの八ヶ岳   (右)赤薙沢の頭からの地蔵岳・オベリスク

  
(左)白鳳峠下、ゴーロ斜面からの北岳   (右)地獄の2時間下降。悪場に架けられた鉄梯子

「静かな山行」にはもってこいのコースだ。ピークには人が居るものの、歩き出せばほとんど人に遭うことはない。アサヨ峰〜早川小屋では単独行者ひとりきりしか遭わなかった。前半も好展望魅力のひとつです。

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