エリーゼ(機構関連)


トップへ
戻る
前へ
次へ



2023年09月01日
冷えない原因

           新車の当時から余り冷えなかったエアコン。 汗が垂れない程度しか冷えない状態。
           それに比べ、環境温度25℃ アイドリング時、スマートは、室内の吹き出し口の温度を計ると、5℃。 一方エリは、16℃。
           情けないくらいに違う。 さて、この差は何処から来るのだろうか?   比較をしてみる。

           余り変わらない点は、

           ・ コンプレッサーは車体後部のオルタ下、エバポレータは車体前部と、同一の配置。
           ・ 冷やす空間容量も、ほぼ同じか、スマートの方が多少大きい。
           ・ 配管長も、余り変わらない。

           異なる点は、

           ・ コンプレッサーは、エリの方が容量は大きい。 なので、冷房能力は高い。
           ・ エバポレータから、吹き出し口までの距離は、スマートの方が短く、エバポレータは車室内に配置されている。
             一方、エリは距離が2倍以上あり、エバポレータは車室外に配置されている。 温度センサーはエバポレータにあるので
             車室内を計っているのではない。 当然、エキスパンジョンバルブも車室外となっていて、車室内の温度を基本としていない。
             ( 非常に異質なシステム構成 )

           ここで、エバポレータ直下での温度を計ってみる。 結果は、 16℃。 エバポレータの配置には、無関係となった。

           やはり、原因は あれか。
           再度、マニホールドゲージを繋いで、低圧/高圧の様子を見てみる事にした。 今度は、エンジンの回転数を上げて観察をする。


https://youtu.be/guk5heCuZBY


           エンジン回転数が上がると、低圧側は下がり、高圧側は上がり 正常か ? と思われるが、アイドリング時の低圧側の圧力が
           3kg/cm2と 高い。 2kg/cm2程度なら正常と思う。 エンジン回転数を上げると、低圧側は2kg/cm2に近づくが、それ以下
           には落ちない。 高圧側は、さらに異常で、21kg/cm2まで上昇している。 正常なら、12〜16kg/cm2程度と思う。
           冷えない原因は、エキスパンジョン バルブ( エキパン )と考える。

           下に、エキパンの概略構造を書いた。 動作は、ダイヤフラムの膨張/縮小と、バネの力関係で、バルブ( ボール弁 )が開いたり
           閉じたりする。 低圧側にダイヤフラムが有り、熱、圧力で膨張/縮小をする。ダイヤフラムの先端にはニードルが繋がっていて
           膨張した場合、右側方向に ニードルは動く( 縮小時は逆 )。 そして、バルブのボールを通して高圧部に有るバネを押す。
           バネの力に勝てば、バルブが開き始め 高圧ガスが低圧側にジェットとなって吹き出す。 この時、高圧ガスは一気に膨張するので
           熱を奪い冷える。 バルブの開度は重要で、小 → 大 で、下がる温度は大きくなる。
           例え話をすると、炎天下駐車場に置いてある車でエアコンをONすると  ...... 車内は50℃以上になっていると思うが
           この時のエキパンのダイヤフラムは膨張してバルブを最大限押し下げている。 開度は最大なので、最大の冷え具合となる。
           その内冷えて来ると、ダイヤフラムは徐々に縮小し行き、バルブの開度は小となる。







           さて、話を戻そう。 現状は、低圧側が若干高く、高圧側は高過ぎる状態。 エキパンのバルブを通過するガス量が適正ならば
           低圧側は2kg/cm2より低く 温度も下がり、高圧側は12〜16kg/cm2程度となる筈。 
           ここまで、読んだ読者なら、既にお解りだろう。 低圧側が高く、高圧側は高過ぎると言う事は、バルブの開度が大きい事を示す。
           現状は、スーパーヒートが小さいのが原因か。
           これでは、冷えないばかりか、コンプレッサーに負荷が掛かってしまい故障の原因になる。

           では、エキパンの動作不良か ?  ダイヤフラム、バネ劣化 ? 

           上図で高圧側に adj と記した部分が有るが、これは調整部。 ネジ式になっていて、高圧部のバネを押し込んだり戻したり出来る。
           昔の車は、この調整機構が付いていた。 これで、ダイヤフラムとの力関係の調整が可能となる。( = 冷え具合に直結
           この調整、エキパンを製作するメーカーでは行わず、車メーカーで調整をしていたと記憶している。
           現在付いているエキパンだが、MGFと同じだとすると、下の物の筈。 下写真の赤〇内に、窪みが見える。窪みに治具を突っ込んで
           時計回りに回せば、バネを押し込み、半時計回りでバネをフリー方向に調整が出来る様になっている。





            現車で確認をする事にする。 非常に狭く下方に設置されている為、確認し辛いが ......  有るよ〜 !
            しかし、ラジエータ、ファン、コンデンサー等を収納する隔壁との隙間は、ほぼ無し。これでは、調整出来ないではないか。
            エキパンを、数センチ上方に設置するとか、調整面を上向きにするとか 出来なかったのかね。

            現状の設置位置から言える事は、エキパンを設置してからの調整を行っておらず(出来ない)、エキパン製造メーカーから
            出荷された状態のまま組んだと推察される。
            仮に、バネのプリロードが適切でなかったら、 ” 冷えないエアコン ” となる。
            冒頭に書いた 、 ” 新車の当時から余り冷えなかったエアコン ”  これが、実態だったと考える。





            コンプレッサー & エキパン は、セットで考えるのが、常識。 面倒くさらずに、全バラすれば良かった。
            ガスを入れた 後の祭りとなってしまった。 

            エキパンは、無調整タイプで、寸法が合えば代用出来ると思う。 下手に古い純正品を使う必要はないだろう。
            価格も骨董品なので高いし、調整も現在の位置に設置する限り出来ない。 ならば、最新の安く無調整タイプを選択するのが正当。




< 備考 >


                機械系の人向けに。

                オリフィスの前後の圧力(Pb/Pa) 速度(Vb/Va) 断面積(Ab/Aa) とすると、

                  Pa = Pb+0.5(1−Ab^2/Aa^2)Va^2

                 オリフィス径が小さくなれば、オリフィス通過後の圧力(Pa)は下がる。









トップへ
戻る
前へ
次へ