露点の簡易測定について
 大気中の水蒸気の存在を推測する実験として、露点の実験がある。露点は、大気中の水蒸気量を示すもので、水蒸気の存在を直接確認するものではない。大気中に水蒸気が存在することを直接観察することができないので、こうした現象から推測させたり、または、水蒸気を水に変え、他の物質に吸収させたりして、その変化から考えさせる方法をとっている。
 
したがって、大気中に水蒸気(気体)が存在することは、最終的には、教え込むことである。
 露点は、大気中に水蒸気が存在することを前提とし、飽和水蒸気量と関連させながら、まず、実験を通して操作的に定義されることである。
     
1 露点の測定での課題と工夫 
@ エーテルは、有害で、使用できない。
     従来、露点の正確な測定は、右の図のような露点湿度計を使うが、エーテルの気化熱を利用するため、エーテルの蒸気がへやに充満し、子供達に有害となり、学校では行っていない。
  A 表面がつやのある容器が必要
  B 温度を徐々に下げる工夫
  C 授業では、子供(測定者)の息がかからないようにする。
  教科書では
     教科書には、有害物質を使わないで、温度が徐々に下げられ、グループあるいは個人実験できるような方法が紹介されている。
     ほとんどが、つやのある容器にくみおけの水を入れ、 それに少しずつ氷を入れて徐々に温度を下げていき、容器の表面がくもるときの水温を測定している。
2 つやのある容器  
   露点の測定は、授業では、それほど正確さを必要としないので、右の表のような容器が、くもりが確認しやすく、実験に適している。
○ステンレスコップ
○空き缶(アルミニウム製)
○ビーカー
○ガラス製コップ
   ただし、生徒一人一人となると、まず、温度計を生徒の人数分用意し、その上、容器を人数分用意しなければならないから、空き缶がよい。
 
 空き缶の場合、内側にポリフィルムがはってあること、表面に印刷があって見にくいことに注意する。
   表面に図柄が直接印刷してある空き缶でも、右図のようにアルミニウム箔をよくのばして、缶の表面に貼って、アルミニウム箔のくもりを観察すればよい。このアルミニウム箔を貼る方法は、ビーカーやガラス製コップなどでも使う。
3 くもりはじめを、わかりやすくする方法
 正式な露点湿度計では、くもりはじめがよくわかるように、表面が磨かれた「切り目」があり、中央部がくもりはじめても、切り目の両外側は、すぐにはくもらないようになっていて、両面を比較しながら観察できるようになっている。
   空き缶、金属製のコップ、ビーカーなどの表面のくもりはじめの判別は、慣れないとなかなかむずかしい。そこで、次のような工夫もある。
 
       
4 容器を冷却する方法   
  露点を正しく測定するには、容器をゆっくり冷却していくことが重要である。しかし、あまり時間をかけては、50分の授業にならない。容器を冷却する方法としては、
  直接、氷を入れる。 
     急冷し、露点を低く測定してしまう。
  A 氷を試験管などに入れ、間接的に冷やす。 
    ゆっくり冷えてよいが、時間がかかる。
    一口醤油びんに水を入れ、冷蔵庫で凍らせ、それを入れる方法もある。(この方法は、溶液の濃度を変えないので、他の実験でも使える。)しかし、あらかじめ冷蔵庫で凍らせておかなければならない。、
 
5 露点の測定結果の例
  露点を、いろいろな容器で測定した結果を下の表に示す。ずいぶん以前に実験したものであるが、参考にしてください。
  表−1  1981.5.1 天気 晴れ  気温22.5℃  湿度59%  水温21.4℃  
観測方法 露点
湿度計
ビーカー アルミ箔
をはった
ビーカー
空き缶  ステンレ
スコップ 
セロテープを
はった
金属コップ 
コップ酒びん
1回目  くもりはじめ

13.6 ℃  12.6  13.2  13.6  13.5  13.6  13.0
くもりが消えるとき  13.8  −  −  −  −  −  −
2回目 くもりはじめ

 13.5  12.8  13.0  13.5  13.6  13.6  12.8
くもりが消えるとき  13.7  −  −  −  −  −  −
  表−2  1981.4.30  天気 雨  気温18.9℃  湿度76%  水温19.2℃   
観測方法 露点
湿度計
ビーカー アルミ箔
をはった
ビーカー
空き缶  ステンレ
スコップ 
セロテープを
はった
金属コップ 
コップ酒びん
1回目  くもりはじめ

13.9 ℃  13.4  13.6  13.9  13.8  13.9  13.2
くもりが消えるとき  14.4            
2回目 くもりはじめ

 14.0  13.6  13.7  13.9  13.6  13.7  13.2
くもりが消えるとき  14.2            
  ◆考察  
    上の表−1、表−2から次のようなことが考えられる。
    @金属製の容器の方が、ガラス製容器より、正確に測定できる。
    A容器にセロハンテープなど、くもりはじめを見やすくした容器の方がよい。
6 露点と水蒸気量との関係を調べる実験 
   露点が、大気中の水蒸気の量によって変わることを理解する実験として、右図のような実験装置がある。  
   プラスチックの箱は、台所用品のプラスチックパックでよいが、透明なものを使う。
  ◆実験結果の一例
    晴れの日  気温 22.5℃
   
 シャーレを入れた側  19.4℃
 シャーレを入れない側  13.6℃
    雨の日   気温 18.9℃
   
  シャーレを入れた側   17.4℃
  シャーレを入れない側   14.6℃
  
  ◆別法
   右上図のような装置では、両面が一度に比較しずらい。
   そこで、右図のような縦型の装置を考えてみた。
   縦型の場合、中央の寒剤を入れる金属製の容器が細長いため、氷を入れて撹拌しづらく、上下の温度差ができやすく、正確に露点の比較ができないことがある。
   この点は、横型の方がよい。撹拌さえしっかりできれば、やりやすさの点では、縦型の方がよいように思う。