音速の測定のいろいろ(課題及び問題)
 中学校での音の速さの測定については、さまざまな方法が提案され実施されているが、学校現場や授業場所・授業形態でかなりの制約を受けており、必ずしもねらい通りの結果が得られていないの実情である。
 そこで、中学校で行えるいろいろな測定方法について検討してみた。 
T 学習指導要領上での扱いと問題
(1) 身近な物理現象 
 ア 光と音  
 (ウ) 音の性質
    音についての実験を行い、音はものが振動することによって生じ空気中などを伝わること
   及び音の高さや大きさは発音体の振動の仕方に関係することを見いだすこと。
 さらに、解説書では、
 ウ アの(ウ)については、
   音の伝わる速さについて、空気中を伝わるおよその速さを扱うこと。、
 そして、
  空気中を伝わる音の速さについては、例えば、
雷鳴や打ち上げ花火などの体験と関連させて考えさせる。
また、スタート合図ピストルの白煙が見えてから音が聞こえるまでの時間のずれを計測したり、
ビデオ機器などを用いて煙の発生と音を聞いて人間が反応するまでの時間のずれを測ったりして、おおまかの音の速さを求めることが考えられる。
 空気中を伝わる音の速さについては、室温など一定の温度におけるおよその値を示す。
 さらに、音が空気中を波として伝わることにも触れるようにする。
◆課題及び問題
@  実験することになっているが → 教科書は、説明実験にとどまっている。  
→ 学校では、生徒実験としては、やりにくい実験で、
  教師実験となるが、それも行われていないのが現状である。
A  授業の展開は、教師の説明だけの授業になりがちになる。   
   しかし、次のような展開が、現実的であろう。
   子供の体験の確認 → 測定方法を提示して教師実験(音速の測定)
※すべての教科書で、子供の体験として、雷の光と音の遅れを扱っているが、
「雷は、光と音が同時に出ている」という確認がない。
これは、花火の打ち上げの例でも同じで、確認されていない。
B  中学校では、気柱共鳴やオシロスコープの使用は無理である。
C  時間の測定には、1/1000秒計のストップウォッチが必要。 
U 測定のいろいろ  
1 光の速さと音の速さとの差を計測する方法   
 A 雷の光と音
  ×授業の時間中には、実際に計測できない。 
  △光と雷の到達に、ずれがあることはわかる。 → 光の方が速い
  ○子供の体験(音に速さがある)の確認にはよい。
  △VTRにもとりにくい。・・・発生方向が予測できない。 
  ×雷までの距離が測れない、わからない。 
 
 B 打ち上げ花火ようすをVTRカメラで撮影する
  ×授業の時間中には、実際に計測できない。  
△花火の光と音の到達に、ずれがあることはわかる。 → 光の方が速い
  ○子供の体験(音に速さがある)の確認にはよい。 
  △VTRにはとれるが、むずかしい。 
  ×花火が爆発した位置(上空)までの距離が測れない、わからない。
 
 C 陸上競技のスタートピストルを使って、発生する光と音で実測する。   
     → 運動場に100mの長さをとり、ピストルからでる光でスタートボタンを押し、音が聞こえたら、ストップボタンを押して、その時間から、音の速さを計算する。 
  ×直線で、100mとれる運動場は少ない。  
  ×100mぐらいでは、ストップウォッチのON、OFFは、非常にむずかしい。   
  ×実験者が2人だけになりがちで、屋外授業では、他の生徒は、遊びがち。  
 
2 音のずれ(2点間を進む音の速さ)を計測する方法
     
 D 2つのストップウォッチを使い、たいこの音が聞こえた時の時間の差を測定する方法(下図)  
  → Cの方法の変形である。   
  ○2点の時間のずれから、音速を計算することは、生徒に理解されやすい。 
  ×直線で、100mとれる運動場は少ない。 
  △Cの方法より確実だが、同時にストップウォッチを押すには、練習がいる。
  ×実験者が3人だけになりがちで、屋外授業では、他の生徒は、遊びがち。 
   
 E 人がストップウォッチを代わりに、音をマイク(音センサー)で受け、ストップウォッチ(1/1000秒計)で、時間を測定する。
  ○2点間の時間から、音速を計算することは、生徒に理解されやすい。
  △Dの方法より確実だが、特別な装置が必要である。 
  △市販されている装置もあるが、確実なものはなく、実験室で可能な距離の4mぐらいの短い距離でできるは少ない。 
  ○次のものは、よいと思われる。