食塩水は、アルカリ性?
 「水溶液を、酸性、中性、アルカリ性でわけてみましょう」「塩酸は、水は、・・・・」と、聞いていく中で、「食塩水は」と聞いたとき、「弱いアルカリ性」と答えが返ってきた。「え!」びっくりして、答えたグループ以外のグループも確かめてみた。
 どのグループも、赤色のリトマス試験紙がうすく青色に変わっていた
 そこで、特に小学校6年「水溶液」の指導について、調査・実験・考察してみた。
1 教科書での記述
 どの教科書も大差ない。某教科書では、次のように記述されている。
 食塩水は、リトマス紙は、青色も赤色も変化せず、確かに中性となっている。
2 検証実験
表−1   1級試薬 「塩化ナトリウム」を使って
 
濃度(%)  PH 赤色リトマス紙  BTB溶液(色)  フェノールフタレイン溶液(色)
  1 7.1 変化なし 緑  なし
 10  6.4 変化なし なし
 20 6.1 変化なし 薄黄緑 なし
 26.5
 (飽和溶液)
6.1 変化なし 黄 緑 なし
  ※濃い溶液になると、PHは、わずかに酸性よりになる。
表−2   市販の「食塩」を使って
 
濃度(%)  PH 赤色リトマス紙  BTB溶液(色)  フェノールフタレイン溶液(色)
  1 6.9 変化なし 緑  なし
  5 7.5 変化なし  青緑  ごくわずかに赤 
 10  7.5 変化なし わずかに赤
 15 7.9 ごくわずかに青色 こい青色   淡い赤
 20 8.1 わずかに青色 青紫 淡い赤
 25 8.4  うす青色 紫   淡い赤
 26.5
 (飽和溶液)
8.4 うす青色 淡い赤
  ※濃い溶液になると、PHも、指示薬の色も「アルカリ性」を示すようになる。
 
3 考察
  表2から考えると、食塩水の濃度が大きくなると、明らかにアルカリ性を示している。
  食塩には、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、炭酸マグネシウムなどが混入している。
  これらの物質が赤色リトマス紙を青色に変色させている。
  例えば、炭酸マグネシウムは、水に溶けると、次のように加水分解する。
      MgCO + 2HO  ←→  Mg(OH) + HCO
      炭酸は弱酸であるが、水酸化マグネシウムは、完全に電離し強塩基なので、
 全体としてはアルカリ性を示す。 
4 指導上の留意
  子供の実験は、正しいのである。
  子供に、食塩(食卓塩など)には、いろいろなものが混じっていることを知らせておく必要がある。