電熱線(ニクロム線)の発熱実験の問題 |
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◆ 新学習指導要領の内容 |
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小学校6年の「エネルギーの変換と保存」として、(4)「電気の利用」に |
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手回し発電機などを使い、電気の利用の仕方を調べ、電気の性質や働きについての考えをもつことができるようにする。 |
この中に、 「ウ 電熱線の発熱は、その太さによって変わること。」 |
さらに、説明では |
電熱線に電流を流すと発熱するが、電熱線の長さを一定にして、電熱線の太さを変えると発熱する程度が変わることをとらえるようにする。 |
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この内容を、中学校2年「電流とその利用」の中の、抵抗としての「金属線→電熱線」、「水の温度上昇を測定するときの電熱線(ジュール熱の測定)」へとつなげたい意図がうかがえる。 |
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1 そこで、いくつかの疑問・問題 (???だらけの教材) |
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@ |
電熱線(ニクロム線)は、近年、子供が目にしたことがなく、なじみのないものである。 |
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A |
「長さを一定にして」とあるので、らせん状でなく、のばして、直線状のニクロム線を使用することになるが・・・。 |
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B |
使用するニクロム線の長さと太さは、どのくらいにするのか。
子供が自由な発想で、いろいろ変えて実験できないのではないか。 |
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C |
小学校には、「電圧」の概念がないから、電圧一定の条件下の実験はできない。 |
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D |
2本のニクロム線を直列につないで電流の強さを一定にするのは、小学生段階ではむずかしい。 |
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E |
電源に何を使うかで、結果が逆になる。乾電池、電源装置、どれを使うのか。 |
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※ニクロム線が太い方が、発熱が多いという結果にしたいようだが・・・
電圧を一定にしない限り、実際には、長さ、太さでなく、電源によって発熱が変わる。
乾電池では細い方が、電源装置では太い方が、発熱が大きい。 |
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F |
発熱の程度・違いをどのような方法で測定するのか。 |
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発泡スチロールの切れ具合、温度変色液晶シート |
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G |
発熱し、ニクロム線が熱くなるにつれ、ニクロム線全体が伸びて、実験がやりづらい。 |
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※少し高価だが、伸びを吸収するバネ入りの実験器を購入する。 |
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[参考] 電源別 ニクロム線の発熱実験結果 (○△×は、発泡スチロール切断状況) |
◆手回し発電機を使用 無負荷時11〜12V |
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ニクロム線の長さ |
3cm |
4cm |
5cm |
6cm |
100W
(0.23φ) |
1.00V |
1.05V |
1.0V |
1.45V |
0.80A |
0.70A |
0.65A |
0.65A |
○ |
○ |
△ |
△ |
300W
(0.45φ) |
0.25V |
0.30V |
0.40V |
0.45V |
0.80A |
0.70A |
0.75A |
0.75A |
× |
× |
× |
× |
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× |
電圧、電流の強さとも不安定である。 |
× |
太いニクロム線の発熱量が十分でないため、発泡スチロールが切れない。 |
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◆単一乾電池2本を使用 無負荷時2.7V |
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ニクロム線の長さ |
3cm |
4cm |
5cm |
6cm |
100W
(0.23φ) |
0.80V |
0.90V |
0.95V |
1.15V |
0.70A |
0.65A |
0.55A |
0.50A |
○ |
○ |
△ |
△ |
300W
(0.45φ) |
0.30V |
0.35V |
0.40V |
0.45V |
0.90A |
0.85A |
0.85A |
0.80A |
× |
× |
× |
× |
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× |
電圧、電流の強さとも不安定である。 |
× |
太いニクロム線の発熱量が十分でないため、発泡スチロールが切れない。 |
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◆直流電源装置(ヤガミDS−9V) 無負荷時1.5V |
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ニクロム線の長さ |
3cm |
4cm |
5cm |
6cm |
100W
(0.23φ) |
1.45V |
1.50V |
1.50V |
1.50V |
1.25A |
1.00A |
0.80A |
0.65A |
○ |
○ |
△ |
△ |
300W
(0.45φ) |
1.20V |
1.28V |
1.30V |
1.32V |
3.60A |
3.10A |
2.55A |
2.35A |
○ |
○ |
○ |
○ |
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○ |
安定した電圧、電流の強さになっている。 |
○ |
発泡スチロールは、発熱量の多い太いニクロム線の方がよく切れる。 |
○ |
長いニクロム線の場合は、電圧を上げればよい。 |
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2 検討した結果、現時点での実験の方法 |
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◆ |
ニクロム線の太さ・・・100W と 300W(または200W)のニクロム線を使う。 |
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◆ |
ニクロム線の長さ |
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○ |
長さは、使用する電源によって違う。乾電池では短く、電源装置では長く。 |
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◆ |
使用する電源 |
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○ |
乾電池・・・・何個なのか(グループ全部に同じものを用意するのは困難) |
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○ |
小型電源装置 |
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電源装置を使うことを、強く勧める。しかも右図のようなボタン可変式電源装置がよい。 |
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常に新しい乾電池を全グループ用意するのは困難 |
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◆ |
実験での留意点 |
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○ |
電気を流してから、発泡スチロールをのせるのがよいが、子供は、のせてから電気を流す方がやりやすい。 |
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○ |
長さを変えても、大きな変化を観察するのは困難 |
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容量 |
線の太さ |
外径 |
W |
mm |
mm |
100 |
0.23 |
3.7 |
200 |
0.35 |
4.0 |
300 |
0.45 |
4.3 |
400 |
0.55 |
4.8 |
500 |
0.65 |
5.0 |
600 |
0.70 |
5.2 |
750 |
0.80 |
6.0 |
0.85 |
6.0 |
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3 参考(ニクロムの種類) |
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ニクロム線の種類・規格は、右の表のようである。 |
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○ |
学校で、入手可能なものは、せいぜい100、300、600Wのものであろう。 |
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△ |
最近は、町の電気店でもあまり置いてない。教材メーカーから購入するのがよい。 |