クルックス管の電極の疑問(位置など)
        
  陰極線の実験には、右の図のような真空放電管(クルックス管)が用いられる。
 ここで問題になるのは、陽極の位置で、陽極が陰極線の直進方向になく、下にあることである。
 子供たちは、なぜ、陰極線は陽極の方へまがらず直進するのかわからない。中には「十字板の影は、陰極線とは別のものが十字板から出ていて、それが影をつくっているのではないか」と思う者もいる。
 子供のこの素朴な疑問にどう答えたらよいのだろうか?。
 つまり、この実験は、陰極線が出ていることをすでに知っている者の実験なのである。科学的事実は、一つの現象、一つの実験だけから説明できるものではないのである。
 
疑問1  陽極がクルックス管の下方にあるのに、なぜ電子は直進するのか?
 一般に、気体放電では、陰極に接した所の電界が強く、管内の残りの部分では、それに比べてはるかに弱い電界が存在します。これは、管内の残留イオンが電子に比べて質量が大きく、移動速度が小さいため、空間電荷と呼ばれる正のイオン濃度の大きい部分を形成し、見かけ上陽極が陰極に接近したことと同様となり、陰極と陽極との電位差は、おもに陰極に接した所に集中することになる。(これを「陰極降下」電圧という。)
 陰極から放出された電子の加速は、陰極付近の領域の強い電界によって行われ、最高速度まで達し、残りの領域では、ほとんど等速で運動する。
 このとき、陰極は円板になっているので、陰極付近の電界は陰極面に垂直、等電位面は陰極面に平行になり、電子は陰極面に垂直にに加速され、その後は弱い電界の中を等速直線運動をする。
  陰極付近のこのような集中的な加速が電子の運動をほとんど決定するので、陽極の位置に関係なく、電子は陰極面に垂直に直進するのである。(図3参照)
  しかし、
◆陽極の位置は、意図的に配置されている。
「陰極線が、陰極面に垂直に放出する。」ことを理解してもらうために、あえて、陽極と陰極を向かえ合わせ、電子が陽極に引かれているというイメージをもたないようにしているという意見もある。
 
疑問2 十字板入りクルックス管の陽極の位置によっては、+−を入れ替えても影ができる?
  ◆次の写真、実際に実験しているのか疑問である。(某教科書の写真) 
 
   陽極が、陰極と十字板の間にあると、上の写真(b)の場合でも、十字板の影が管の底にできる。疑問1の電界を考えると、陽極の上方と十字板のうしろ(写真右側)で電位差ができると思われる。(教科書は、実際に実験しているのか疑問である)
 
したがって購入するとき、電極の位置に注意が必要である。
   また、十字板を電極として使用しているか、十字板の真下に電極がある場合は、クルックス管の上面部に影ができる。 
     
疑問3 −極から出た陰極線(電子)は、ガラス管の底にあたってからどこへ行くのか?
  ◆途中に電流計を入れると、針がふれるので、回路が成立しているが・・・ 
   したがって、陰極線(電子)は、陰極から出て、陽極に入っていると言える。
考えられるのは、電子は、クルックス管の底にあたってから、管の裏側表面を通って陽極にたどりついているのではないか?。表面のわずかな汚れが通り道になっているのではないか。 
   これについては、確かな情報や実験を経ていませんので、お考えください。