火起こし器
 理科の学習では、中学3年生で、エネルギーの変換の実験例として、仕事によって熱を発生させる実験として紹介されている。また、社会科の学習としては、古代人の生活体験として、火起こし体験を取り入れているのがある。キャンプ等で、火起こしを使って火を起こす場合がある。
 そこで、古代人の火起こしの知恵を追体験させる中で、エネルギーの変換を考えてさせていきたいので、製作してみた。火起こし器の方式としては、きりもみ式、弓ぎり式、ひもぎり式、舞ぎり式などがある。
1 教科書に紹介されている「火起こし器」  
右図のような、まいぎり式火起こし器が掲載されている。
2 問題点と工夫
  @ 火鑚杵(ひきりぎね)といわれる丸棒の材質と太さ
    ヒノキ、12mmφの丸棒を使う。
    6〜10mmφぐらいの方が、発火がよい。
  A 火鑚杵の先端部を交換式にする
  B 火鑚臼(ひきりうす)といわれる板の材質と厚さ   
    スギ板(赤みの部分の方がよい。)厚さ12mm
  C 火だねができても、点火させにくい。たこ糸とイオウを使う。
3 材料
 
 ヒノキの丸棒   12mmφ × 90cm
 (このくらいなら適当でよい)
 
 1
 木板 (アピトン材、水目桜、ケヤキなど重い木)
 厚さ3cm   11cm × 11cm
 木板
   巾6cm、 長さ60cm、 厚さ1〜1.5cm
1 
 スギ板(赤みのところがよい)(ヒノキでもよい) 1 
 ひも(金剛あみのものがよい) 1 
 燃えやすいもの(麻ひもなどをほぐす) 少々 
 綿糸(たこ糸) 少々 
 イオウの粉末(点火しやすくするため) 少々 
  
4 作り方
  ◆はずみ車を作る 
  @ 厚さ約3cmぐらいの材質の重い木から、ジグソー(電動工具)を使って、右図のような円板を2枚切り抜く。2枚の円板を、板目が直交するように貼り合わせる。
※厚い板なら、貼り合わせなくてもよい。
  ◆火鑚杵(ひきりぎね)をはずみ車に通す。
  A 火きり杵の丸棒としては、ビワ、カシ、などの固い木がよいが、そのような手頃な丸棒が身近に見あたらないので、ホームセンター等で売っている、ひのきの丸棒を使用した。ひのきがなければ、ラワン等、何の丸棒でもよいが、その場合、火きり臼(ひきりうす)にあたる部分だけを、ビワ、ヒノキにできるような構造にしておく。
  ◆火鑚杵の腕木を作る
  B  図4のように、厚さ約1.5cmの木で腕木を作り、杵とひもを通す穴をあける。 
C ひもをつける。杵の上端にひもを通す穴をあけ、腕木と杵に、写真のようにひもを通す。
  ◆火鑚臼(ひきりうす)を作る   
  D  火鑚臼としては、ヒノキ、モミなどがよいが、スギ板を使う。
図5のように、ヒノキ板のはじに、円形の溝をつけ、のこぎりなどで、巾5mm程度の切り込みを少し入れておく。
(ここが重要なことで、後述するように、まさつされ、炭化したケズリカスがここから下に落ちる)
    ※火鑚臼は、写真のように、別の重い板に固定しておくと使いやすい。   
  E 火鑚杵の先端を取り替えられるようにするとよい
図6のように、火鑚杵の先端に穴をあけ、細い別のヒノキの棒を押し込んで使えば、杵の本体のスリヘリが防止できるし、杵の材質が何でもよいことになる。
     
5 使い方(発火法)
@  まず、はじめに、火鑚杵のまわりに、ひもを腕木をまわしてからませる。
  A  腕木を上下させ、火鑚杵を火鑚臼の中でまわす。最初は、まわすことに心がけ、調子がついてきたら、腕木を下に押すときに力を入れると、やがて煙が出始める。
このとき、図7のように、紙の上に炭化した黒い粉が落ちるようになり、煙が立ち上る。
  
  B  まわし続けるのをやめても煙が立ち上っていれば、黒い粉の中に赤い火ができているので、息で静かに吹いていくと、火玉が見える。(煙が出て、すぐに回すのをやめず、煙がたまった黒い粉の方によく立ち上るまで回し続ける。途中でやめない)
  C できた火だねにたこ糸をつけると、たこ糸に火だねができる。
  D 麻ひもをほぐしたものの上にイオウの粉をかけ、それにCの火だねを接触させると、炎となって燃え上がる。 
(参考) 古代人の発火法
古代人の発火法は、
        @摩擦法     A撞撃法(どうげき法)     B圧搾法      C光学的方法
の4つである。
  1・2は、アフリカの火鑚               3は、はずみ車を利用した火鑚  
4は、エスキモーの皮ひもを利用した火鑚   5は、オセアニアのみぞ火鑚
6は、オーストラリアの鋸火鑚          7は、皮ひもによる鋸火鑚
8・9は、エスキーモーの発火弓