問 題 解 決 学 習 |
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1 |
仮説の設定‥‥‥‥‥‥主として思考能力 |
2 |
仮説に基づく実証‥‥‥主として技術的能力 |
3 |
実証結果の検証‥‥‥‥主として思考能力 |
4 |
問題解決または新たな問題の発見‥‥‥主として思考・技術能力 |
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※思考・技術的能力の根底に働く動的状態としての情動的 能力が,思考や技術を生活化される原動力となる。 |
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問題解決学習も系統学習も,問題解決については,いずれもかかわりがある。 |
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問題解決学習とか系統学習という用語は多く使われているが,このような用語は教育研究上の述 語というよりは,教育ジャーナリズムの時事用語だとも言われている。 |
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1 問題解決学習 |
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(1) |
この方法は,アメリカのデューイ等の経験を通して学習活動を行う(なすことによって学ぶ‥ ‥‥Learnig by doing )という教育理念がもとになっている。 |
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(2) |
この学習法は,子供が生活の中で生ずる具体的な問題をとらえ,その問題を子供自身が解決していく過程で問題解決の能力や態度を身につけていく方法である。 |
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(3) |
この学習法は,教師の指導性を制限して,子供自身が生活の中で起こった「問題」に応じて学 習活動を進めるという意味で,問題や教材の配列・順序などが,子供によって選択されるという授業形態である。 |
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(つまり,子供を全面に出し,教師がその背後にいるといった方法である。) |
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(4) |
この学習法(子供を全面に出し,教師がその背後にいるということ)は,問題解決学習において,教師が重要な役割を果たさないという意味ではない。 |
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実際には,教師が主役なのである。子供が自主的・主体的に活動するか否かのすべてが,教師に依存されている。つまり,教師の役割はいわゆる舞台裏での役割が主役なのである。 |
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(5) |
この学習法は,暗記とかドリルを中心とした学習から開放され,子供の自主性・主体性を重んじ,生き生きとした楽しい学習ができ,問題解決の能力や態度を育成することが原則である。 |
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(6) |
問題解決学習の欠点 |
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子供の生活の中で生ずる問題を取り上げ,これを教材化し,その配列・構成といった「問題状況の構成」には,それだけの素地が子供に備わっていなければならない。 |
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A |
この学習法は,問題解決の能力や態度面の育成にはよいが,その反面,事実や現象の理解のための知識の習得ということが,副産物になりやすい。 |
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B |
経験を主とする学習は,精神的にも,時間的にも非能率的で,その効果は必ずしも,確実とはいえない。したがって,教科によっては,かえって学力が低下するともいわれている。 |
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2 系 統 学 習 |
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(1) |
この学習法は,人類の文化遺産として成立している知識の構造を重視し,子供の日常生活から起こる問題よりも,系統的な知識を与えるといった方法で,ヘルバルト等の教育理論を主軸に考 えられたものである。 |
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(2) |
この学習法は,「記憶の教授学」ともいわれ,次のような特性をもっている。 |
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@ |
すべての問題は,教師の立場から取り上げられ,教師中心的な学習法である。したがって,子供が受動的になりやすい。 |
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A |
この方法は,比較的短時間に多くの教材を習得できる。 |
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B |
けれども,この方法は演繹的で,この方法のみに頼っていたのでは,子供が新しい事態を解決するために習得した知識・技能を生産的に活用する機会が与えられない。 |
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C |
この学習法は,もっぱら教師に服従し,その義務を果たすだけに慣らされ,自主ないし創造的な思考や実践的な態度が養われにくい。 |
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D |
この学習法は,子供の記憶力に依存するもので,ドリルとか暗記ということが厳しく強要される。 |
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U 教 材 |
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○ |
教材に対する考え方は,学者により,いろいろな論説がある。 |
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教材とは,子供が授業を通して,その中に含まれている新たな価値(知識・技能・情操)を獲得されるものである‥‥‥‥と。 |
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○ |
一般に授業というものは,教師・教材・子供の三者のからみ合いから成り立っているとすれば, その一角を占める教材は極めて重要な役割をもつものである。 |
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したがって,次のような教材研究等が必要となる。 |
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1 教材を構想する |
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(1) |
教師は,子供がその教材をどう解釈し,どのような思考をするかなど,何等かの予想に基づいて教材は構想される。 |
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(2) |
このことは,子供は授業以前に何を知っていて,何を知らないかを把握する。 |
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(その教材についての子供の既習知識や先行経験のあらいだし) |
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(3) |
この教材を与えることは,子供に何を知らせることになり,何を考えさせることになるかのかを明確にしておく。
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(4) |
この授業によって,子供の思考構造がどう変わり,それ以後どのような学習内容を必要とするかを構想しておく。 |
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2 教材の与え方と内容の吟味 |
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(1) |
まず,教師自身が,その事柄・事象についてよく知り,教材の与え方の計画工夫する。 |
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(2) |
教師自身が,子供とのかかわりを勘案して,教材の内容を吟味しておく。 |
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V 教材のねらい |
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学習内容とねらいの明確化 |
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(1) |
学習内容は教材内容であり,したがって,どのような教材で,どのような内容を学習させるかを明確にしておくことが大切である。 |
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(2) |
この場合,子供に学ばせる内容が授業の目標となるもので,これを一般的には,授業で,
「本時のねらい」とか「本時の目標」とかで示している。 |
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(3) |
経験主義の教育の場合,子供が経験することがら,すなわち,教材の学習を通して何(どのような科学的事実,概念,法則等)をつかませるか明確でない場合がある。 |
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「なすことによって学ぶ」の行動,あるいは経験自体が学習内容とされ,ときには,それ自体が目的となっている場合もある。
この場合,経験を通して子供が「何か」をつかむことが大切であってその「何か」の客観的内容と「つかむ」という主体的行為の2つを大切にすることが重要である。 |
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(4) |
このことが問題解決の能力を高めるために重要なことであり,結局は,教材とその内容やねら いに関する研究に帰することになる。 |
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W 教 材 解 釈 |
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(1) |
学習指導を柔軟にしていくためには,子供が見えてくるということだけでは十分ではない。 |
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(2) |
子供の発達を促進していくためには,教育の文化的価値を身につけさせることを目指すことが極めて大切である。 |
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(3) |
一般的に,教師が1つの教材を教える場合,教材研究という名のもとに,教材そのものの専門的な内容についてのみ深く掘り下げて追究する傾向がある。 |
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(4) |
教材解釈は,教材そのものの専門的な内容の掘り下げも必要だが,もっと教材のもつ史的な発達や,その文化的価値についての追究が重要である。
そして,その中で今日の子供に特に,どの点について理解を深めていく必要があるかを明らかにすることが大切である。
このことを抜きにしては真に教材が見えてくることにはならない。 |
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(5) |
子供が見えてくるとともに,教材が真に見えてくるならば,それによって教師が両者の出会いの場を構成する可能性が豊かに広がってくる。 |
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X 学 習 課 題 |
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1 |
授業の原動力となるものは,授業過程で子供に提示される学習課題である。 |
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2 |
授業を通して,子供は,教材から新たな価値(知識,技能,情操)を獲得しようとする。
この場合,教材そのものを生で子供にぶつけたのでは,子供は教材から新たな価値を獲得することができない。
そこで,教師は教材のねらいのうち,「核」になる問題は何かを明らかにし,その「核」を中心とした問題を課題化したものが「学習課題」なのである。 |
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3 |
子供は,教師の提示した「学習課題」から「核」に迫る問題を見つけ,見つけた問題を解決することにより,教材のねらいに迫ろうとして試行錯誤するであろう。 |
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4 |
教師によって作成された学習課題については,これを子供にどのようにして提示するかが問題 である。学習課題の提示のしかたによっては,子供が「核」に迫る問題を見つけ得るか否かに大いに影響する。 |
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例えば,次のような提示のしかたが考えられる。 |
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@ 子供の認識的な興味・関心を呼び起こす。 |
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A 子供の心の中に内的動機を形成せしめ,学習の自己運動が活性化するようにする。 |
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B 教師は,教材に対する正しい解釈のもとに,学習課題を子供に明瞭に意識化させる。 |
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C 学習課題の適切で具体的な提示法の工夫する。
つまり,発問,資料の活用,教具の活用,観察,実験,見学,調査,教育機器などである。 |
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Y 子供の見つけた問題の吟味と集約化 |
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1 |
学習課題の提示により,子供が多様な問題を見つけるであろう。 |
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2 |
子供の見つけた問題について,教材のねらいとかかわりで吟味し,見つけた問題相互の関連性,共通性,類似性などを勘案して,これを子供中心にみんなの共通の問題としての集約化を図る。 |
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Z 学 習 問 題 |
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1 |
前項で子供の見つけた問題を吟味し,共通の問題としてまとめられたものが,「学習問題」である。 |
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2 |
したがって,学習問題は教師のつくるものではなく,子供相互で考え,見つけ出した問題を検討してつくられたものである。 |
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[ 学習問題の解決 |
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学習問題の解決は,大要,次の段階を経て行われる。 |
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1 学習問題解決のための予想立て(仮説の設定) |
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(1) |
ここでは,子供の学習経験や生活経験などをもとに,どのようにすれば,解決できるかの予想立てをさせる。 |
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(2) |
ここでは,認識能力のうち,主として思考能力が働く。 |
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2 予想に基づく実証 |
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(1) |
ここでは,問題解決のための予想に基づいて,実際に確かめてみる段階である。 |
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(2) |
確かめ方には,実験,調査,観察などがあげられるが,確かめ方の方法的な問題であることから,ここでは,認識能力のうち,主として技術的能力が働く。 |
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3 実証結果の検証 |
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(1) |
ここでは,前項で実証した結果について,判断する過程である。 |
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(2) |
実証結果が,予想どおりになれば問題解決したことになり,教材のねらいに到達したことになる。 |
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(3) |
もしも,実証結果が予想どおりにならなかった場合には,その原因はどこにあるのか,検討してみる必要がある。 |
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(4) |
検証の結果,新たな問題も生じてくる場合がある。この場合も,その原因や今後の対応について検討する必要がある。 |
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(5) |
この段階では,認識能力のうち,主として思考能力が働く。 |
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4 |
以上,学習問題解決のための予想立て,予想に基づく実証,実証結果の検証で,主として働く 認識能力のうち,思考能力や技術的能力の活性化をはかるものは,情動的な能力であって,これらが相互にからみあって認識活動が行われるものである。 |
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そして,このような認識活動が活発に行われるためには,思考,技術,情動といった認識能力が活発に働くことであり,同時に問題解決の能力を高めることにもなる。 |
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問題解決の能力を高めるには,以上を勘案した授業実践の積み上げが最も重要な条件である。 |