フライフィッシングに関する書物も最近は数え切れないくらい発行され、どれが自分にとって参考になるのか,またおもしろいのか迷うほどです。ここでは,教書/理論書の類は別項にて今後ご紹介してゆくとして,フライフィッシングや自然,また他の釣りも含めて文学作品を中心に,私の心に残っている一編をご紹介します。興味をもたれた方はご一読ください。 |
パブロフの鱒 ポール・クイネット 森田義信 訳 01・02・28発行 角川書店 心理学者であるがゆえに、視点ががユニークでおもしろい。釣りをしているときの自分の心理状態を第三者的に考えてみるなどということはそうあることではない。だから、いわれてみればそうかもしれないことに、ついニヤッとしてしまう。また釣りをしていない時の釣り師、どこかでいつもつりの世界と行ったりきたりしていることに気づかされたりもする。 そのほか釣りにまつわる事象が独特の語り口で表現されていて飽きさせない。 |
自然のことのは ネイチャープロ編集室 00・11・10発行 幻冬社 自然の美しさに勝るものはないと思っている私には,この本の中で捉えられている動物や植物,そして大自然が,心の中に浸みいるようで,久しぶりに感動しました。そして更にそれらの写真に添えられた言葉は,日本語が自然を描写するのに本当に適していることを再認識させてくれます。 解禁を待つ冬の間,こんな本で時を過ごすのもいいと思います。 ところでみなさんはススキの異名を「袖振り草」ということ、ご存じですか? |
垢石釣り随筆 佐藤 垢石 著 92・09・10発行(復刊) 釣り人社 この本は「旅の釣り人」と呼ばれていた筆者の初期の作品の中から選りすぐられた随筆集で,元々は昭和26年に河出書房から「市民文庫」として出ていたものの復刊ということですが,現代用語に書き直されていて全く違和感無く読むことができる。フライ関係でないのにあえてご紹介するのは,解説の中にもあるのですが,俗事を超越して釣りに打ち込んだ人ならではの,その飄々とした作風が何とも言えず魅力的だからです。感心したりあきれたりまた時にはにやりとしたり,とにかく楽しく読むことができます。 |
雨の日の釣師のために 釣文学35の傑作 91・09・11発行 D&G・パウエル/開高 健 編 TBSブリタニカ 故,開高 健さんも編集に加わった,釣り文学のベストセラー。釣りというのは一種のゲームであるがゆえワクワクするものなのだが,ここに納められた35編は同じように釣り人である自分をワクワクさせてくれた。雨の日にはウイスキーをチビリチビリとやりながら、次回の釣行用の針を巻き,疲れたらこの中の1編を読む。結局,晴れても降っても釣り三昧。 |
きょうも鱒釣り 世界フライフィッシング紀行 芦澤一洋 著 95・7・25発行 宝島社 故,芦澤一洋さんが1978年あたりから各種媒体に発表してきた釣り紀行でありエッセイをまとめたものですが、単なる釣行記ではなく,彼の言うフライフィッシングの4つの喜び,「狩りをする喜び」「タイイングの喜び」「キャスティングの喜び」そして「旅をする喜び」を人間味溢れた語り口で私たちに伝えてくれています。 |
テールウォーク フィッシング・オデッセイ〜釣り人の詩 浜野安弘 著 79・7・15発行 講談社 一尾のトラウトが,一人の人間の人生観を変えてしまうなどと言うことが本当にあるのだろうか。この本が出てから30年以上経つというのに、フィッシングを通してこれほど人の生き様を表現した書物に出会ったことはない。最近の彼は映画作りに目覚めたようだが、相変わらずアグレッシブに活動している。 眠れない夜,フライを巻くと心がほぐれて,すみきった風のようなものが,頭の中のどろ水を洗い出してしまう〜本文より |
フランク・ソーヤーの生涯〜伝説の鱒釣り師 フランク・ソーヤー 著 S・ヴァインズ 編 能本 功生 訳 91・6・15発行 平河出版社 続けてフランク・ソーヤーの本になってしまいましたが,こちらは彼の「Man of theRiverside」の全訳に彼の親友であったシドニー・ヴァインズがソーヤーを取り巻いていた人々からの証言や,彼の当時の雑誌などへの寄稿文からの抜粋を加え,まとめあげたものです。より具体的なシチュエーションにおける彼の釣り哲学と人間像を知ることができます。小テーマ単位で書かれていて大変読みやすい。 |
イギリスの鱒釣り〜川とともに生きる 90・8・15発行 晶文社 |