左近 

千手観音

ひとしきりやんだ雨、紫乳ヶ池に霧が立ち込めていたが、やがて足元より引いてゆき群生した蓮々の彼方より、
こちらに向かって金色の輝きの千手観音が空中に近づいてき、桃の花姫を抱き上げた。 
姫の好んだ伽羅香を十昼夜焚き込みここへ運んだ・・・。
幾多の腕に抱えられると、ほのかに香りが顔にかかった。
悲しくて、ともに沈んでいこうと池畔に来たのだが
(ドラマチックな金属的な和音と共に鳴りわたる)

まさかここに逃げ込んでくるとは(ややもすると,とんでもないことに)こんな所においておくことはできない。
祭りの山車が通りに入ってきた。
無限大
無限小だけでなく(無限異次元も存在するので普段の我々の生活に多重に重なっているのだが、もちろん
気づくことはない

ほどなく使いがやって来て、一刻も早くここをたてと言う。 「うち あんたはの行きはるとこならどこへでも」
可愛い。ピーヒャラピーヒャラデレデンデン。万葉かるたに興じていた彼女の手をとりピーヒャララデンデレレ
「さあ、行くぞ」
やがて洛西に近づいて来ると、御囃子の音もかすかになった。祇王寺までこれなら暗くなるまでに着ける。

七夕