ELSINORE MT250はこんなバイクです。

発売日 1973年(昭和48年) 5月10日〜
当時の販売価格    208,000円

CR250Mの、公道仕様版がこのMT250。CRとの共通部品も多くて、構成は真にレーサーレプリカでしたが、ホンダの味付けは、扱いやすさに重点をおいた4スト的な味付けで、オンオフ混在のロングツーリンク゛も楽々こなすツーリングバイクに仕上がっていました。オーナーの多くはマックインのCMを見て購入したわけなので当然オフロードでの過激な動力性能を期待してましたが、この点はちょっと拍子抜けでした。これは、ホンダにとっても誤算だっようで、約2年の短命におわり、後継車種も出ませんでした。当時はまだマルチパーパスなんて言葉も無いし、MT250のコンセプトを理解する土壌も無かったということでしょう。しかし美しく丹精な車体構成は、他社のオフローダーには無い、洗練された美しさがあって、やぼったい国産オフローダーの中にあって、キラリと光る、唯一ハイセンスな車体でした。


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ELSINOREタンクマークは黄色に黒の縁取り、前後フェンダーは樹脂製、リムは純正は鉄です。

エンジンの耐熱塗装はこげ茶色、マフラーは黒で、マフラープロテクターはアルミ製です。

メーター周り。真ん中の赤いランプは速度警告灯。タンクキャップはCRと同じアルミですがタンクは鉄です。

斜め後ろから、この角度がとても美しいです。

エンジンキーはタンク左下前方にあります。

燃料コックはタンク左下後方にあります。この位置でSTOP、真下がON、左がRESERVEです。
キックアームは根元から折りたたむ構造です。

キックアーム、スタンバイ状態

シート左下にはシート開閉用のロックがあります。キーはエンジンキーと共通です。

シートはこんなふうに開き、タンクの直ぐ後ろが工具箱、長円のアミはエア吸入口その隣の丸キャップが2ストオイルの給油口。

工具箱は取り外せて蓋付きです。

工具箱の下にはエアクリーナーボックスが有ります。

エアクリーナーボックスの蓋を取るとエレメントが顔を出します。

エアエレメントをはずした状態。

エアエレメントとエアクリーナーボックスの蓋、エレメントは純正ではないです。

サイドカバーは上二点のフックと下一箇所のボルトで固定されてます。右の穴はオイルチェックの窓です。

上二点のフックのかかる穴。サイドカバー自体の材質は樹脂です。

サイドカバーの裏側にはヒューズホルダーが付いています。

サイドカバー内は樹脂製のオイルタンクとバッテリーのホルダが入ってます。

オイルタンク下奥にバッテリーホルダーがあり二本のネジで止まってます。

ネジをはずし、蓋を引出すとそのまま手前に開きます。たかが蓋なのに妙に凝ってます。

バッテリーはこんな樹脂製ケースに入っています。

左側クランクケースカバー、マグネシウムの文字入りです。

右側クランクケースカバーにもキックの下にマグネシウムの文字があります。

点火プラグは真上が標準位置です、左斜めに予備のホールがついています。

リアサスは二段式になったスプリングがついてます。

Fブレーキは片ハブ式です。

ハンドル右側、ヘットライトとキルスイッチ。

ハンドル左側、上からHi-Low、ウインカ、ホーン

左側ステップ部フレームにはチェーンよけのプロテクターが付いてます。

スイングアームには高さ調整式のチェーンガイドがついています。

チョークはキャブレダーに直接付いています。下にさげるとONです。

軽自動車(二輪)の型式認定プレートがスイングアーム付け根にあります。


ロードインプレッション
reported by 金閣
まずは、エンジン始動、メインスイッチはタンクの左下に付いていて、2ノッチON−OFFだけで、パーキング等は無い。メインスイッチをON、キャブレターに直接付いているチョークレバーを下に下ろす。(チョークレバーはシーソー式で、実際にはバイパスバルブを引き上げることになる。) エンジンスタートはキックのみでセルは無い。キックはキックアームのエンジン側の軸部分が折りたたまれていて、拡げると右側に程よく距離がとられて、スタンバイ状態となる。2スト250cc単気筒だから、キックは想像以上に重い。体重の軽い女性だと、サイドスタンドを立てないと少々厳しいかもしれない。私は身長167cm、足は限りなく短いほうだか、なれてしまえば、サイドスタンドは立てなくても、苦労無しにエンジン始動可能だ。参考までに、サイドスタンドを立てた状態でキックを踏んでいると、サイドスタンドのフレーム側の付け根が強度的にもたず、曲がってしまう。こうなると、駐車時に車体が必要以上に傾斜してしまうし、フレームにとって良いことは無いので、お勧めでない。キックは一気に踏み下す、中途半端にやれば、吹き返し(ケッチン)をくらうことになる。一般的にエンジン始動時はチョークON、アクセル全閉状態で、キックする。しっかりと整備してあれば、この始動方法で、あっけなく始動する。2ストエンジンの常であるが、アクセルの開閉にエンジンが反応するのを確かめたら、チョークはなるべく早く戻す。必要以上にチョークを使えば、必ずプラグがカブるので、要注意だ。長期間始動しなかった場合を除き、マフラーからの白煙は、近年の良質2ストオイルを使用することにより、ごく少ない。あんまり出るようなら、クランクのオイルシールの状態をうたぐったほうが良いかもしれない。ギアは1ダウン5アップ、1と2の間にニュートラルのある一般的なパターンだ。またがった時に解るが、シートとリアサスが思った以上に柔らかく、またがっただけで、お尻はシートに深く沈み、フアフアした感じがある。フアフアのシートは一見すわり心地が良さそうだが長距離をやると、お尻がこわばってかえって疲れる。私の個人的な志向だが、シートは硬いほうが疲れないと思う。
まず、舗装路を走る。走り出しても、フアフア感は続くが、スタンディンクすれば、それがシートに起因することだと解る。一速から回転を上げていくと、6000rpmあたりで、急激に失速したように頭打ちになる。したがってシフトチェンジのタイミングは4000rpm付近が丁度良い感じだ。感覚としては少し早めのシフトアップで、トルクに乗っていく感じをつかめばスムーズに走れる。また、ハーフスロットルで流すような時でも、2スト単気筒独特の不等ピッチで「パン」「パン」という着火はあるが、ギクシャク感は少なく、けっこうスムーズだ。直進では車体は安定しているが、コーナーではフアフア感が出てくるので、意識してしっかりとリアにトラクションを掛ける。こうすると不安定な感じは収まるが、やはりもう少し固いリアサスが欲しくなる。実はこの辺は、社外のリアサスを使うことにより、カチとした感触になるので、ツーリングや普段足として使う人は、オリジナルは保存しておいて、社外のサスを使うのも、良い方法と思う。
ブレーキの構成は前後ともドラムで、性能はけして期待してはいけない。リアはいいとしても、フロントはかなり甘い。握力の強力な人であれば、それなりの制動動力が得られるかもしれないが、現代のバイクと比較したら、50%程度の能力しかないと思う。したがって、早めの制動、多めの車間距離が基本だ。この基本さえ守れば、今でもりっぱに普段の足として使える。
遠乗りでも高速道を走る機会は少ないだろうが、高速道では、スロットル全開で、メーター読み約120km/hがいっぱいだ。この時、回転計も7000rpm付近から、びくともしない。振動は思ったほどは無く、けっこうそのまま走れてしまう。追い越し車線で車の流れについて行こうとすると、スロットル全開のまま長時間走れてしまい、エンジンへの負担が大きくなるので要注意だ。おまけに、ミラーはブレブレで、後方視界も悪くちがう意味でも要注意となる。高速では100km/h付近で巡航して低速車を抜く時だけ全開するというのが、いいのかなと思う。燃費は一般道の遠乗りなら30km/Lを越すこともあるが、通常は25〜28km/L程度だ。(注、このロードインプレッションに使用した車体はライトチューニングが施されておりました。ノーマルでは、7000rpm時 105km/hとなります。)
次にオフロードを走る。エンジンは4000回転付近がトルクもあり走りやすいので、このあたりの回転を維持するが、ノーマル状態でモトクロコースを走るのは、かなり厳しい。コースの起伏が多いところでは、リアサスは完全に底着き状態になり、サスを壊しそうで本気で走れない。(これは私の体重のせいもある、軽い人ならOKか) またこまかい起伏のある登りでは、リアは右へ左へと暴れ回り直進を維持するのが一苦労だ。一方コーナーでは比較的スッパリと思ったラインへ飛び込めるが、抜ける時はやはりリアが暴れる。一方、一般の林道レベルでは確実なグリップ走行中心となるので、リアの柔らかさは気にならない。むしろ良い方向に働いて、起伏をなめるように走れる。足つきの良い車体も手伝って、景色を楽しみながら、のんびりしたツーリングが可能だ。こう書くとオフはだめかと思われるかも知れないが、林道をモトクロスコースのように走る人は別として、一般のツーリングレベルで走るのなら、まったく問題ないレベルと思う。しかし、もう少しという人には、やっぱり社外品のリアサスがお勧めだ。リアサスを換えるだけで、ここまで変わるかと思うほどオンもオフも乗り味は一変する。
ま、その気のある人はお試しください。



主 要 諸 元

長さ 2160mm


エアクリーナー ウレタンホーム式
890mm 燃料タンク容量 8.5 L
高さ 1130mm



セッティングマーク 0.04 A
軸距 1440mm メインジェット #122
原動機の形式 MT250E エアージェット #200
総排気量 248cc パイロットスクリュー開度 1回転1/4 ±1/4
燃料の種類 ガソリン 油面高さ 20mm
車両重量 前軸 57kg





形 式 マグネット点火
後軸 71kg 点火時期 20°BTDC固定
128kg 点火プラグ B7ES (NGK)
車両総重量 前軸 84kg プラグギャップ 0.6〜0.7 mm
後軸 154kg


形 式 6N6-3B
238kg 容 量 6A
タイヤ 3.00-21-4PR




機関から変速機
までの減速比
3.30
4.00-18-4PR
最低地上高 250mm


形 式 湿式多板コイルスプリング

制動距離(初速) 14.5m (50km/h) 操作方式 機械式
登坂能力 0.70

形 式 常時噛合い式
最小回転半径 2.3m 操作方式 左足動式






始動方式 プライマリーキック

1速 2.235
種 類 2ストローク 2速 1.571
シリンダ数、配置 前傾15°横置き 3速 1.160
燃焼室形式 半球型 4速 0.896
弁機構 ピストンバルブ 5速 0.718
ボアxストローク 70.0x64.4 ミッションオイル容量 1.0 L
圧縮比 6.6 第一減速比 2.933
圧縮圧力 9.0kg/cm2-800rpm




キャスター 59°30'
最大トルク 2.6kgm/5000rpm トレール 143mm
最高出力 23PS/6500rpm タイヤ空気圧 1.5kg/cm2

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吸気 開き 80°(BTDC) 1.5kg/cm2
閉じ 80°(ATDC) かじとり角度 45°
排気 開き 87°(BBDC) 45°
閉じ 87°(ABDC) 制動装置形式 ワイヤー式
リーディングトレーリング
掃気 開き 60°(BBDC)
閉じ 60°(ABDC) ワイヤー式
リーディングトレーリング
アイドリング 1300rpm



潤滑方式 分離給油式 懸架方式 テレスコピック式
オイルポンプ形式 プランジャ式 スイングアーム式
オイルタンク容量 1.3 L フレーム形式 セミダブルクレードル式
冷却方式 空 冷 燃 費 (50km/h公式テスト値) 40km/L
この諸元はサービスマニュアルを基にしています。

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