ELSINORE CR250Mてこんなバイクです。
(市販モトクロッサー)
 

発売日 1972年(昭和47年) 9月26日〜
当時の価格 300,000円

主な仕様
ロードレーサーの技術である軽量うす肉クロームモリブデン鋼製フレームをモトクロッサーに採用。マグネシウム合金製、クランクケースカバー等もロードレーサーからの技術導入。開発の主眼は徹底した軽量化とバランスであり、エンジンもオーソドックスなピストンバルブ式を採用、アルミニュウム合金燃料タンクは、アルミ地金にグリーンライン、太いダウンチャンパー等、一口でいって、バランスのとれた非情に美しい車体に仕上がっていた。
スティーブマックインがCMで使ったのも、この車体、とにかくかっこよかった。


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タンクはアルミ合金製で、アルミ地肌にグリーンのライン両脇に黒のストライブです。本来は前面に樹脂製のゼッケンプレートが付きます。リムは前後ともアルミです。

この車体のサイドカバーエンブレムは輸出用で、国内仕様はELSINOREのかわりにHONDAが入ります。フェンダーとサイドカバーは樹脂製です。タンクとシートのラインが一致しMTよりまとまりがあるように感じます。

タンクエンブレムは国内仕様はELSIORE、輸出仕様はウイングマークです。
フロントフェンダーのマッドフラップはCRの文字入りでCR専用部品です。

リアブレーキドラムのレバーはアルミ鍛造品で、CR専用です。レーサーなのでスイングアームに補助ステップ等はありません。
リアのブレーキペタルもアルミ鍛造品が奢られています。キックペタルもCR専用でMTより一回り小ぶりです。エンジンの耐熱塗装はMTのこげ茶色に対しCRは黒です。チャンパーがうねりながらフレーム下を通っており、ドレンプラグはチンパーをはずさないと取れません。
左クランクケース後部でMTではオイルポンプのある位置には、その痕跡すらありません。左側クランクケースカバーもCR専用で、お約束のマグネシウムの文字が入っています。チェンジペタルもアルミ鍛造品でCR専用です。

リアスプロケはアルミです。リアハブにはスプロケとの間にダンパーラバーは無く、直接スプロケが付いてます。リアシュックもアルミボデーでMTに比べバネレートの高いスプリングを装着してます。

左側クラッチレバーホルダーは肉抜きがされていてCR専用です。スイッチ類が無いのですっきりしすぎでなんとなくさびしい気もします。

右側ブレーキホルダーも肉抜きがあるCR専用です。オプションで、ここにキルスイッチを取り付けられますが、その場合、MTと同じホルダーになります。
フロントハブはMT250の片ハブに対し、CRは通常型のハブで、形はMT125の物によく似ています。ブレーキドラムのレバーもアルミ鍛造品です。
写真中央のフレームとエンジンを固定するボルトのすぐ下あたりがMTではタコメーターのケーブル取り出し位置ですが、CRにはその痕跡らしい座があります。
サイドカバーをはずすとエアクリーナーが顔を出します。サイドカバー、リアフェンダーそしてシートでエアクリーナーボックスを形成してます。この写真では見えませんがシートベースもアルミです。
シリンダーヘッドは前方に向かい放射状のフィンが付いています。ヘットは4本のメインスタットの他にシリンダからはえている4本の補助スタッドで固定されています。
シリンダヘットには裏側にも小さなフィンがあります。
チャンバーは、右前方に出てからフレーム真下に大きくターンし、フレーム真下で一度左側まで行ってから右側にカーブ、そして右後方上向きに抜けて行きます。写真では良く解りませんが、とにかく凝った造形です。



ロードインプレッション
Reported by 金閣
まずまたがってみる、ど太いダウンチャンバー等から想像していた見た目のイメージとはちがって、ずっと小さく細い。シートが低く足つきも良いので、安心感もある。モトクロッサーだから当然キーは無い。しかしハンドル右側にキルスイッチがあるのでこれがキーの代わりだ。通常スタンドは無いが、オプションでスタンドを取り付けることができる。正直言ってスタンドがあると、とても便利だ。
まずエンジンを始動する。キルスイッチONを確認し、次に燃料コックをONにする。燃料コックはONとSTOPだけでリザーブは無いそして転倒時のレバー破損防止の為、レバーはタンク内側に向いて裏返しについている。次にキャブレターのチョークをONにする。キャブレターは、口径が大きいだけで、基本的にMTと同じ構造だ。(口径は34mm) つづいてキックアームをひろげる。キックアームに滑り止めのゴムは無くサイズもMTと比べ少し小さい感じだ。当然だが圧縮が高いのでキックは重い。排気量の大きな4ストエンジンのような重さではなく、強力なスプリングを踏んづけているみたいに押し戻される感じだ。まずキックをゆっくり踏んでクランクを少しづつ回転させ、てっぺんから踏み込める位置にする。ここからが肝心だ、キックに全体重を掛け一気に踏み下ろす。とにかく一気に踏み下ろさなければならない。CR250Mのクランクには、まともなフライホイールは無く小さなインナーローターがあるのみだ。したがって生半可に踏み下ろそうものなら殺人的な吹き返し(ケッチン)が来て、後はどうなるかわからない。しっかりしたオフロードブーツを履いていないと怪我をするだろう。こつさえつかめば、なんとかなるが、油断は禁物、気合を入れてかからねばならない儀式だ。エンジンは始動と共に一気に吹け上がる。スロットルを何回かあおった後チョークを戻すが、ストールぎみとなる。ある程度暖気しないとアイドリングはしない。暖気後はアイドリングはするが、回転も高めで不安定だ。回転計が付いてないので、正確にわからないがたぶん2000回転ぐらいだろう。空吹かしすると、回転は一気に上がり超-強烈な、ものすごいエキゾーストノートを発する。太い音で、野山にこだまし、まさに怪物の雄叫びのようだ。この時代のモトクロッサーはどれも大きな音だが、CR250Mは特に大音量だと思う。
まずはゆっくりコース内の平坦な部分を走る。特別回転を上げなくてもそれなりに走る。けっこう扱いやすいと錯覚してしまう。少しその気になって回転を上げると、やっぱり2ストだ、はっきりとしたパワーバンドがあり、とつぜんアクセル開度の二乗ぐらいの勢いで車体を引っ張るようになる。今度は気合を入れてコースに出る。コースの状態は土で乾燥、コンディションは良好だ。アクセル開で小さいギャップの連続を直進する。フロントを浮き気味にしてリアにトラクションを掛ける。けっこう安定して直進する。そのまま少し大きなコブを飛んでみる、着地したとたんがつんと大きなショックがきて、バランスをくずす。チョット焦りながら立て直すが、正直言って怖かったのでなるべくジャンプはしないようにする。次に長い坂を上る、どんどんアクセルを開けていくとリアが右へ左へと暴れまわる。テクニックで押さえ込むと言いたいところだか、テクは無いので、全身の動くところは全部使ってなんとかねじ伏せる。普段使わない腹筋を酷使するせいか、息をする間もない。車体の暴れはアクセルを戻せば収まるだろうが、坂の途中でそれはできない。窒息死寸前状態で、なんとか登りきる。この坂だけで体力の95%以上を使い切ってしまったような気がする。感じとしては、リアがグリップしている時と跳ねている時の差が大きくて、体がついていかないみたいだ。一方コーナーへの進入は思いのほかスッパリ決まる。車体が低いのとフロントがしっかりグリッフしているからだと思う。しかしアクセルONでコーナーを抜けていく時はアクセルを開けすぎるとやっぱり車体が暴れ出す。暴れ出したら坂と同じで、激しく体力を消耗する。この傾向は、厳しく攻めれば攻めるほどひどくなるみたいだ。テクニックの問題もおおいにあるだろうが、私のレベルでは体力勝負だ。体力があれば早く走れる、そんな感じだ。走ったコースは、それほど長くないが、なんとか3周すると、汗ダラダラ体ガタガタとなって、最初の坂を登る自信が無くなったので、早々と休憩する。
私、金閣は今年47才、中年太り+αで、まともにモトクロができる体では無い。その昔、体重が今より−25kgぐらいだったころ、アマチュアのローカルレースで15人中2着になったのが、唯一のレース戦績で、ライディングテクニックのレベルは低い、ガンガン走れる人が乗れば、またちがうレポートになるだろう。


主要諸元

全長×全巾×全高 2140mm×890mm×1140mm
軸距 1450mm
最低地上高 190mm
車両乾燥重量 97kg
エンジン型式

2サイクル単気筒
  6ポート ピストンバルブ

排気量 248cc
ボア×ストローク 70.0mm×64.4mm
圧縮比 7.2
キャブレター PW34 (京浜)
最高出力 (PS/rpm) 33ps/7,500rpm
最大トルク (kg-m/rpm) 3.2kgm/6,500rpm
点火方式

マグネート点火

始動方式

プライマリーキック

点火時期 上死点前 1.5mm (16°)
点火プラグ B9EV (NGK)
燃料タンク容量 7.0 L
エアクリーナ形式 湿式ウレタン
潤滑方式 燃料混合
混合比 20 : 1
ミッションオイル容量 1.0 L
クラッチ型式

湿式多板コイルスプリング

変速機型式

常時噛合、左足動5段リターン

変速比 1速 2.056
    2速 1.571
    3速 1.250
    4速 1.037
    5速 0.862
一次減速 3.300
二次減速 3.357 (14x47)
フレーム型式

セミダブルクレードル式

懸架方式 前 テレスコピック式 
懸架方式 後 スイングアーム式
キャスター(角) 59°
トレール 145mm
Fフォークストローク 180mm
Rクッションストローク 105mm
タイヤサイズ 前 3.00-21
タイヤサイズ 後 4.00-18
ブレーキ型式 フロント

リーディングトレーリング (φ140)

ブレーキ型式 リアー リーディングトレーリング (φ140)

この諸元はサービスマニュアルを基にしています。

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