マイ・ドッグがほしーーーーい  


ポンタは我が家の愛犬。今はやりのウエルシュ・コーギー・ペンブローグです。我が家に来て4年がたちます。思いっきり子育てで忙しいある日、TVを見ていた私は、突然マイ・ドッグがほしくなってしまいました。
私は「ほしーーー」と思うと3秒以内に行動に走る持病を持っているので、気が付いた時にはもう新聞広告の「犬ゆずります」コーナーを探していました。
目にとまったのは「賢いコーギー血統書付き格安で譲る」という宣伝文句。4年前はまだコーギーなんて全然メジャーじゃなかったから「???」と思いながらも、すでにすごい名犬を予想していました。もちろん「格安」という文句が決め手になったことは言うまでもありません。
パパに話せば「えーーー、このクソ忙しい時期にい?!気は確かか?」と言われるに決まっています。「そうだ、お兄ちゃんのバースデー・プレゼントってことにしよう!」いいわけを考えついたのも早かった・・・。
さっそく次の日曜日、家族そろって見に行くことにしました。(^∇^)/


  まってえーーーーー  


いよいよご対面。どんなワンコかとドキドキしながら会うと、もう可愛いパピー時代はとっくに終わりを告げている感じの丸々太ったワンコが「ハアハア」すごい勢いで飛びつこうとしています。

見れば、どうみてもダックス・フンドと柴犬の雑種としか思えないルックス。しっぽがないので、代わりにおしりをブンブンふって大歓迎してくれてます。顔立ちはなかなかの美犬ですが、なんせ勢いがスゴーイ。小型犬っていったって、12キロくらいはありそう。子供どころか、私までも押し倒されちゃうーーー!!

「・・・」とろくに調べもせず来たことを後悔していると、パパが「よし、この犬に決めた。なかなか可愛いじゃないか。いいな?」とお兄ちゃんにふるではありませんか。はっきりいって5歳の子供に何をきいたってわけがわからないに決まっています。「うん。この犬がいい」の一言で、飼い主さんはシメシメ顔。思えばパパは仕事と育児で疲れていたのかもしれません。いつもは慎重なパパなのに、この日はかなり軽率だったと思います。(と、すでに失敗をなすりつけている・・・)

確かにコーギーは子犬から買えば高額な犬。でも、成犬で4万円は高すぎと後で知りました。

  ポンタが家にやってきた!  

犬とは賢いもので、来て数日はこちらの出方を観察しながらおとなしくしていました。「なあんだ、わりといいじゃない」と安心したのもつかの間、マヌケな家族と知るやいなや思いっきり根性の悪さを出し始めました。

つないでおけば、吠え続ける(もちろん散歩は2回しているのに)し、庭に放してやれば植えたばかりの花壇をメチャメチャにする。いくらしかっても、靴は何足もダメにするし、「待て」も「お座り」もきかない。散歩に行けばすごい勢いでぐいぐいひっぱるし、鼻息はまるでブタちゃんみたいに「ブーブー」してて、お下品そのもの。その有様に「ホントに血統書付きい?」と世間さまの疑惑の目。(^。^;)

子供にアレルギーがあるため外で飼っていましたが、あろうことか、リビングに乱入してウ○チとオ○○コをしてくれたこともありました。せっかく散歩に連れて行っても、必ず帰ってから、もう一度お庭でウ○チしてくれるのです。
飼い主さんが「何もしつけてないけど」と言ってたのが謙遜じゃなかったことに気づき「売るならフツーしつけくらいしといてよおおおーーー」\(>o<)/と何度も叫んでいました。

男の子2人の子育て(しかもケンタは多動時代のまっただ中)のオアシスに手に入れた華麗なる愛犬家生活・・・のはずだったのに・・・(T T)
犬って情操教育にいいんじゃなかったのおーーー!!とますますストレスをためていく私でした。


  訓練所にGOGO  


そんなこんなでくたくたに疲れ切ったある日曜日、またまたTVを見ていた私は「はっ、これだ」とひらめきました。w(゚o゚)w 
「訓練所」その名のとおり、どんな性悪犬もてってーてきに根性を入れ替えてくれるというウワサのお助け寺。人間で言ったら少年院。気がつくともう電話をかけていました。聞くと、月5万円ということ。「どっひゃー」と思いましたが、もうかなり疲れきっていたので、2つ返事でした。

もちろん苦しい家計から出るはずもなく、これまで以上に切りつめ生活に・・・。(T T)
パパの顔は「どーして結婚前に衝動的な性格を治しておかなかったんだ」という私への抗議と、何も知らずにむしゃむしゃ植えたばかりの花を食べまくるポンタに対し「どーしてお前もそうバカなんだ」という虚しい怒りで溢れ返っていました。


  おおワンダフル!!  




ポンタがいない1ヶ月はホントにパラダイスでした。
そもそもこんなに忙しい時期に犬を飼おうなんて魔がさしたとしか思えませんでした。

期待としぶしぶが混ざった気持ちで迎えに行くと、トリマーの奥様にお手入れしてもらって、別犬のようにサラサラした美しい毛をなびかせてポンタは登場しました。

変わったのは外見だけではありません。訓練士さんが小さな声で上品に「座れ」だの「ふせ」「待て」「つけ」だの命令すると、つんとすまして従うではありませんか。

もう「ブヒブヒ」と下品な鼻息でリードを引っ張ることもありません。
「おおっ、さすが5万円!!」パパと私は感動で胸がいっぱいになったのですが・・・。





  もとの木阿弥に・・・  

名犬に生まれ変わって帰って来たポンタでしたが、そもそも忙しいさなかに訓練士さんから伝授された訓練が続くわけもなく、あっという間にもとのポンタに戻っていきました。あの5万円は一体どこへ行ってしまったのでしょう?(−−;)

その内に育児のイライラを、言うこと聞かないポンタにぶつけるようになりました。今思えば子供を虐待しないですんだのも、ポンタのおかげだったのかもしれません。
とはいえ、私とポンタの関係はサイアクのものとなっていきました。訓練士さんから「犬はほめて育てないとね。叱ってばかりいると性格悪くなっちゃうだけだよ。」と言われていたのにすっかり忘れてしまっていました。

でも、なんといっても、長男のプレゼント。手放すわけにはいきません。
もし、そんなことをしようものなら、いずれ来る反抗期にかっこうの反抗材料にされてしまうことでしょう。「やい、ばばあ(−−メ)あの時よくもオレの犬を追い出したな」とテーブルをひっくり返すかもしれません。今はちょんとこづいてもコロコロ転がっちゃうチビスケでも、170センチ100キロの巨体に育ってしまったら、誰が彼を止められるというのでしょう。なんとしても、それだけは避けたいと思いました。

そうこうしている内にケンタが保育園に入園し、仕事の合間に少しは時間がとれそうなので、訓練所に通うことに決めました。ポンタをここまで悪くしてしまった責任も感じていましたから。仕事とはいえ、せっかく訓練してくれた前の訓練士さんに申しわけない気がしたので、訓練所を変えることにしました。




  もう一度チャレンジ  


ここまでするにはもう意地もありました。名犬ラッシーを見て育った世代としては、どうしてもわが息子に名犬を与えてやりたいという親心もありましたし。お兄ちゃんのためにもケンタのためにもがんばるぞー(^○^)/という勢いもありました。

3回1万円のコースを申し込みました。前回の5万円に比べれば一見安いように感じますが、30分が3回で1万円ですから、いずれにしても、もう本当に困り果てている人が申し込むものとしか考えられません。
 
行ってみると困り果てている人はたくさんいるらしく、しかも驚いたことにおとなしいと評判のゴールデン・レトリバーがたくさん預けられていました。聞くと、散歩の時にひっぱられて困っているらしいのです。大型犬ならではのアクシデントで、ポンタのような小型犬を連れてきている人は私以外いないようでした。(^。^;)

訓練士さんは、前回の小柄な方とは対象的に、ラサール石井をマッチョにした感じの大男で、未訓練のシェパードをいっぺんに5匹も自転車につないで散歩に連れていくというだけあって、逆らう犬の鼻っ柱に平手打ちを浴びせていました。打つ瞬間を犬に見せてはいけないそうで、目にも止まらぬ早さで鼻を平手打ちするのがコツだそうです。と言っても、やっぱり誉めるのが基本で、アメとムチを上手に使いわけるのだそうです。もちろん、平手打ちは言う事を聞かない大型犬や、獰猛な犬にのみ使う方法です。

前回の訓練士さんは、体罰反対主義で、悪いことをしたらゲージに閉じこめて出さないとか、足下にチェーンを投げつけるという方法を使っていましたが、この人は対照的に徹底的に怒ります。自分がボスだってことを嫌ってほどたたき込んでおけば、その後怒らすことはしなくなるというのです。色んなやり方があるんですねー。

訓練を始めると、いかに私がポンタの心をつかんでいないかがわかりました。訓練士さんは瞬く間にポンタの心をつかみ、アイ・コンタクトをたくみに交わします。鼻パンチなんぞ使わなくても「ポンちゃん、かわいいね、フフフ・・・」と不気味に話しかけるだけで、ポンタはもう催眠術にかかったかのよう。( ̄□ ̄;)!!これを会得するまでには5年の修行がいると言っておりました。やはりプロはスゴイ!

  犬の心、子供の心  


2回目の訓練日に、突然、訓練士さんが私に言いました。「あなたは今ポンタが何を考えてるかわかります?」「ええっ?(゚o゚)」考えてみたこともありませんでした。「さあ、ぼーーっと何にも考えてないみたいですけど。」というと、訓練士さんは言いました。
「犬はね、こうやって何もやってない時でも神経を飼い主さんに向けてとがらせてるんですよ。言葉をしゃべれませんからね。でも、ぼくらと仲間だと思ってる。だから、その分飼い主さんの話し方や、態度で機嫌の善し悪しなんかを感じてる。なのに、人間の方がそれに気づかない。犬は飼い主さんのことをこんなに思っているのに。」

この言葉は私の胸に刺さりました。ポンタの気持ちかあ。そうか、人間は言葉に頼りすぎてるんだよね。ポンタは目や態度で私にメッセージを送っていたかもしれないのに・・・。
そう思いながら、私はケンタと重ね合わせていました。その当時ケンタはまだろくにものを言わず、何を考えてるのかなかなかつかめませんでした。おかしな行動や、理由のわからないかんしゃくに困惑し、私は母親として自信を失いかけていました。

私が犬をほしかったのは、そんな寂しさを紛らわせたい、犬が何か私たち家族に与えてくれないかと期待していたからなのかもしれません。
「ただ与えられるのを待つんじゃダメなんだ。こちらからも与えなくちゃだめなんだ。ポンタやケンタに伝わる方法で。」

「大事なのは言葉じゃなくて心が通じるってこと」3回の訓練を終えて、大事なことを教えてもらった気がしました。本当にありがとう、マッチョ石井、あなたはこの世で何が大切かわかっている素晴らしI人です。


  名犬とまではいかないけれど  


訓練所にはホントに行ってよかったと思っています。あれから私とポンタはだんだん仲良しになっていきました。そして、ポンタのガツガツした性格をうまく利用し、ごほうびでつっていろんな芸を覚えさせることに成功したのです。(^ー^)v

今では、「座れ」「待て」「ふせ」「ぐるぐる回れ」「立て(ちんちん)」「ごろん(転がる)」「お手」「キャッチ」「もってこい」「ちゃんと(やり直し)」「ジャンプ」「お返事(吠える)」などができるようになりました。お兄ちゃんが、えらそーに「お母さん、何事もあきらめちゃダメだね。」とわかったようなことを言ってます。

さらには、フリスビーや、野球の球拾いまでできるようになったのです。ただ、ごほうびがなくなるとロコツに投げやりな態度に変わるし、公園などでは興奮してなかなかいうことを聞けないのでまだまだ名犬ラッシーとはいきませんけど・・・。(^。^;)

でもまあ、ポンタの教育は少なからず、弱気になっていた私に子育てへの意欲を沸き立たせてくれたように思います。
最近、気が向いた時だけケンタが散歩に連れてくようになって、あの努力が実ったかなっとちょっぴりうれしい毎日です。