屈曲した樹木か腕のような、何か得体の知れぬ黒い物体が描かれています。
その外側へ、長い繊毛に似た無数の線が勢いよく引かれています。
何かが激しく動いている。あるいは激しく動こうとしているようにも見えます。
その生命の躍動のごときかたちが、見る人の目を惹きつけます。
どのようにも解釈できます。けれども、この黒い屈曲体の動きのかたちが、
脈打つ生命の力強い存在感を表していることに気づきます。この作品は、
さまざまな解釈をすべて受け入れてしまう不思議に大きな許容性に満ちています。
題名の「ウェザリング」という英語は、風化という意味です。この作品に
「ウェザリング」と作家が名付けた時、作家自身何かを風化させない強烈な
意思を持っている自分に気づいたようです。これを転機に、作家は自らの
表現の主題を混沌とした生命の根源に見出しました。