西洋においては、近代化の過程で、アーチストが職人としての画工から
芸術家としての画家へと、立場の質的変化を自覚して以来、優れた画家たちは
「絵画とは何か」という深刻な課題を抱えました。
内田公雄もまた、その深い問いかけをさまざまなかたちで絵画に表現
してきました。この作品では下辺には石のような方形、上部にはLの
かたちが実に強固な質感を見せています。その間の茶色の絵肌は、ぎゅっと
堆積した地層を連想させます。堅い地面を垂直に削り落としたような生々しい
画面からは、画家としての課題をさらに突き詰めようとする強い意志と、
先鋭な感性がひしひしと伝わってきます。