「13世紀のピエタ像」

 テンペラとは、顔料を卵などで練り上げた絵の具のことです。
 画家は、七百年の歳月の中で劣化し、剥落していった画面とひきかえに、
その宗教画が人々の祈りのなかで獲得していった、深い静謐に心を震わせた
ようです。一見模写のようですが、時の重なりが産み出す、引き込むような
静けさへの、画家の深い感動をつづったものといえます。
 画家は、K美術館の隣町の沼津市に生まれました。日大芸術学部を卒業後
渡欧し、フランスで主に作品を発表しています。フランスにアトリエを
構える日本人画家で、現地の画商が評価し、扱う画家はごくわずかです。
そのなかの一人が坂部隆芳です。