「木版口絵展(明治後期の作品より)」について

木版口絵は、明治後期(1890年頃〜1912年)から大正初期にかけての約20年間、 小説や文藝雑誌『文藝倶楽部』の口絵として人気を呼びました。その多色摺木版画は、 明治前半の西洋化の激しい波の反動として、日本的なるものを求めた一般大衆に 歓迎されました。それは、木版は錦絵(多色摺木版画)の技術を受け継ぐ一方、絵画は、 伝統的な表現技法に西洋の画法をうまく取り入れた作風に特徴があります。
 当時、口絵画家の職業地位は、洋画家日本画家に比べてかなり低かったため、 また、小説本や文芸雑誌のオマケ、付録という先入観が付いてまわったため、 木版口絵は、最近に至るまで、美術界では忘れられた存在でした。 けれども、それが流通していた頃から約百年を経て、ようやく、その作品の持つ 深い味わいが、再発見されるようになりました。
 今回の展覧では、日本画家としての名声を勝ち得ている鏑木清方、川合玉堂から 童画の先駆者・武内桂舟まで、知られざる木版口絵の世界を、約40点の秀作でたどります。
 再評価の始まったばかりの木版口絵を、ご高覧賜りますよう、ご案内します。