小原古邨は若年から花鳥画に才覚を現し、日本絵画協会主催の展覧会・
共進会で、1900年の第9回から12回まで二等褒状を受けました。
そして、彼は明治美術界に強い影響力を持ったアーネスト・フェノロサの
指導を受けて輸出用の木版画の版下(原画)を多数描きました。古邨と
彫師、摺師の卓越した職人技が生み出す見事な木版画は、欧米の愛好家に
多数収蔵されました。
古邨は烏(からす)の絵を何点か描いています。この絵では、黒い瞳に
置かれた一点の白により、烏の視線がやや上向きに集中され、画面をキリリ
と引き締めています。一方、ハラリと落ちてゆく花びらが、一抹の余情を
与えています。簡潔、的確な描写に、みずみずしい情感がさりげなく描き
込まれているところに、古邨の絵の際立つ特徴があります。