江戸後期に全盛を迎えた浮世絵木版画業界は、明治後期には新しい印刷
技術に押され、斜陽化していきました。一握りの版元は、芸術品として売れる
質の高い木版画制作に活路を求め、その多くが海外へ輸出されました。それら
は、欧米でもSHIN HANGA(新版画)という用語で20世紀美術の一分野
に位置付けられています。その中で高名な絵師が小原古邨です。大規模な回顧展
が、2001年3月から7月にかけて、オランダ・アムステルダム国立美術館で
催され、立派な全作品集も、オランダの出版社から商業出版されました。
この木版画では、鷺(さぎ)と茎の織り成す曲線が心地よいハーモニーを、細
長い葉がこまやかなリズムを、そして水輪が時間的広がりを与え、鷺の目が全体
を引き締めています。