「一字書『心』」

 北一明の小品の書作品ですが、実に深く書(描)かれています。
作品は精神の地層的な厚みを見せています。そして精神の深みを伝えています。
 書とは知・情・意の鮮やかな美の統一体です。すぐれた書には成形の美、
構成の美に加えて、一回性の精神の運動美が表現されています。
 現代の書家は、その字が背負ってきた歴史的背景を深く洞察します。
同時に、書家個人にとっての意味を自覚し、書く必然性を深く認識します。
それを前提にして、字と墨筆と紙(布地)とが書家の精神を通して
高度に一体化され、現代を生きる書が成立します。
 絵画から見れば、ほんの一瞬で出来上がったようなものが一字書です。
その一瞬の一刷けに、書家の全人格、全経験そして全思想が投入され、
反映してしまうところが、書の面白さであり、醍醐味であり、そして
怖さでもあります。