「自然灰玉緑光彩手びねり小碗」

 著書で「焼きものは、どれだけ無難に焼成するかという発想ではなく、
どこまで坏土(はいど)が耐えられ、どのような条件で破損するのか、
またしないのかというリミットのテストである」と論じる北一明は、
焼きものを独学で学び、1972年に東京で築窯しました。素材の極限
状況を知るために、彼はプロパンガス窯の空気穴を塞いで焼成するという、
後で考えれば全く無茶な実験を試みました。窯は突然爆裂し、近くで
じっと観察していた彼は、危うく大けがをするところでした。全壊と
思われた焼きものの中から、この一点だけが無傷で残りました。この
自然灰の緑光彩だけは二度とできないと、作家が述懐する会心作です。