「雷光耀変紅葉虹彩乳頭碗」

 著書『ある伝統美への反逆』で初代諏訪蘇山や初代井高帰山ら「優れた
先人の人々と、今日高く評価されている浜田庄司や魯山人や荒川豊蔵らを
はじめとする人間国宝やその周囲の人々とその作品を比べてみれば、その
作品に表現された品位において」後者は「技は低く、志は低く、そして取柄は
利に高いということだけが本音ではなかろうか」と、批判している北一明は、
現代において「焼きものが芸術として、美術として、真に陶芸の名に価する
ために成り立つ最低条件とは何であろうか」と自分に問い、伝統美を突き
抜けた焼きものを次々と制作しました。そして、再現不可能と言われ、神品
と尊称される国宝曜変茶碗の焼成のメカニズムを北一明は解明し、前人未到
のさまざまな北「耀変」茶碗を創造しました。
 ここに紹介した一品は、その成果のひとつです。光の照射条件により、
濃紺地の暗い表面が、突然多様に光り輝くさまは、息を呑む美しさです。