この木版画は、月刊誌『文藝倶楽部』明治35年(1902年)12月号を
飾った、水野年方の口絵です。
若い女性が紫色の袴を着用しています。袴は、明治後半には教師など
知的職業に就いている活発な婦人が常用していましたが、明治30年
(1897年)になって、「跡見」の女学生と「お茶の水」の女生徒の間に
急に流行し始めました。当時、袴の紫は「源氏物語」の作者紫式部を
直接連想させる作用があり、着用している女性は、高等教育を受けた
上品さを表していました。服装が、その人の人格や社会的地位を表象
するのは、いつの時代も同じなので、こういう絵から時代背景(女性の
地位向上への意欲)を読み取ることもできます。