森の木の間から薄桃色の大きな月が見えます。左端にはフクロウがとまって
います。画家に「この犬は・・・」と言ったところ、「フクロウよ!」としかられました。
これは晩年の個展「小さな仏さま」で展示されたものです。フクロウの後方の
線描は仏様でしょう。
木葉井悦子は、1970年代に西アフリカで暮らしていました。アフリカの乾いた大地と
精霊に深く魅了された画家は、そこで知ったキバイ族を自分の筆名にしました。
帰国後は、仏教と混交した独特の観念に基づく生命感あふれる磊落(らいらく)な
絵本をいくつも描きました。
K美術館からも近い(当時はK美術館はまだありませんでした)柿田川を訪ねて
湧き水を飲んだ時、画家は「富士山の霊水ね、すばらしいわね」と、心に沁みいる
ように言いました。