上條陽子は、脳の切開手術をして以来、生きていることは動くことだと
実感しました。そして画家は「生のかたち」が十全に発揮される場を
ダンスに見出しました。ダンス=生の鮮やかな立ち振る舞いを主題に
した表現は、切り抜かれた色紙の綾なす重なりから構成された軽やかな
作品に結実しました。
画家は、ダンスの三次元空間と時間をまるごと二次元の紙上に抽象化
(素描)します。この至難の行為を経て成った線描画は、高度な集中力
に統御された実に豊かな耀く生の軌跡をにじませています。それを画家
自身の生のゆらぎのなかで切り抜きます。自らの美意識に沿って着色し、
網目のように変換されたダンスの一時空に、更なる一時空を積層させてできた
半立体作品が、ここに紹介したものです。
混沌としたなかから「生」の不思議なリズムが伝わってきます。